Sightsong

自縄自縛日記

アリス・コルトレーン『Carnegie Hall '71』

2018-11-04 21:29:57 | アヴァンギャルド・ジャズ

アリス・コルトレーン『Carnegie Hall '71』(Hi Hat、1971年)を聴く。

Alice Coltrane (p, harp)
Pharoah Sanders (ts, ss, fl, perc, fife)
Archie Shepp (ts, ss, perc)
Tulsi (tamboura)
Kumar Kramer (harmonium)
Jimmy Garrison (b)
Cecil McBee (b)
Clifford Jarvis (ds)
Ed Blackwell (ds)

サックスもベースもドラムスもふたりずつ。濃すぎる。しかもジョン・コルトレーンの「Africa」1本勝負。Impulse!から傑作を次々に出していた時代のアリス・コルトレーンにこのメンバー、悪いわけがない。

モーダルな感じのアリスのピアノとドラムスふたりが背中を押しまくる中で、いきなり、アーチー・シェップとファラオ・サンダースのサックスがうなりをあげる。これナマで観ていたとしたら30分の途中で酸素が足りなくなって倒れるぞ。

途中ではジミー・ギャリソンとセシル・マクビーのベースソロがあり、演奏者がふたりとなって、なぜか会場で手拍子が起きる。いやそこじゃないだろうという気がするのだが、カーネギーホールの客は何を考えていたのだろう。

●アリス・コルトレーン
アリス・コルトレーン『Translinear Light』(2000、2004年)
アリス・コルトレーン『Turiya Sings』(1981年)
アリス・コルトレーン『Universal Consciousness』、『Lord of Lords』(1971、1972年)
アリス・コルトレーン『Huntington Ashram Monastery』、『World Galaxy』(1969、1972年)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/7/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/8/1)


コモン・オブジェクツ『Skullmarks』

2018-11-04 19:50:39 | アヴァンギャルド・ジャズ

コモン・オブジェクツ『Skullmarks』(meenna、2016年)を聴く。

Common Objects:
John Butcher (ss, ts)
Angharad Davies (vln)
Rhodri Davies (electric harp)
Lina Lapelyte (vln)
Lee Patterson (amplified devices and processes)
Pat Thomas (electronics)

コモン・オブジェクツは2005年にロードリ・デイヴィス中心に作られたグループである。

コンセプトは面白い。オブジェを即興演奏のインスピレーションに使うというのだ。このライヴでは、英国ピットリバース博物館の展示物から、ハイダ族シャーマンのカラスの面(17世紀)、ケレス・プエブロ族による鳥をかたどった水差し(19世紀)、ツィムシアン族の彩色されたクマの面(19世紀)、精巧で鮮やかに彩色されたクマの頭骨(ネパールで発見、1936年)が選ばれ、演奏者と観客の両方に見えるように配置されたという。

絵画作品によりインスパイアされた音楽は思いつくが、このようなものは例が少ないのではないか。実際のその4つをウェブサイトで見ながら追体験するとさらに面白い。時間、手仕事、顔の見えない人々の意思といったものが演奏に与え、また聴く側にも与えた影響が想像できる。

ちょっと異様な構成のグループであり、弦の肉声のような擦れ、その重なり、ハープの体内を触るような声、エレクトロニクスの脈動があって、そのサウンド全体を再び底から響かせるように、ジョン・ブッチャーのマルチフォニックスが浮上してくる。それは共演者たちの音と相互に響き合う。ふとサウンドの中に没入するとおののかされる瞬間が多々あらわれる。

●ロードリ・デイヴィス
ロードリ・デイヴィス+ジョン・ブッチャー『Routing Lynn』(2014年)

