Sightsong

自縄自縛日記

ニコラス・レイ『太平洋作戦』

2012-12-29 23:35:48 | 北米

ニコラス・レイ『太平洋作戦』(1951年)を観る。レイ初期の作品である。ブックオフで105円だったが、画質はそれなりだった。

米軍海兵隊は、ソロモン諸島のガダルカナル島の戦いに向かう。新たな司令官(ジョン・ウェイン)はひたすら厳しく、自らの作戦実行のためには、部下が戦死することも厭わない。しかし実は心の優しい男だという設定(それ自体が矛盾に満ち満ちているのだが)。一方、司令官に昇格できなかった大尉(ロバート・ライアン)は、部下に優しく人気があり、そのためにリーダーシップ欠如という評価をくだされている。

司令官と大尉との不和、憎しみ合い。唐突に挿入される、司令官と家族との触れ合い。再度組んだ戦場での、ふたりの歩み寄りと、大尉のリーダーとしての成長。ガダルカナル戦の実写フィルムが使われているのも、当時の映画としては、迫真性を増している。

見所は、まあ、そんなところである。

演出が少し奇妙で面白くはあるが、このように、好戦的で、自国の都合だけを前面に押し出し、体育会的でもあるような映画は、まったく好きになれない。ジョン・ウェインとロバート・ライアンという組み合わせも、ひとつの典型である。

ああ、いやだいやだ。


侯孝賢『非情城市』

2012-12-29 20:29:46 | 中国・台湾

侯孝賢『非情城市』(1989年)を観る。もう久しぶりの再見だ。

物語は、1945年8月15日、天皇の玉音放送をラジオで聞きながらの出産シーンではじまる。しかし、日本の植民地支配の終焉は、台湾人(本省人)にとっての真の解放ではなかった。支配層は、大陸の国民党(外省人)へと変わり、本省人たちは強権的な扱いに苦しむこととなった。本省人と外省人との軋轢は、やがてたび重なる衝突となり、1947年、陳儀将軍が蒋介石に依頼したことによる大弾圧「二・二八事件」が起きる。この白色テロにより、多くの本省人が突然投獄され、処刑された。

この映画は、ある本省人の家族と、そのひとりと結婚しようとする女性の家族の運命を中心に描かれている。短気な父と長兄が家を仕切り、二男は出征して戻らず、三男は意志薄弱で上海やくざの甘言に乗せられて身を滅ぼし、口がきけない四男(トニー・レオン!)は義憤に駆られて行動し、逮捕される。

それぞれの気持ちの発露が、侯孝賢ならではの長回しと風景描写のなかに置かれ、大きな語りを創出していく手腕は見事である。

息苦しさを覚えながらもずっと映画に引き込まれた。そして、語りが終わった後、何とも言いようのない感情の波がやってきた。

やはり名作に違いない。

●参照 侯孝賢
『冬々の夏休み』(1984年)
『戯夢人生』(1993年)
『ミレニアム・マンボ』(2001年)
『珈琲時光』(2003年)
『レッド・バルーン』(2007年)

●参照
丸川哲史『台湾ナショナリズム』


ハリー・コニック・ジュニア+ブランフォード・マルサリス『Occasion』

2012-12-29 10:52:25 | アヴァンギャルド・ジャズ

ハリー・コニック・ジュニア+ブランフォード・マルサリス『Occasion』(Marsalis Music、2005年)を聴く。ブックオフの500円棚にあった。

何しろハリー・コニック・ジュニアがヴォーカル抜きで活動しているということなどまったく知らなかった。というよりまったく興味を持たなかった。洋楽好きの姉が1990年代初めころに何やらうっとりして聴いていたのを目撃して以来、自分の中ではミーハー向けというレッテルを貼っていた有様である。

そういえば、故・古澤良治郎さんは、スクールの待合室でいつも仙人のように存在していたが、その古澤さんが、「あの人、何だっけ、ハリー・ニコック・ジュニア!」とか叫んでいた記憶がある。(どうでもいいか・・・。)

Harry Connick, Jr. (p)
Branford Marsalis (ts, ss)

ブランフォード・マルサリスとピアニストとのデュオというと、父エリス・マルサリスと吹き込んだ『Loved Ones』を思い出してしまうが(「Maria」の演奏などは印象的だった)、ハリーは実はエリスに師事していたのだという。そうか、ジャズの伝統を既得権益のように抱え込むネオコン一味か、と一言で片付けず、聴く。

ハリーのピアノは、当然というべきか、エリスのピアノよりもモダンな要素を取り入れている印象がある。そしてブランフォードのサックスは、相変わらず、巧すぎるくらい巧い。もうヤンチャ臭はない。実はそれがつまらない。かつて『The Dark Keys』というピアノレスグループの作品に熱狂した自分だが、それ以降は、綺麗なだけに感じられて、聴く気がしなくなっていた。改めて聴くと、これはこれで悪くない。

「Steve Lacy」という曲が収録されている。文字通り、ソプラノサックスの巨匠、故・スティーヴ・レイシーに捧げられた演奏であり、解説を読むと、『Sands』にインスパイアされたものであるらしい。しかし、やはり当然というべきか、似ても似つかないどころか、雰囲気もない。ケニーGかなにかを聴いているようだ。

ニューオリンズ風あり、シャンソン風ありと、悪くないのだけど。


『Sands』(TZADIK、1998年) 昔、レイシーにサインをいただいた


『Sands』(TZADIK、1998年)の内部の写真

●参照
『Point of Departure』のスティーヴ・レイシー特集(『Sands』)


どぅたっち忘年会

2012-12-29 01:20:44 | 沖縄

仕事納め。琉球センター・どぅたっちで忘年会をやっているんだなと思いだし、駒込まで足を運んだ。

集まった人は30人くらい。島袋さんの料理、泡盛、三線。

常連のOさんに、福島の米をいただいてしまった。ありがとうございます。

帰りの電車は、仕事納めの後だけあって、泥酔して眠りこける女の子、微妙な拍手を続けるオッサン、胸元に何枚もの千円札を挟んだ女の子、降りようとダッシュしてすっ転ぶ若い男など、ワンダーランドだった。