Sightsong

自縄自縛日記

写真の元祖

2007-02-04 22:59:24 | ヨーロッパ

19世紀にネガ・ポジ法「カロタイプ」を発明したウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボットは、英国のレイコックという村に住んでいた。現在、レイコックには、タルボット博物館や、彼の墓がある。博物館には、有名な箒の写真をはじめ、タルボットが村で撮った写真や使った機材が展示してあって面白い。

レイコックはロンドンから西へ電車で数時間、チッペナム駅からタクシーで少し行けば到着する。なお、バスはあまり当てにならない。帰りの便はなおさらなので、行きのタクシーにカードを貰っておくとよいと思う。公衆電話は、タルボットの墓がある墓地の近くにある。

ナショナル・トラストに指定された本当に美しい村である。被写体も、人、猫、教会、自然、家々、牧場などたくさんある。ロンドンに遊びに行かれる方は、日帰りで行ってみることをおすすめしたい。私も、ぜひ、もう一度訪れたいと思う(行けないかもしれないが)。

写真の歴史を追体験して、自分もネガで写真を撮ってみて、帰国してからプリントしたりすると、こんなに便利で品質の高い写真が撮れるのに、なぜデジカメが必要なのかと、正直思ってしまう。

ところで、日本人撮影の最古の写真は、薩摩藩主・島津斉彬がモデルとなっているが、これはカロタイプと同時期にフランスで発明されたポジ・ポジ法、「ダゲレオタイプ」によるようだ。


タルボットの墓 Leica M3, Summicron 50mm/f2.0, T-Max400, Agfaマルチコントラストクラシック


レイコックの小川 Leica M3, Summicron 50mm/f2.0, T-Max400, Agfaマルチコントラストクラシック


「かのように」と反骨

2007-02-03 16:38:29 | 思想・文学
日本神話と古代国家』(直木孝次郎著、講談社学術文庫)は、著者の1960年代から80年代までの論考をまとめたものだが、その姿勢や論調は一貫している。

「古事記」と「日本書紀」、いわゆる記紀神話が、古代の天皇を中心とする体制によって編集され、改竄され、作為が加えられた物語であること、神武天皇以降の初期の天皇が虚構であること、さらには明治以降に神話教育が強制されてきたことに、本書の大半の頁が費やされている。その指摘は執拗をきわめる

もっとも、現在では神話の歴史上の位置づけは、かなりベールがはがされていると見てよいのだろう。だからといって神社が必要とされないわけではないことが、面白いところだ。日本国憲法と同様、民衆により作られたものでなくても、ある程度は民衆の間に根付くということか。

国による神話の確立という面でみたとき、そのエポックはおそらく次の4つの時期であろう。

●主に天武天皇・持統天皇による、天皇制確立のための日本神話の創生

 これが津田左右吉からはじまる学説の核である。
 『アマテラスの誕生』(筑紫申真著、講談社学術文庫)にも
 引き継がれているようだ。

●明治新政府による、国づくりのための天皇制の復権

 近代国家への変身のために、天皇が再び国家の中心に据えられた。
 国民への受容のため、明治大帝の御真影というメディア・ミックス政策が効を
 奏したわけである。 『天皇の肖像』(多木浩二著、岩波現代文庫)に詳しい。
 ※なお、御真影はフォクトレンダーのヘリアーで撮影されたとか。

●昭和軍事政権による、日本を神国とする妄想

 言うまでもない話。

●そして現在?

