日々のつれづれ(5代目)

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本多勝一著 「日本語の作文技術」(朝日新聞社文庫)

2009-04-26 22:24:26 | 本・映画・展覧会
 もう何年前になるだろうか、オークションで本多勝一著作セットを購入したのは。爾来幾星霜…書きぶりは素直だが思想のひねくれた(笑)作品と向かい合って来て、ようやく最後の一冊となった。そして最後はこれと買った時から別分けにしておいたのが本書である。

 別分けにしておいたのにはもちろん理由があって、学生時代の講義で作文教室みたいなのがあって、その時に教授に薦められて読んだ記憶があったのである。ただし内容を全然覚えていないところをみると、真剣に読んではいなかったようだ。もしくは、薦められて手にはしたものの、本の厚みと字の小ささに腰が引けて読み通さなかったのかもしれぬ。人並み以上に日本語には注意を払っているつもりがこのザマ。レベルは推して知るべし、だな(苦笑)。さて、今こそ読まん…途切れ途切れに3週間。ようやく。

 結論から言えば、できるだけ早い機会に読んだ方が良い。本多勝一はアクの強い人なので、その意見や書きぶりに抵抗感を覚える人は少なくないと思う。が、本書はそれらの一切がない(はずだ)。極めてきちんとした論法で、具体的な例を多用しつつ読み易い文章、誤解を招きにくい文章の書き方を知ることができる。

 本書が難読な気がしたのは決してその内容が超高度なわけではなく、ことごとく並べられた例文を読むのに疲れてしまうからではないか。分かると思えば(自信があれば)読み飛ばして構わない。大切なのは「明快な」文章を書く上での規則~著者が主張するものという限定だが~を理解することだ。

 「その内容が超高度なわけではなく」と書いておきながら一方で「できるだけ早い機会に読んだ方が良い」とするのは、本書が一読して通り過ぎるだけの存在ではなく、身近において折に触れ読んでも構わない、辞書的用法に使える内容を持つからだ。言われて見れば何のことはない、そんな内容が多い。それは学校で教わった文法なのか、それとも自分が読み書きしてきた中での経験則なのか、いずれにしろ新たな発見は本書には多くはない。それは本書が凡庸な内容だというのでは決してない。文章を書く上で何気なく思っていること、漠然とした知識となっていることを明快に論じ整理しているのが本書なのである。また、そうした文章を書くことを通じ、自身の考えの整理すらもできる可能性をも秘めているのではないか。

 この本を読んだからと言って決して作家になることはできない。だが名文家になることは出来るかもしれない。この本を読み内容を「実践」することでメールや仕様書などで誤解を招く可能性が減り、それによるトラブルおよびそれらへの対応が減ることを考えれば、仮に一読するのに一ヶ月かかろうが大した労力ではないではないか?

 学生時代から20数年ぶりに「借り」を返せたようで今、とても嬉しい。と同時に、あの時もう少し真剣に取り組むべきだったと思いもする。もっと真剣に取り組むべきだった。高校生以上なら間違いなく読めるはずだ。余計な世話かもしれないがお父さんお母さん、お子さんに奨めなさい。奨めるだけでなく、ご自身もぜひ。

 2009年4月22日 会社帰りのスタバにて読了
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