ギャラリー「ときの忘れもの」にて、『ファクトリーの時代』(1999年)を観る。
手持ちのぐらぐら揺れるヴィデオカメラで、メカス自らの呟きとともに、周囲を、呟く自分の顔を、撮る。このスタイルは、近作の『グリーンポイントからの手紙』(2004年)でも、『スリープレス・ナイツ・ストーリーズ 眠れぬ夜の物語』(2011年)でも、同じだ。
かつての16mmのボレックスがヴィデオカメラに替わっただけではない。勿論、ぐらぐら揺れるカメラ、露出の過不足、ピンボケなどは昔も今も同じである。しかし、決定的な何かの違いがある。フィルムによる多くのフッテージを寝かせ、小間切れにして編集し、呟きをかぶせるというスタイルが、同録で長めのフッテージをつなげるというスタイルに替わったことが、映像のアウラも異なったものにしてしまっていると思える。精神の自由さはますます増しているようにも思える。
「ファクトリー」とは、1964年頃からの、アンディ・ウォーホルが中心となった活動場所だった。この映画は、ファクトリーについてメカスたちが思いだし、語るものとなっている。それに耳を傾けていると、いかに自由で、過激で、人間的な活動であったのかということがわかってくる。なかでもメカスが強調するのは、さまざまな人の間をつなぎあわせたバーバラ・ルービンという女性の存在だった。
ただの思い出話ではない。過去であれ現在であれ、外に開かれたメカスの精神が、映像の魅力を生んでいる。
今月末に、メカスは90歳になる。ギャラリーがメカスに送るというメッセージカードに、自分も署名を書き入れた。
●参照
○ジョナス・メカス(1) 『歩みつつ垣間見た美しい時の数々』
○ジョナス・メカス(2) 『ウォルデン』と『サーカス・ノート』、書肆吉成の『アフンルパル通信』
○ジョナス・メカス(3) 『I Had Nowhere to Go』その1(『メカスの難民日記』)
○ジョナス・メカス(4) 『樹々の大砲』
○ジョナス・メカス(5) 『営倉』
○ジョナス・メカス(6) 『スリープレス・ナイツ・ストーリーズ 眠れぬ夜の物語』、写真展@ときの忘れもの
○ジョナス・メカス(7) 『「いまだ失われざる楽園」、あるいは「ウーナ3歳の年」』