●ジョン・ブッチャー
オッキュン・リー『Cheol-Kkot-Sae [Steel Flower Bird]』(2016年)
ジョン・ブッチャー+ジョン・エドワーズ+マーク・サンダース『Last Dream of the Morning』(2016年)
歌舞伎町ナルシスの壁(2016年)
ジョン・ブッチャー+高橋悠治@ホール・エッグファーム(2015年)
鈴木昭男+ジョン・ブッチャー『Immediate Landscapes』(2006、15年)
ジョン・ブッチャー+ストーレ・リアヴィーク・ソルベルグ『So Beautiful, It Starts to Rain』(2015年)
The Open Secret『A Geography For Plays』(2014年)
ジョン・ブッチャー+トマス・レーン+マシュー・シップ『Tangle』(2014年)
ロードリ・デイヴィス+ジョン・ブッチャー『Routing Lynn』
(2014年)
ジョン・ブッチャー@横浜エアジン(2013年)
ジョン・ブッチャー+ジノ・ロベール『Bottle Breaking Heart Leap』(2013年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+ジョン・ブッチャー+ポール・リットン『Nachitigall』(2013年)
ジョン・ブッチャー+大友良英、2010年2月、マドリッド(2010年)
ジョン・ブッチャー+マシュー・シップ『At Oto』(2010年)
中村としまる+ジョン・ブッチャー『Dusted Machinery』(2009年)
フレッド・フリス+ジョン・ブッチャー『The Natural Order』(2009年)
ジョン・ブッチャー『The Geometry of Sentiment』(2007年)
ジョン・ブッチャー+グザヴィエ・シャルル+アクセル・ドゥナー(the contest of pleasures)『tempestuous』(2006年)
デレク・ベイリー+ジョン・ブッチャー+ジノ・ロベール『Scrutables』(2000年)
『News from the Shed 1989』(1989年)
ジョン・ラッセル+フィル・デュラン+ジョン・ブッチャー『Conceits』(1987、92年) 


セシル・マクロリン・サルヴァント『The Window』

2018-11-04 18:48:18 | アヴァンギャルド・ジャズ

セシル・マクロリン・サルヴァント『The Window』(mack avenue、-2018年)を聴く。

Cécile McLorin Salvant (vo)
Sullivan Fortner (p, org)

ちょっと小音量で聴いただけでは物足りなく感じられるかもしれないのだが、言うまでもなく大変な歌手である。エラ・フィッツジェラルドだってうますぎて、不健康で心の影をより直接感じられる歌手のほうが評価されたりしたでしょう。セシル・マクロリン・サルヴァントだってひょっとしたら「うますぎて云々」、いや考えすぎか。

このピアノやオルガンとのデュオを、大きな音で、あるいはナマで聴くと、果てのないポテンシャルから凄い直球が投げ込まれていることがわかる。しかもチャーミング。しっとりと静かに、ときに口を大きく開いて喉まで震わせて歌う、バーンスタインの「Somewhere」なんてとても良い。

●セシル・マクロリン・サルヴァント
セシル・マクロリン・サルヴァント@ブルーノート東京
(2018年)


藤山裕子+レジー・ニコルソン+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)

2018-11-04 12:39:38 | アヴァンギャルド・ジャズ

藤山裕子・18年ぶりという日本ツアーの最終日(2018/10/1)。

>> #1036『藤山裕子×レジー・ニコルソン×齋藤徹』

Yuko Fujiyama 藤山裕子 (p, vo)
Reggie Nicholson (ds)
Guest:
Tetsu Saitoh 齋藤徹 (b)

Fuji X-E2、7artisans 12mmF2.8

●藤山裕子
ピーター・エヴァンス@Jazz Art せんがわ2018(JazzTokyo)
(2018年)

●齋藤徹
齋藤徹+長沢哲+木村由@アトリエ第Q藝術(2018年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@喫茶茶会記(2018年)
永武幹子+齋藤徹@本八幡cooljojo(JazzTokyo)(2018年)

