Sightsong

自縄自縛日記

パット・メセニー『80/81 in Stockholm』

2018-11-25 22:54:35 | アヴァンギャルド・ジャズ

パット・メセニー『80/81 in Stockholm』(JM、1981年)を聴く。

Pat Metheny (g, g synth)
Dewey Redman (ts)
Michael Brecker (ts)
Charlie Haden (b)
Jack DeJohnette (ds)

言うまでもなく『80/81』は名盤だが、これはそのメンバーによるライヴ演奏の記録(1981/8/23)。

2枚組で1枚に2曲ずつ収録されている。そのうち「Every Day (I Thank You)」と、オーネット・コールマンの「Turnaround」の2曲が『80/81』と重なっている。雰囲気はもちろん同じようなものだが、何しろライヴだけあって1曲ずつが長い。「Turnaround」なんて『80/81』ではギター中心の短い演奏だったのに、ここではデューイ・レッドマンもマイケル・ブレッカーもチャーリー・ヘイデンも長いソロを取っている。われらがデューイ・レッドマン最高!チャーリー・ヘイデン最高!

「Offramp」もまた最高に良い。冒頭の「Broadway Blues」ではヘイデンが得意の繰り返しを弾く前で、デューイがうぐっと喉を詰まらせつつも吹きまくっていたりして。

マイケル・ブレッカーの巧いだろ的なソロはいつになっても好きになれないのだが。

●パット・メセニー
ローガン・リチャードソン『Shift』(2013年)
パット・メセニーとチャーリー・ヘイデンのデュオの映像『Montreal 2005』(2005年)
パット・メセニーの映像『at Marciac Festival』(2003年)
デイヴィッド・サンボーンの映像『Best of NIGHT MUSIC』(1988-90年)(メセニー参加)
映像『Woodstock Jazz Festival '81』(1981年)(メセニー参加)
ゲイリー・バートンのカーラ・ブレイ集『Dreams So Real』(1975年)


J・ウォーリー・ヒギンズ『秘蔵カラー写真で味わう60年前の東京・日本』

2018-11-25 18:57:01 | 写真

J・ウォーリー・ヒギンズ『秘蔵カラー写真で味わう60年前の東京・日本』(光文社新書、2018年)を読む。

古い東京の写真が多くて楽しいし、昔のカラー写真がコダクロームよりも劣化していたりするのが興味深かったりして、手に取っただけなのだが。

途中でビックリした。山口県の故郷にあった船木鉄道が登場する。しかも船木駅、伏附駅、万倉駅の写真が。毎日のように歩いていた場所である。生まれる前にはもう廃線になっていたので、この鉄道自体は見たことがないし、駅の写真を凝視しても少年時代の光景とは違い過ぎて重なってこない。わたし以外にはどうでもいい話だと思うが。

それにしても驚いた。よくあのような僻地まで行ったねヒギンズさん。


マタナ・ロバーツ@スーパーデラックス

2018-11-25 18:13:38 | アヴァンギャルド・ジャズ

六本木のスーパーデラックス(2018/11/24)。

Matana Roberts (as)

マタナは登壇すると、来ることのできた喜びと、観客から感じるエネルギーについて早口で呟いた。そこから30分強だろうか、文字通り圧巻のアルトソロ。

彼女は呼吸のサイクルと同調させるようにアルトを吹く。息継ぎや感情を増幅させるように。そしてブロウには血や情や泥が溢れんばかりに詰まっている。そう、泥臭いのだが、エネルギッシュでクールでもある。

アルトだけではない。「Chicago... Get out my Chicago, I love it.」とルーツへの愛を呟き、また、「Something in the universe shifts...」と呟きつつ、共感する観客の声とともにドローンを創出した。これは「dedicated moments to you and me」であり、そして、「Let's celebrate life.」と。最後は「My name is Matana Roberts.」と締めくくった。痺れるとはこのことだ。しばらく忘れられそうにない。

終わってからマタナさんと少し話をした。去年NYで観たときにはその機会がなかったし・・・。

勝手に少し怖い人かと思っていたのだが、しっとりした情愛が伝わってきて、素敵な人だった。「Coin Coin」シリーズは現在3作まで出ていて、最終的には12作が目標とされている。なんと来年には第4作、その後は第7作を出して少し戻ったりもするという。楽しみだ。

