森の案内人 田所清

自然観察「独り言」

クマガイソウ群落

2013年12月11日 | 自然観察日記
師走も半ば近く。さすがにフィールドには出にくくなってきました。タイムリーな話題が特に得られない季節です。今年も今まで出かけた中からまだ載せていないものがありますからその中から紹介してみようと思います。
福島県の水原のクマガイソウ群落は圧巻でした。5月の話です。越後の長岡でもクマガイソウの自生の群落を把握してはいますが、これほどの量のクマガイソウを見たのはもちろん初めてです。独特な形をした花は可愛いという感じのものではないかもしれませんが魅力的です。この大群落は一見の価値はありそうです。
完全な自生という訳では無いようでかなり意図的に増殖が図られて手厚く保護されている環境でした。ここまで保護し増やしてきた人々の努力を感じます。スギの植林地の斜面に5000株程度あるという話でした。とにかく盗掘を防がなくてはなりませんから、開花期間以外閉鎖され中に立ち入ることはできません。クマガイソウに限らず貴重な自生種を盗掘するという行為がどうしてなくならないのでしょうか。意識を変えて、自然のままにしておく・・・。花が見たかったらそこに行けばいいではありませんか。買う人がいるから盗掘がなくならないという話です。

クマガイソウ 花

2013年12月11日 | 自然観察日記
ラン科植物で基本形は同じですが、とにかく変わった風貌をしています。特に「リップ」(唇弁)と言われる花弁が発達していて袋状の独特な形状になっています。葉も特徴があり扇形の葉が2枚対になって付きます。ラン科植物はラン菌と共生関係を結んで生育しているといわれ、鉢栽培が難しいものがあるのだそうです。クマガイソウもその一つで無菌培養が成功しているものでないため自生株が狙われているのだそうです。

サンショウ 実

2013年12月10日 | 自然観察日記
分かっているようで見逃しているものが沢山あります。サンショウの実もそんな中の一つでしょうか。なかなか綺麗な赤い色になり、中から黒い種子が出てきます。「サンショウの実」を料理に使うという話はときどき小耳にはさみますがこの赤い実を乾燥させて使うのでしょうか?春の山菜シーズン、「山荘味噌」というのがあって実を細かくして味噌にあえてあるのは若い実のようですね。実について詳しい方がおられたらお知らせください。

マタタビ 実

2013年12月10日 | 自然観察日記
マタタビの熟した実を見ることが少ないのではないでしょうか。マタタビは完熟するとオレンジがかった黄色になり、柔らかく甘い濃厚な味になります。私はサルナシよりは美味しいとさえ思っています。塩付けにした青い実がびん詰で売られていますが、これはビリッとした刺激味が強いものです。酒の肴に合うとのことですが、私は美味しさは感じません。でも、熟したマタタビはとてもおいしい!晩秋、山で出会うと必ずいただきます。日持ちしないのが難点ですね。

ハナイカダ

2013年12月09日 | 自然観察日記
葉の真ん中にちょこんと花をのせて咲く愛らしいハナイカダです。秋の風情は柔らかい緑色をした葉が林床に展開しているだけでただ時の流れに身を任せているという感じです。雌株であってもすでに実はなく、花もありませんから落葉前の葉だけがある季節です。特に紅葉するわけでもなく、次第に緑色があせて色を残したまま散っていきます。
ハナイカダ、どこにでもありそうですが経験的に県の南部に多い気がします。県北にはほとんど見かけません。昔、子ども達を連れて魚沼の金城山(1369m)をめざした時のこと。持ち合わせの地図には東側からの登山道が記載されていましたが、この時はすでに西側の道(五日町温泉側)が利用されていて、歩き出した道は途中から藪に覆われついには消えてしまっていました。稜線上に道があるとふんで子ども達をけしかけ強行突破。もくろみ通り登山道があって何とか山頂にたどり着きましたがかなりエネルギーを使いました。同じコースを下山。山麓で野営をしたときに、近くにあったハナイカダの新芽をむしってお汁の具材にして食べたことを思い出しました。当時、私が引きづりまわした子ども達にはいろいろなものを食べさせたものです。さぞ迷惑だったことでしょう。その時の子ども達との交流も途絶え今はどうしているか・・。懐かしさが湧いてきました。

ハナイカダ 葉

2013年12月09日 | 自然観察日記
ハナイカダの葉の中央には花があった痕跡が残っています。跡がかなりしっかり発達した形跡ですから、この個体は雌花が結実し黒い実が付いていたのではないでしょうか。

ハイイヌガヤとチャボガヤ

2013年12月08日 | 自然観察日記
ハイイヌガヤとチャボガヤは越後の里山には普通にあって見た目だけではわからないとても紛らわしい存在なのです。たまたま両種が肩を並べて生えているところがあって、個別にみていると理解しにくいものを比較するとすんなりと理解できるもの。葉だけでも簡単に判断できるようになります。

