セシル・テイラーのピアノトリオというと、ほとんどはサックス、ドラムスとの編成であり、ベース、ドラムスとの形はとても少ない。『In Florescence』(A&M、1989年)が出た頃、かなり新鮮に見られたのではなかったかと記憶している。
ウィリアム・パーカー(ベース)、グレッグ・ベンディアン(ドラムス)というメンバーである。同時期に編成された「The Feel Trio」では、ドラムスにトニー・オクスレーを迎えているが、パーカーは共通。パーカーのファンとしては、おそらく、テイラーは彼のベースを取り込みたかったのではないかと想像してみる。
もう一度聴きたいと思っていたところ、未開封の中古盤を見つけた。
Cecil Taylor (p, voice)
William Parker (b)
Gregg Bendian (per)
すべて短めの演奏が、テイラーの奇妙なポエトリーリーディングや叫び声・擬態声からはじまる。
期待にたがわず、パーカーの柔軟かつ重量級のベースが、テイラーの硬い結晶のように煌めくピアノとがっぷり四つになって、パフォーマンスが展開していく。ベンディアンはどちらかというと軽やかなのかな。トニー・オクスレーが叩く盤と聴き比べてみたい。
テイラーは、ピアノソロでは長尺な演奏から目が眩むようなクリスタルの山脈を創り出す。サックスとのコラボレーションでは、いつ切れるかわからないほどのテンションを保ち、いくつものクライマックスに向けて音塊を放出し続ける。それに比べ、これは風のようで、何だか素晴らしいものが示されていると思っているうちに演奏が終わる。
●参照
○セシル・テイラー『The Tree of Life』
○1988年、ベルリンのセシル・テイラー
○ドミニク・デュヴァル+セシル・テイラー『The Last Dance』、ドミニク・デュヴァル+ジミー・ハルペリン『Monk Dreams』
○セシル・テイラー『Dark to Themselves』、『Aの第2幕』
○セシル・テイラーのブラックセイントとソウルノートの5枚組ボックスセット
○イマジン・ザ・サウンド(セシル・テイラーの映像)