超大作で、借用期限が来てしまいいったん返却し、後日借り直して読んだ。文章は分かりやすく、会話もリズムがあるので難しいわけではない。とにかく量が多いのだ。
量が多いのは、タイトルの主人公・藤木幸夫しだけでなくその父である幸太郎氏、また長男である孝太氏についても記述もあるからで、中でも幸太郎氏については本書の1/3くらい割いているのではと思う。なぜそんなに父の記述が必要かと言えば、藤木企業が横浜に根を張る過程を事細かに記しているからだ。
藤木家3代だけでなく、多くの人物が登場し覚えきれない。博徒もヤクザも、警察官も政治家もいる。そして港の労働者が無数にいる。そう見ると本書のタイトルには違和感を覚える。本書の内容の多くは藤木企業の絵巻物、幸夫氏の近年の立ち振る舞いに関しては全体の1/5程度か。
本書を読んだ多くの人は、幸太郎氏、幸夫氏と色々な苦労や修羅場を経て今日の地位を築いたのだなと立身伝のように思うのだろうか。それとも所詮は博徒と大差ない港湾労働者、イマ風に装っても本性は「その筋」の人と見るのだろうか。著者が後半、横浜に起こるざまざまな出来事を幸夫氏がまとめ上げてきた「実績」を紹介すればするほど、ドンあるいはフィクサーとしてのうさん臭さが強調されてしまうように感じてしまったのだが。
少し前に横浜で交通事業を立ち上げようとした知人がいたのだが「とにかく藤木企業に挨拶に行かないと何もできない」と言っていた。様々な調整力と、街を牛耳ることがイコールなのは良いことなのだろうか。
2025年1月15日 自宅にて読了
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