Sightsong

自縄自縛日記

コリン・ウィルソン『宇宙ヴァンパイアー』

2016-02-27 17:10:18 | ヨーロッパ

吉祥寺のバサラブックスはなかなか愉快な古書店で、先日、コリン・ウィルソン『宇宙ヴァンパイアー』(新潮文庫、原著1976年)を300円で見つけた。トビー・フーパーの映画『スペース・バンパイア』の原作となった小説なのだが、迂闊にも、御大コリン・ウィルソンによるものだとは知らなかった。なお、映画の宣伝のため、カバーだけタイトルが変えられている。

なかばB級映画に接するつもりで読み始めたようなものだが、途中からどんどん面白くなってきて、サウジアラビアに着く直前に読了した。

近未来。地球の近くで、長いこと放棄されていたと思しき巨大な宇宙船が発見される。なかには人間の形をした死体があった。そのうち3体だけを地球に持ち帰ったのだが、これは宇宙人の陰謀だった。かれらはヴァンパイアであり、人間の生命エネルギーを吸収して生き続けようとしていたのだった。宇宙飛行士とヴァンパイア学者が協力して、誰かの身体に侵入したヴァンパイアを追い詰めていく。かれらは、神からサディスト的な犯罪者に堕ちてしまった存在だった。

生命エネルギーはヴァンパイアならずとも人の間を行き来するものであり、そこには性が介在しており、エネルギー保存則が成り立っているという設定が実に面白い。このヴィジョンによれば、人はそれで長生きできるばかりか、時間さえも逆行できる。

ヨーロッパにおけるヴァンパイア伝説を発展させたウィルソンの腕前は、さすがである。ヴァンパイアの息吹が場所によらず人に対してあらわれるという設定は、まるで生霊のようだ。しかもそれが宇宙の大いなる意思につながっていくという力技。

ところで、フーパーの映画については、裸の宇宙人の女が、誘惑された男から生命エネルギーを吸い取る激しい場面しか覚えていない。帰国したらすぐに観なければ・・・。