この間、サンリオSF文庫を物色しようと入った古本屋で、隣に、赤塚不二夫『マンガ狂殺人事件』(作品社、1984年)というものがあった。つい、衝動的につかんでしまった。
トキワ荘やら、スタジオ・ゼロやらで、殺人事件が起きるが、犠牲者の松本零士や横山光輝は実は仮死状態。そのすべてに、つげ義春が関与しており、犠牲者の横には「ねじ式」だの「ゲンセンカン主人」だのといったメモが落ちている・・・といった、まったく内輪ネタばかりの実にバカバカしい話。(面白かったけれども。)
この中で、つげ義春の肩からはライカが下がっている、とあるが、ここにはリアリティがない。つげ義春の収集したカメラは日本製の渋いものばかりの筈で、実際に、「芸術新潮」誌のつげ義春特集(2014年1月号)に掲載された写真の中にも、ライカはなかった(たぶん)。つげ義春の妻・藤原マキの画文集『私の絵日記』に、つげ義春がカメラをいじくっている絵があったが、別に細密に描かれたものでもなく、どんなカメラかの手掛かりはなかった。
ところで、作家でない有名人に「○○狂殺人事件」を書かせる「RADICAL GOSSIP MYSTERY」シリーズがあったようで、巻末にはヘンなものがいくつか紹介してある。タモリ『タレント狂殺人事件』、山本晋也『ポルノ狂殺人事件』、ビートたけし『ギャグ狂殺人事件』、荒木経惟『写真狂殺人事件』、おすぎとピーコ『映画狂殺人事件』、立川談志『落語狂殺人事件』・・・。ああ、あほらし。