かみむら泰一+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
DDKトリオ+齋藤徹@下北沢Apollo(2018年)
川島誠+齋藤徹@バーバー富士(JazzTokyo)(2018年)
齋藤徹+喜多直毅@板橋大山教会(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+外山明@cooljojo(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+皆藤千香子@アトリエ第Q藝術(2018年)
2017年ベスト(JazzTokyo)
即興パフォーマンス in いずるば 『今 ここ わたし 2017 ドイツ×日本』(2017年)
『小林裕児と森』ライヴペインティング@日本橋三越(2017年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
長沢哲+齋藤徹@東北沢OTOOTO(2017年)
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
齋藤徹ワークショップ特別ゲスト編 vol.1 ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+佐草夏美@いずるば(2017年)
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
齋藤徹@バーバー富士(2017年)
齋藤徹+今井和雄@稲毛Candy(2017年)
齋藤徹 plays JAZZ@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
齋藤徹ワークショップ「寄港」第ゼロ回@いずるば(2017年)
りら@七針(2017年)
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
齋藤徹『TRAVESSIA』(2016年)
齋藤徹の世界・還暦記念コントラバスリサイタル@永福町ソノリウム(2016年)
かみむら泰一+齋藤徹@キッド・アイラック・アート・ホール(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
齋藤徹・バッハ無伴奏チェロ組曲@横濱エアジン(2016年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年) 
齋藤徹+類家心平@sound cafe dzumi(2015年)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
バール・フィリップス+Bass Ensemble GEN311『Live at Space Who』(2012年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹@ポレポレ坐(2011年)
齋藤徹による「bass ensemble "弦" gamma/ut」(2011年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)
齋藤徹『Contrabass Solo at ORT』(2010年)
齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』(2009年)
齋藤徹、2009年5月、東中野(2009年)
ミシェル・ドネダと齋藤徹、ペンタックス43mm(2007年)
齋藤徹+今井和雄+ミシェル・ドネダ『Orbit 1』(2006年)
ローレン・ニュートン+齋藤徹+沢井一恵『Full Moon Over Tokyo』(2005年)
明田川荘之+齋藤徹『LIFE TIME』(2005年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹+今井和雄+沢井一恵『Une Chance Pour L'Ombre』(2003年)
往来トリオの2作品、『往来』と『雲は行く』(1999、2000年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ+チョン・チュルギ+坪井紀子+ザイ・クーニン『ペイガン・ヒム』(1999年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ『交感』(1999年)
齋藤徹+沢井一恵『八重山游行』(1996年)
久高島で記録された嘉手苅林昌『沖縄の魂の行方』、池澤夏樹『眠る女』、齋藤徹『パナリ』(1996年)
ミシェル・ドネダ+アラン・ジュール+齋藤徹『M'UOAZ』(1995年)
ユーラシアン・エコーズ、金石出(1993、1994年)
ジョゼフ・ジャーマン 


【日米先鋭音楽家座談】ピーター・エヴァンスと東京ジャズミュージシャンズ(JazzTokyo)

2018-11-04 12:24:08 | アヴァンギャルド・ジャズ

2018年9月のピーター・エヴァンス日本ツアー。東京での最終ギグの翌朝に、辰巳小五郎、後藤篤、纐纈雅代という尖がった3人とエヴァンスとの座談会を行った(2018/9/23)。撮影は、ときどきカッコいい写真を見ていたm. yoshihisaさんにお願いした。

エヴァンスが宿泊する某ホテル前。待っていると明らかにエヴァンスがどこかに飛び出していった、声を掛ける余裕もなく。実は勘違いして話をするカフェに先回りしていたのだった。剛田武さんもたまたまカフェに先に入っていてよかった。焦ったじゃないか。