間違いなくこの短くて長い時間が今年のベストライヴ。

(※対バンで他の演奏もあったのだが、呆然としていてほとんどスルーしていた。すみません。)

●マタナ・ロバーツ
マタナ・ロバーツ「breathe...」@Roulette(2017年)
マタナ・ロバーツ『Coin Coin Chapter Three: River Run Thee』(2015年)
マタナ・ロバーツ『Always.』(2014年)
マタナ・ロバーツ+サム・シャラビ+ニコラス・カロイア『Feldspar』(2011年)
マタナ・ロバーツ『The Chicago Project』(-2007年)
アイレット・ローズ・ゴットリーブ『Internal - External』(2004年)
Sticks and Stonesの2枚、マタナ・ロバーツ『Live in London』(2002、03、11年)


西島芳 trio SONONI@下北沢Apollo

2018-11-25 13:18:02 | アヴァンギャルド・ジャズ

下北沢のアポロで、西島芳 trio SONONI(2018/11/23)。

Trio SONONI:
Kaori Nishijima 西島芳 (p, voice) 

Motohiko Ichino 市野元彦 (g) 
Akira Sotoyama 外山明 (ds) 

外山明、市野元彦という剛の者というか唯一者というか、そんなふたりを率いた西島芳さんのtrio SONONI。爽やかな雰囲気をまとってはいるが、実のところ、一筋縄ではいかない音楽である。

アンビエント的な「Siesta」、それから「With a Heavy Rain」に続き、「Arrival」。2013年の『White in Dark』に収録されている曲であり、西島さんによれば、その前年にスウェーデンに到着したときの空気感を曲にしたものだという。清冽で、市野さんとユニゾンのように重なったときの音の官能といったらない。4曲目は「Elegy」。スウェーデンの詩人トーマス・トランストロンメルの詩をもとにしたということで、イントロの透明さや、曲全体が持つボーダーのない感覚が良い。

セットの最後は「Naive」。市野さんのギターは、曲であってもインプロであっても、演奏するというリアルがすべてを超えるような不思議な素晴らしさがある。外山さんの自由なパルスと相まっての不定形のサウンド、それではヴォイスはというと、それらのあわいに現れては消えていく。

セカンドセットは外山さんの2曲「Harbor」と「F Penta D Blues A」から。続く「たわいのない話」では、それまでよりも比較的力強くピアノを弾き始め、ギターとドラムスが追随した。「瑞雨」ではギターから始まり、西島さんのヴォーカルとピアノとギターとの重なりがたまらなく良い。「Missing Airport」でもやや強いイントロで、その一方で、ことばが水蒸気や空気でコーティングされている。アンコールは「Evening」。ドラムスもギターも浮上して出てくる。

アポロの雰囲気とも相まって陶然。また次の東京公演の際には聴きにこなければ。

Fuji X-E2、7artisans 12mmF2.8

●西島芳
西島芳 triogy@本八幡cooljojo(2018年)
西島芳 triogy@下北沢Apollo(2018年)
西島芳 trio SONONI@下北沢Apollo(2018年)
西島芳アンサンブル・シッポリィ『Very Shippolly』(2017年)
『SONONI, Laetitia Benat』(2016年)


シュリッペンバッハ・トリオ+高瀬アキ「冬の旅:日本編」@座・高円寺

2018-11-25 13:05:56 | アヴァンギャルド・ジャズ

座・高円寺にて、シュリッペンバッハ・トリオ+高瀬アキ「冬の旅:日本編」(2018/11/23)。

(写真撮影は許可を得ています)

Alexander von Schloppenbach (p)
Evan Parker (ts)
Paul Lytton (ds)
Aki Takase 高瀬アキ (p)

何しろヨーロッパの生きる伝説シュリッペンバッハ・トリオである。1997年の来日時には六本木のロマーニッシェス・カフェと新宿ピットインに観に行ったが、その際は、エヴァン・パーカーの急な事情で、ルディ・マハールが代役に入った。当時新鋭のマハールは前年のベルリン・コンテンポラリー・ジャズ・オーケストラで観ており(エヴァン・パーカーの横にいた)、もの凄くユニークなプレイで印象的だったから、それはそれで嬉しかったのだけれど、やはり、エヴァンが吹くトリオを観たかった。今回の企画に奔走なさった横井一江さん曰く「21年目のリベンジ」(だったかな)。