ハイイヌガヤ 葉

2013年12月08日 | 自然観察日記
ハイイヌガヤはイヌガヤ科に分類される常緑の低木です。イヌガヤの多雪地帯に適応した種として考えられています。花がない季節ですから葉だけでの判断になります。光沢はなく比較的柔らかく触っても痛くないのが何よりも重要な特徴になります。

チャボガヤ 葉

2013年12月08日 | 自然観察日記
チャボガヤはイチイ科に分類される常緑の低木。葉はハイイヌガヤによく似ています。しかし、光沢が強く触ると「痛い」と思わず叫んでしまいます。先端が鋭く尖っているのです。カヤの多雪地に適応した種と考えられ雪に押されるために地を這う低木状態。本カヤは高木になります。ハイイヌガヤもチャボガヤも地に伏したような形態になりますが、このように種が異なるのに同じ環境に生育すると形態が似たようになる生活形は相似器官という概念で語られます。

バイカウツギ

2013年12月07日 | 自然観察日記
この種は県内まんべんなくという訳ではないのですが広く分布しているようです。しかし、なかなか出会えない種で八石山で出会えたのは幸運です。一瞬何かわからず頭の中では忙しくページをめくっていましたが、「ウツギ」に似ているというところまででバイカウツギまでたどり着くにはかなりの時間がかかりました。やはり分布に特徴があって阿賀野川沿いではよく見つかるようです。実は阿賀野川と県内の植物分布には大きな因果関係があるケースが見られます。つまり阿賀野川を伝って県内に分布を広げてきているとみられる種が多々あるということなのです。日本一の大河、信濃川ではそれほど顕著な種は私は知りませんが阿賀野川は実に多いのです。興味深い事実ですね。

バイカウツギ 果実

2013年12月07日 | 自然観察日記
バイカウツギの大きな特徴は花弁は4枚ということでしょうか。5枚ではなく4枚。つまり4数性のつくりをしているのです。がく片も4枚で果をつくるがく片が十字になっています。この部分だけで種の特定ができるほどです。ウツギにしてはややや大きな果実を小さな穂状につけます。花は白、葉はやや広い広卵形でウツギとはこれでも区別できそうです。

マツブサ

2013年12月06日 | 自然観察日記
県内の主に山地に点在する雌雄異株の蔓性の種です。分布を見ると県北や阿賀野川沿いに偏っているように見えます。南部は糸魚川近辺には多く報告されていますが概して空白域が目立ちます。そういう点では八石山の分布確認は空白域を埋めるものになります。
それはそうと中越地域では珍しい種ですからちょっと感激です。実もしっかりできています。かなり大きな株のようで周りの高木に巻き付いて生育していました。私は中越地域ではこの他に鋸山の山頂でも確認しています。信濃川を挟んで東西の同じような海抜の稜線上にあることになります。偶然かもしれませんが谷沿いに根付くより尾根上に適応しているのかもしれません。

マツブサ 実

2013年12月06日 | 自然観察日記
まるでブドウの房のような実です。あいにく食べてもおいしくありません。同じ科のサネカズラのように赤い色をしていればきっともっと注目され栽培されるようになっていたでしょうが、この地味な色合いでは目立ちません。おかげでひっそりと自然のままに生きてきたのではないでしょうか。たまには鳥などがついばみ種子を運んだために点々分布するようになっている・・・と考えています。

コマユミ

2013年12月05日 | 自然観察日記
八石山登山道の尾根道上にコマユミとマユミが仲良く並んで生育していました。ちょうどいい教材と考え同行した方々に両種の観察をしてもらいました。ニシキギ科でニシキギとほとんど同じ種ですが茎にコルク質の翼がありません。全国的な分布は承知していませんが、新潟など日本海側に分布しているような気がします。少なくとも県内で見るものは自生はすべてコマユミでニシキギは庭や庭園が多いようです。ニシキギ同様秋の紅葉が美しくかつ赤い実もなかなか可愛いものです。

マユミ

2013年12月05日 | 自然観察日記
マユミはかなり大きな樹になりますが、どちらかというと横広がりの圧縮された樹形が多く幹の太さの割には樹高はありません。亜高木の範囲でしょうか。花は小さな緑色をしたもので目立ちませんが、果実は淡紅色で熟すとこれが割れ中から赤い種子が垂れ下がります。雌雄異株ですから赤い実が鈴なりになる樹がある一方で全く実を付けない樹があるので、その対比も面白いところ。尾根上にあった樹は比較的小さな樹で実もあまりついていませんでした。あまり尾根などでは見かけない種でどちらかというと湿気のおおい平坦地に大木を見ますから、湿原が乾燥化して陽樹林に移行する過程で優先になる種だろうと考えています。