通訳、翻訳となかなか大変だったけれど面白かった。

>> #177 【日米先鋭音楽家座談】ピーター・エヴァンスと東京ジャズミュージシャンズ

●ピーター・エヴァンス
ピーター・エヴァンス@Jazz Art せんがわ2018(JazzTokyo)(2018年)
ピーター・エヴァンス+ウィーゼル・ウォルター『Poisonous』(2018年)
マタナ・ロバーツ「breathe...」@Roulette(2017年)
Pulverize the Sound、ケヴィン・シェイ+ルーカス・ブロード@Trans-Pecos(2017年)
コリー・スマイス+ピーター・エヴァンス『Weatherbird』(2015年)
ピーター・エヴァンス『House Special』(2015年)
Pulverize the Sound@The Stone(2015年)
Rocket Science変形版@The Stone(2015年)
エヴァン・パーカー US Electro-Acoustic Ensemble@The Stone(2015年)
トラヴィス・ラプランテ+ピーター・エヴァンス『Secret Meeting』(2015年)
ブランカート+エヴァンス+ジェンセン+ペック『The Gauntlet of Mehen』(2015年)
エヴァン・パーカー ElectroAcoustic Septet『Seven』(2014年)
MOPDtK『Blue』(2014年)
チャン+エヴァンス+ブランカート+ウォルター『CRYPTOCRYSTALLINE』、『Pulverize the Sound』(2013、15年)
PEOPLEの3枚(-2005、-2007、-2014年)
ピーター・エヴァンス『Destiation: Void』(2013年)
ピーター・エヴァンス+アグスティ・フェルナンデス+マッツ・グスタフソン『A Quietness of Water』(2012年)
『Rocket Science』(2012年)
MOPDtK『(live)』(2012年)
ピエロ・ビットロ・ボン(Lacus Amoenus)『The Sauna Session』(2012年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Mechanical Malfunction』(2012年)

ピーター・エヴァンス+サム・プルータ+ジム・アルティエリ『sum and difference』(2011年)
ピーター・エヴァンス『Ghosts』(2011年)
エヴァン・パーカー+オッキュン・リー+ピーター・エヴァンス『The Bleeding Edge』(2010年)
ピーター・エヴァンス『Live in Lisbon』(2009年)
MOPDtK『The Coimbra Concert』(2010年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Electric Fruit』(2009年)
オッキュン・リー+ピーター・エヴァンス+スティーヴ・ベレスフォード『Check for Monsters』(2008年)
MOPDtK『Forty Fort』(2008-09年) 

●辰巳小五郎
青山健一展「ペタペタ」とThe Space Baa@EARTH+GALLERY(2017年)

●後藤篤
後藤篤+レオナ@國學院大學(2018年)
原田依幸+後藤篤@なってるハウス(2017年)
後藤篤『Free Size』(2016年)
秘宝感とblacksheep@新宿ピットイン(2012年)
『blacksheep 2』(2011年) 

●纐纈雅代
纐纈雅代@Bar Isshee(2018年)
纐纈雅代トリオ@新宿ピットイン(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年)
纐纈雅代@Bar Isshee(2016年)
板橋文夫+纐纈雅代+レオナ@Lady Jane(2016年)
纐纈雅代『Band of Eden』(2015年)
鈴木勲セッション@新宿ピットイン(2014年)

渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2014年)
纐纈雅代 Band of Eden @新宿ピットイン(2013年)
秘宝感とblacksheep@新宿ピットイン(2012年)
『秘宝感』(2010年)
鈴木勲 フィーチャリング 纐纈雅代『Solitude』(2008年)


ジョナサン・フィンレイソン『3 Times Round』

2018-11-04 12:01:39 | アヴァンギャルド・ジャズ

ジョナサン・フィンレイソン『3 Times Round』(Pi Recordings、2018年)を聴く。

Jonathan Finlayson (tp)
Steve Lehman (as)
Brian Settles (ts, fl)
Matt Mitchell (p)
John Hébert (b)
Craig Weinrib (ds)

緻密なコンポジションとアレンジをもとにしており、M-BASEの流れを受け継いだフィンレイソンの音楽。予想通りでもあり、あまり新鮮な驚きはない。フィンレイソンならこれくらいやって当然だし、スティーヴ・リーマンにはリーマンっぽく吹いていないでさらに次のステップに進んでほしいなどと上から目線で見てしまう。