ただ、ドラマーはオリジナルメンバーのパウル・ローフェンスではなくポール・リットン。ローフェンスには長時間のフライトが厳しいというのだが、最近、喜多直毅さんもドイツでそのプレイを観て良かったと書いており、元気ではあるみたいだ。ローフェンスはいつもワイシャツにネクタイのトレードマーク、21年前にサインをもらったらジャケットの表から裏にまではみ出させる素敵な人だった。ともかく、リットンだってたいへんなドラマーであり、かれが目玉であってもおかしくはない。

第1部はシュリッペンバッハと高瀬アキの連弾とそれぞれのソロ。冒頭は「Steinblock」、いきなりふたりの違いが明らかになる。アレックスは細かな音を執拗に並べるスタイルであり、アキさんは強弱を物語的に付ける。アレックスがこれをキープし、肘も使って嬉しくなった。21年前の印象に強い怒涛のエネルギーは弱まっているが、コアは変わらない。

次に「Zankapfel」、これも先の曲と同様にデュオ盤『Iron Wedding』に収録されている。何か林檎のひとつだろうと思っていたのだが、アキさんの解説によると「喧嘩の種」とでもいった意味。そうか「zank」は「喧嘩」か。演奏もそれをイメージさせるように、互いに介入干渉しあうように進められ、アキさんの内部奏法もあり、そのうちリズムが狂ってブギウギのようになったりもした。

3曲目はアキさんのソロでオリジナル「Cherry-Sakura」。デイヴィッド・マレイとの共演盤があり聴いてみたい。坂田明さんとも共演しているという。これが素晴らしい演奏で、力強く抒情的でもあり、高瀬アキというピアニストの特徴が表出しているように聴こえた。アキさんのブルースといってもいいのではないかと思えた。終演後ロビーでたまたま隣にいた女性と話していたら、この曲が本当に良かったと強調していた。

変わってアレックスのソロ。リズムも選び出される音も発散し、その細かな差異に美のようなものが隠しようもなく出てくる。インプロからふと間を置いてセロニアス・モンクの「Light Blue」、「Smoke」とつなぎ、そして、ハービー・ニコルスの「Every Cloud」。ニコルス!いや驚くことはない。最近の作品『Jazz Now! - Live at Theater Gütersloh』でも演奏している。いい曲だな。

そしてまた連弾に戻った(曲名はわからない。アキさんは「砂漠の船」と言っていた)。アキさんの手拍子、アレックスの低音からはじめ、オリエンタルなコードを使った。アレックスは揺れ動き、アキさんは太くブルージーに攻めた。続く曲では、アキさんはピアノ内部の弦にあれこれを挟んだようで、それによる異音と力強さとを共存させ、空間をアレックスが埋めていった。

第2部は待ってました、シュリッペンバッハ・トリオ。

エヴァン・パーカーはこの日、テナーだけを使った。ソプラノとなると空を飛ぶ小鳥のごとき独特の循環呼吸によるエヴァン・サウンドを聴けるのに対し、テナーだと太くうねるような、ときにブルージーでもあるという、これまでエヴァンを観てきた印象。ここでは、もっと表現力が豊かだった。

また、ポール・リットンの音はドライであり、サンドバックを思わせるデッドな感覚もあった。スティックの素材感が出ているとも言えた。多数の叩き物を横に置き、ブラシではタテにヨコに音の手を伸ばし、実に幅広い音を出し、知的にトリオのサウンドを覆い尽くした。(わたしとしては絶賛)

アレックスの介入、エヴァンのうねり、ポールの破裂。アレックスのグルーヴ、エヴァンのゆったりさ、ポールの滋味あるカラフルさ。3人が別種のノリで音楽を相互に駆動し続けた。これを快楽と言わずして何と言おう。

ポール・リットンはここではじめて擦りを披露。スティックでシンバルの周囲を円環を描く技をみせた。また、細いスティックを取り、それに見合った音を出した。アレックスの再介入、エヴァンの循環、ポールの響き。アレックスの弾いたフレーズに間髪を入れず呼応し、エヴァンが同じフレーズを吹く場面もあった。演奏は激化してきて、ポールはドラムの上に円盤を置いて跳躍させもした。そして潮目が変わり、アレックスの轟音と弦のしなり、エヴァンの重音、ポールのノイズ。

