Sightsong

自縄自縛日記

デイヴィッド・ボウイ『★』

2016-02-02 07:38:56 | ポップス

デイヴィッド・ボウイ『★』(Columbia、2015年)を聴く。

もとよりボウイの音楽は興味の対象外にあって、ニコラス・ローグ『地球に落ちてきた男』や大島渚『戦場のメリークリスマス』における俳優のイメージしかない。それでも、マーク・ジュリアナやダニー・マッキャスリンらの起用だと聞いて心が揺れていたところ、突然の訃報。

David Bowie (vo, g)
Donny McCaslin (sax, fl, woodwind)
Jason Lindner (p, Wurlitzer organ, key)
Tim Lefebvre (b)
Mark Guiliana (ds, perc)
Ben Monder (g)
Tony Visconti (strings)
James Murphy (perc)
Erin Tonkon (vo)

細くて枯れていて裏返るボウイの声が、くっきりと浮かび上がる。暗黒世界のような謎めいた歌詞と、それとは対照的な奇妙な明るさ。いやこれは、たまらなくすてきな作品である。

ジャズ的ではないアプローチで、ときにシンセサイザーのように、そのポップな雰囲気を創り出すダニー・マッキャスリンのサックス。相変わらずひとりの肉体が繰り出しているとは信じがたい、マーク・ジュリアナのパラレルビーツ。ベン・モンダーのギターは、まるで色付きの透明下敷きを通してみるように、雰囲気を一変させる。

なんでも、マリア・シュナイダーが、ニューヨークの55 Barに、マッキャスリンを観にいくべきだとボウイに勧めたのだという。実際にボウイが足を運んだのかどうか知らないが、あの暗くて親密な空間に現れたことを想像するだけで愉快な気分になる。名物オヤジと冗談を飛ばしあっていたりして。そのバンドでも、ジュリアナがドラムスを叩いている。そして、楽園的なポップなサウンドは、この作品に通じるものがある。

●参照
大島渚『戦場のメリークリスマス』(1983年)
ダニー・マッキャスリン@55 Bar(2015年)
ダニー・マッキャスリン『Fast Future』(2014年)
ダニー・マッキャスリン『Casting for Gravity』(2012年)
フローリアン・ウェーバー『Criss Cross』(2014年)(マッキャスリン参加)
マーク・ジュリアナ@Cotton Club(2016年)
マーク・ジュリアナ『Family First』(2015年) 
ベン・モンダー『Amorphae』(2010、13年)
ビル・マッケンリー+アンドリュー・シリル@Village Vanguard(2014年)(モンダー参加)
トニー・マラビー『Paloma Recio』(2008年)(モンダー参加)
ビル・マッケンリー『Ghosts of the Sun』(2006年)(モンダー参加)