ただ、マット・ミッチェルのピアノはなかなかに鮮烈だ。まるでピアノが複雑なリズムの一部をなし、リズムに色を付けているように聴こえる。

●ジョナサン・フィンレイソン
スティーヴ・コールマン『Live at the Village Vanguard vol.1 (The Embedded Sets)』(2017年)
スティーヴ・コールマン『Morphogenesis』(2016年)
ジョナサン・フィンレイソン『Moving Still』(2016年)
メアリー・ハルヴァーソン『Away With You』(2015年)
ジョナサン・フィンレイソン+ブライアン・セトルズ@6BC Garden(2015年)
ジョナサン・フィンレイソン『Moment & the Message』 (2012年)


原田依幸+宅Shoomy朱美@なってるハウス

2018-11-04 10:57:42 | アヴァンギャルド・ジャズ

入谷のなってるハウス(2018/11/3)。

Yoriyuki Harada 原田依幸 (p)
Akemi Shoomy Taku 宅Shoomy朱美(vo)

Shoomyさんの音楽は、ピアノのみならずヴォイス/ヴォーカルも魅力的だ。スキャットと単に言うべきではないほどの拡がりがあり、言語は宇宙語あるいは生物語あるいはShoomy語。

一方の原田さんは、やはり、他者への依存を断ち切って鍵盤を弾く。弾いた瞬間からその音楽が依存の対象ではなくなり、無関係な過去と化してゆく。時間のつながりがあるとすれば、そのプロセスを経たあとで静かに旋律を弾き始めた、その形式のみだった(ファーストセットでは、「Moon River」が聴こえてきた)。

あまりにも独特なふたりによる、邂逅また邂逅。その連続。

Fuji X-E2、7artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●原田依幸
原田依幸@アケタの店(2018年)
原田依幸+川下直広『東京挽歌』(2017年)
原田依幸+後藤篤@なってるハウス(2017年)
生活向上委員会2016+ドン・モイエ@座・高円寺2(2016年)
「KAIBUTSU LIVEs!」をエルマリート90mmで撮る(2)(2010年)
原田依幸+鈴木勲『六日のあやめ』、『一刀両断』(1995、2009年)
くにおんジャズ(2008年)
「KAIBUTSU LIVEs!」をエルマリート90mmで撮る(2007年)
生活向上委員会大管弦楽団『This Is Music Is This?』(1979年)
『生活向上委員会ニューヨーク支部』(1975年) 

●宅Shoomy朱美
impro cats・acoustic@なってるハウス
(2018年)


ニュージャズホールって何だ?@新宿ピットイン

2018-11-04 09:21:43 | アヴァンギャルド・ジャズ

新宿ピットインにおいて、「ニュージャズホールって何だ?それはpit innの楽器倉庫から始まった」と題するイベント(2018/11/3)。

カポネ副島さん(副島輝人さんの弟さん)による司会。会場には当時を懐かしむ人も、その歴史に興味を持つ人もいるように見えた。

■ 第1部:佐藤允彦スペシャルユニット

Masahiko Sato 佐藤允彦 (p)
Kazutoki Umezu 梅津和時 (as, bcl)
Nobuyoshi Ino 井野信義 (b)
Hiroshi Yamazaki 山崎比呂志 (ds)

このレジェンドたちの演奏だから当然なのだが、一点突破力にやはり驚かされる。出口に向けて突進する中で、山崎さんの気合いのドラミングはやはり唯一無二だなと感じ入ってしまった。

■ 第2部:伝説のNJHと副島輝人を語る

パネラー:中平穂積、佐藤允彦、佐藤文夫、山崎比呂志
司会:横井一江

山猫軒の南達雄さんらによる写真のスライド上映を行いつつ、各氏による面白い回想。写真があまりにも面白く素晴らしいので、登壇者たちもつい見入ってしまっている。中には阿部薫『ラストデイト』のジャケット写真もある。

佐藤允彦さんも山崎さんもどのような経緯でNJHができたのか覚えていなかった。副島さんや高柳さんに「こんどやろう」と声を掛けられた、と。観客数は出演者よりも少ない。何でも中にバッテンのパイプがあり、それをみんな演奏中に叩いたりしていたが、下のピットインからは苦情は来なかったという。クスリで倒れる演奏者もあり。だがこの混沌があってこそ独自のミュージシャンが出てきた。生活向上委員会。ナウミュージックアンサンブル。高木元輝。沖至。