ここでアキさんが加わり、アレックスとの連弾で、実に愉しそうに弾く。呼応して全員がまるで空を飛翔しているように感じる。

アンコールは連弾のピアノデュオ。アレックスは小唄のように弾き始め、アキさんは手拍子。ラグタイムのようだった。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4、7artisans12mmF2.8

●アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ
アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ『Jazz Now! - Live at Theater Gütersloh』(2015年)
アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ『ライヴ・イン・ベルリン』(2008年)
シュリッペンバッハ・トリオ『Gold is Where You Find It』(2008年)
アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ+高瀬アキ『Live at Cafe Amores』(JazzTokyo)(1995年)
シュリッペンバッハ・トリオ『Detto Fra Di Noi / Live in Pisa 1981』(1981年)
シュリッペンバッハ・トリオ『First Recordings』(1972年)
ギュンター・ハンペル『Heartplants』
(1965年)

●エヴァン・パーカー
デイヴ・ホランド『Uncharted Territories』(2018年)
エヴァン・パーカー@稲毛Candy(2016年)
エヴァン・パーカー+高橋悠治@ホール・エッグファーム(2016年)
エヴァン・パーカー@スーパーデラックス(2016年)
エヴァン・パーカー、イクエ・モリ、シルヴィー・クルボアジェ、マーク・フェルドマン@Roulette(2015年)

Rocket Science変形版@The Stone(2015年)
エヴァン・パーカー US Electro-Acoustic Ensemble@The Stone(2015年)
シルヴィー・クルボアジェ+マーク・フェルドマン+エヴァン・パーカー+イクエ・モリ『Miller's Tale』、エヴァン・パーカー+シルヴィー・クルボアジェ『Either Or End』(2015年)
エヴァン・パーカー+土取利行+ウィリアム・パーカー『The Flow of Spirit』(2015年)
エヴァン・パーカー+土取利行+ウィリアム・パーカー(超フリージャズコンサートツアー)@草月ホール(2015年)
マット・マネリ+エヴァン・パーカー+ルシアン・バン『Sounding Tears』(2014年)
エヴァン・パーカー ElectroAcoustic Septet『Seven』(2014年)
エヴァン・パーカー+ジョン・エドワーズ+クリス・コルサーノ『The Hurrah』(2014年)
ジョン・エスクリート『Sound, Space and Structures』(2013年)
『Rocket Science』(2012年)
ペーター・ブロッツマンの映像『Soldier of the Road』(2011年)
ブッチ・モリス『Possible Universe / Conduction 192』(2010年)
エヴァン・パーカー+オッキュン・リー+ピーター・エヴァンス『The Bleeding Edge』(2010年)
ハン・ベニンク『Hazentijd』(2009年)
アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ『ライヴ・イン・ベルリン』(2008年)
シュリッペンバッハ・トリオ『Gold is Where You Find It』(2008年)
エヴァン・パーカー+ノエル・アクショテ+ポール・ロジャース+マーク・サンダース『Somewhere Bi-Lingual』、『Paris 1997』(1997年)
エヴァン・パーカー+ネッド・ローゼンバーグ『Monkey Puzzle』(1997年)
エヴァン・パーカー+吉沢元治『Two Chaps』(1996年)
サインホ・ナムチラックとサックスとのデュオ(1992-96年)
ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ(1981-98年)
スティーヴ・レイシー+エヴァン・パーカー『Chirps』(1985年)
エヴァン・パーカー『残像』(1982年)
シュリッペンバッハ・トリオ『Detto Fra Di Noi / Live in Pisa 1981』(1981年)
カンパニー『Fables』(1980年)
シュリッペンバッハ・トリオ『First Recordings』(1972年)

●ポール・リットン
ガイ+クリスペル+リットン『Deep Memory』(2015年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+ジョン・ブッチャー+ポール・リットン『Nachitigall』(2013年)
ネイト・ウーリー『Seven Storey Mountain III and IV』(2011、13年)

●高瀬アキ
高瀬アキ+佐藤允彦@渋谷・公園通りクラシックス(2016年)
アンサンブル・ゾネ『飛ぶ教室は 今』(2015年)
高瀬アキ『St. Louis Blues』(2001年)
アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ+高瀬アキ『Live at Cafe Amores』(JazzTokyo)(1995年)
高瀬アキ『Oriental Express』(1994年)