越後の里山では時々見られる高木で時に30mはあろうかという大木もあります。古い農家や屋敷にもよく見られ意図的に植栽された面もあるようで放棄された農地跡など自生か植栽か判然としないものも多々あります。それほど高木でない個体も点々とありますが地味な存在ですからほとんど注目されません。
ケンポナシを特徴づけるものは何と言っても果柄です。結実後ここが肥大し勝手気ままに屈曲し、食べると甘味があり「梨」の食感もありますから名前の由来ににもなっているのだろうと思います。「梨」はなっとくしても「ケンポ」は何でしょうか?残念ながら私は知りません。種子はこの果柄の先端に丸く付着している本来の果実の中に存在します。
この果柄が食用になると考えると古い家にも良く見られる理由も推測できますね。救荒植物と考えるとそれなりの筋が出来ます。一説には悪酔いにもいいとかで家やあるいは里地に近いところに大木が見られるのは生活の知恵なのでしょうか。甘味はあるといっても現代人にとってはそれほど美味しく感じるものでもありませんからパクパクと食べるような存在ではなくなっています。
一見果実のような丸い物体は実は「虫こぶ」。これを生じさせる原因の昆虫については知識がないので分かりませんが、ハエやハチなどの寄生性のものでしょう。中にきっと幼虫がいるのではないでしょうか。出来る位置から考えると、若い果実に生じた虫こぶのようです。ややぼやけていますが、絵の後方に正常な果実がありますから比較してみるとはっきりしますね。
こちらはミズナラにできた虫こぶです。葉の面からいきなり球状の物体が形成されています。一つ二つでなく沢山出来ているものもありますが、かなりまばらです。これも寄生性のハチかハエの仲間が卵を産み付けたことが原因です。昆虫の気ままな行為が虫こぶの数を左右することになります。
この虫こぶ、秋にはほんのりと色づいてきますから時に「果実」と勘違いされる向きもあります。紛らわしい存在ですが、これはこれで面白い造形です。虫こぶだけを追究してみても素敵な世界が広がっていることは確かですね。
この虫こぶ、秋にはほんのりと色づいてきますから時に「果実」と勘違いされる向きもあります。紛らわしい存在ですが、これはこれで面白い造形です。虫こぶだけを追究してみても素敵な世界が広がっていることは確かですね。
尾根道を歩くことしばらくしてユキグニミツバツツジの個体が目立ってくるのですが、その中の1株が花をいっぱいつけていて一行を驚かせました。10月19日のことです。ツツジ科の種には10月頃に花を見せるものはぽつぽつありますが、ここまで本格的に咲いているものを見るのは過去にありません。それも、園芸種ではなく自生の種ですから目を疑った次第です。実はこれほどではないにしても花をつけている株は他にも見られました。今年の陽気がミツバツツジの開花時期を間違わせるものであったのでしょうか。開花時期を間違いやすい性質がここの個体群にはあるのか・・・。秋咲き性のミツバツツジなどがこんな株をもとにするとできてしまうのかもしれません。
この株に関して言えばほとんどの花芽が動いていてほぼ満開状態。しかし、なんとなく時期を疑っているような咲き方の花もあってのびのびしたものではないのです。やはり、ミツバツツジは葉が展開する前に一斉に咲くほうが美しいですね。春の花だと思うのですが・・・。来春は花のない株になってしまいました。
ガンクビソウの仲間の花はどれもとても地味。ヤブタバコの頭状花はとっくり型といえばいいのでしょうか、コロッとした下向きの花が葉腋に左右に並んでついています。角度によっては葉と同じ色ですから頭状花とは気づかないかもしれません。
不動滝の近くにあまり見かけない、ガンクビソウに似た草本が小さな群落をつくっていました。ガンクビソウの仲間でよく見かけるのはサジガンクビソウとノッポロガンクビソウなのですが、両種とも明らかな違いがあります。ヤブタバコという種です。個体数は多くない種のはずで私も久しぶりの出会いで先回の記憶も定かでない程です。とにもかくにも貴重な種がこの八石山にはあるということがわかりあまり注目していなかったことに反省の念が湧いてきました。まだまだ野歩きをしないといけないんだなぁ・・。人に対して何かを言うにはそれの裏付けがないといけませんね。自然の草花について話をするにはもっともっと広く歩いて、生きているそのものの姿をしっかりと観察しなければなりません。