本の返却に行った図書館で偶然見つけ、舞台が川崎だというので読んでみたところ、これまた貧困家庭に生まれ育った若者たちのルポ作品だったのは何の因果か。
タイトルに異議あり、本書は川崎市の中でも川崎区、それも概ね京急大師線・産業道路・JR南武線浜川崎支線・京急本線で囲まれた狭いエリアの話。本書を読んで川崎全部がこのような街と思われたくはない。そういう断り書きは本書中にもあるのだが、やはり指摘しておきたい。
著者がインタビューし物語を綴った若者は、この狭いエリアに住み行動範囲もほとんどこの範囲と言う、いわゆるストリート系文化のヒーローたち。ほぼ全員が裕福でなく、かつ複雑な家庭環境を持ち、素行不良な少年時代を送り、その中でラップだったりスケボーだったりと楽しみを見つけ、ひとかどの評価を得るまでになった。
著者はあからさまな称賛は送っていないが、本書自体は「ヒーロー伝」と読まれるだろう。細かに各人の生い立ちを紹介しており、そういうバックグラウンドの紹介こそが本書のテーマであるはず。そういう他民族異文化で混沌とした世界が、川崎区の一角にあるという紹介をしたかったのだろうが、何となく不快感が残る。それは、不良少年たちがヒーローと紹介されることへの反発なのか。複雑な経歴を持つ人でも生きられる街・川崎(区)と紹介したかったのか。どうも気に入らない。
2023年11月1日 「駅からハイキング」より戻る電車にて読了