昨年9月に山口県防府市を訪れた際に、本書の著者の出身地であることを知った。同時に、訪ねた野島が本作の舞台であることも知った。本書を読んだ記憶はあるものの最後の部分しか覚えていなかったため、改めて読み直してみた。
まだ離島が僻地で教育も十分に行き届かなかった頃、代用教員として止むを得ず採用した大柄な青年は口がきけなかった。口のきけない者が子供の教育などできるのか?誰もが思う当然の疑問を、力強い機関車のような容貌から子供たちに「機関車先生」とあだ名された青年は、その人柄で見事に子供たちを教えてゆく。その存在は子供達だけでなく、島の大人たちにも影響を与え、受け容れられていったが、正式な教員が決まり、代用教員である「機関車先生」は島の人々から大いに引き留められるのを固辞して去ってゆくのだった。
本書は子供向けの作品だったか、大人向けの作品だったか。どちらにも読めるところが見事。易し過ぎず難し過ぎず、それでいてそれぞれに対する主張が見える。別れのシーンはもう少しドラマティックだった記憶があったが、あてにならないものだ。だがその呆気なさが、残された者たちの呆然とした余韻を表しているのではと思えるようになった。
2025年1月14日 自宅にて読了
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