本書によると、森鷗外による1912年の作品『かのように』では、神話を事実でないとする「不敬」を恐れた主人公が、「これまでそうであるとされてきたことは、かのように、荒立てずにおこう」と考える。弾圧を恐れた判断停止である。

さて、現在の教育基本法改正による「体制に楯突かない国民、戦争にも協力する国民」への志向に、似たようなマインドが感じられて仕方がない。教育方針も、国旗も、国歌も、イラク派兵も、沖縄の米軍基地も、「かのように」考えろということだから。国旗や国歌が問題というのではなく(問題だが)、「うるさいことを言うな」というあり方が問題なのだ。

日本ファシズムの復活だと中国や韓国が主張することは、決して国際政治上の戦略でも杞憂でもないのではないか。

戦前に出版を差し止められた津田左右吉、神話を体制による物語だとした家永三郎、そしてこの著者の反骨精神には、偏見を抜きにして学ぶべきことがある。大げさな話ではなく、日常の心の持ちようの問題である。

唄ウムイ 主ン妻節の30年

2007-02-01 08:18:28 | 沖縄
大城美佐子さんの新作『唄ウムイ』が出た。
美佐子先生の「てぃんさぐぬ花」や「移民小唄」は初めて聴いた。

「主ン妻節」(すんとぅじぶし)は、夫婦の痴話喧嘩。この曲は、数年前に、嘉手苅林昌の『ジルー』で、美佐子先生の声をはじめて耳にした曲である。それで凄いと思って、美佐子先生の作品をいろいろそろえることになってしまった。『ジルー』を確かめてみると1975年録音。30年以上の時間差があるわけだ。もちろん林昌は故人だから、今回は名護良一さんとの掛け合いになっている。

新作での「主ン妻節」には、30年以上前の、キーンと突き刺すような声はない。そのかわりに、もう美佐子先生にほかならない個性がアルバム全体に充満している。何度も聴きたいと思ってしまう。

ところで、その『ジルー』を聴いたあと、美佐子先生のお店「島思い」を初めて訪れたときのこと。美佐子先生は夜の12時になるやならずやの頃にあらわれ、刺身や汁を振舞ってくれた。唄い始めたのは深夜4時ころ。客は自分とあと1人の酔っ払いだけ。とても贅沢なことだった。

島思いのHP



歩車分離式信号(4)

2007-02-01 01:09:10 | 政治

市川市公表のハザードマップの件、市から回答を頂いた。
要約すると、

●アンケート実施やマップ公表を通じて市民の交通安全意識を高めることが狙い。

●ヒヤリ体験アンケートは、平成17年12月にペーパーによる方法と市ホームページを利用した方法により実施した。

  ・合計 630件の情報
  ・対象① 市民(市役所本庁、支所、出張所、公民館等で実施)
  ・対象② タクシー会社、バス会社、宅配会社、市川・行徳の両郵便局
  ・対象③ 市職員
  ・対象④ 市ホームページからの回答
(※ざっくり言うと、役場にあるアンケートに答えたり、自らホームページにアクセスして意見を述べたりする「積極的な人」に偏っている。)

●市内には128の自治会があり、その全ての自治会に対し全世帯等を対象にしたアンケートを実施するには、予算面、事業スケジュール等の制約から困難。

●次に、地域を限定し具体的な交通安全対策の検討、実施を行う予定(最初に南大野地区)。

とのこと。

それはわかったが、まだすっきりしない。

◎やはり母集団が少ない。630回答は、市川市の約21万世帯(1世帯=1意見として)の0.3%に過ぎない
◎母集団の偏りはあるはず。交通被害に晒されるお年寄りや子供の親の意見を汲み取っているだろうか。
◎不十分なハザードマップの公表によって、「マーキングされていないから危なくない場所」との判断がなされるのではないか。
◎各自治会にとっては、良い話なのであるから、特に予算などを配賦しなくても(実費のみ)、協力できるのではないか。
 (地方自治体は予算をつけてお金を払わないと事業ができないのだろうか?)

といいつつも、交通事故削減に向けた前向きな取り組みであると考えたい。
まずは、せっかく設置されている「ヒヤリ体験アンケート」に投稿するべきなのだろう。
交通安全という身近な問題に対する意見が、マップとして反映されるような仕組みはそうはないはずだ。

http://www.trafficplus.co.jp/hiyari/pc/