詩人の佐藤文夫さんは「詩とジャズ」について語った。これを始めたのも副島さんだった。その前に『Doin'』という雑誌があって、吉増剛造、白石かずこ、諏訪優といった人たちが活動していた。はじめに神楽坂のクラブで朗読をしていたところ、吉増さんさえも「学芸会」のようなもので、ジョー水木さんが「まじめにやりましょう」と喝を入れたのだという。NJHでも「詩とジャズ」をやっていて、1970年5月には吉増剛造+山崎弘(当時)カルテットというコラボもあった。他の場所は、福生のBP(Black Powerという意味で黒人米兵相手の店)、明大前のキッドアイラック。佐藤さんがナウミュージックアンサンブルを労音に紹介し、鳥取の労音では演奏がはじまるやいなや会場の外に演奏に出てしまって、戻るころには観客がかなり帰ってしまっていた、というエピソードも紹介された。

マックス・ローチが来日して白石かずこさんと共演したとき、佐藤文夫さんに、毛沢東の『The Art of Guerrilla Warfare』を探すよう頼まれたという。日中関係も悪く見つからなかった、しかしローチも毛沢東に共感していたのは驚きだった、と語った。(なお、ローチがアーチー・シェップとともに『Force』において毛を取り上げるのは1976年のことである。1979年には『The Long March』も吹き込んでいる。)

DUGの中平穂積さんは、お店を出すときに植草甚一さんに相談したら「おやめなさい」と言われたそうである。店でアヴァンギャルド系のレコードをかけると客が減ってしまい、それではと火曜日のみリクエストなしでそのような音ばかりをかける日にしたところ、結果的にその日にもっとも客が集まってきたのだという。もとよりアメリカのニュージャズにのみ注目していた中平さんに、副島さんが、ヨーロッパも良いですよと魔の誘い。そこからのメールス行き、日本のミュージシャンの送り込み。ところで、副島さんは海外に行くと、同行者との食事の前に街を1時間半くらい歩き、安くてうまいものをみつけていたそうである(なんて良い話だろう!)。

山崎比呂志さんは、新世紀音楽研究所での高柳との活動に加え、阿部薫の思い出を語った。山崎さんは当時21歳。「凄い音とスピードだと思い感動した。1年くらい一緒にやった。いろんなことを教わった」と。阿部を知ったことが宝だとまで言った。

佐藤允彦さんによれば、当時、ジャズミュージシャンの間でもアメリカのコピーをすることが当然のように語られていたという(「あんた誰をやってんの」という挨拶)。それがNJHで変わった、その前に銀巴里などがあったとしても。NJHの功績は、相手の呼吸を読むことを育てたという点だ、と。フリーインプロヴィゼーションを行うきっかけになった富樫雅彦、副島輝人の両氏には感謝だと語った。

会場では、中平さん撮影のポストカードが配られた。わたしはコルトレーンやモンクではなくガレスピーをいただいた。

■ 第3部:詩とジャズ

山岡ミヤ、佐藤文夫、白石かずこ

Kazutoki Umezu 梅津和時 (as, bcl)
Nobuyoshi Ino 井野信義 (b)
Hiroshi Yamazaki 山崎比呂志 (ds)

3人の詩人による自作詩の朗読。それぞれ面白く、脳のよくわからない場所を刺激する。

中でも大トリの白石かずこさんはやはり圧倒的な存在感。「子分でもあり、神様であり、パートナーでもある詩」を読むと言ってはじめ、「ブラックバード」という言葉が出てきたら梅津さんも「Bye Bye Blackbird」をアルトで吹く。山崎さんはブラシも超一級だなと改めて発見する。最後は皆で鳥になった。終わってから、白石さんは、「歳をとると人は馬鹿になってゆくのです。みなさんどんどん馬鹿になりましょう!」と力強く呼びかけた。

それにしてもこれはNJHが出来て50年のプレイベント。来年何が行われるのか、震えて待とう。