MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『遠き落日』

2014-10-10 00:31:45 | goo映画レビュー

原題:『遠き落日』
監督:神山征二郎
脚本:新藤兼人
撮影:飯村雅彦
出演:三田佳子/三上博史/仲代達矢/河原崎長一郎/牧瀬里穂/田村高廣/篠田三郎
1992年/日本

描かれない借金の返済方法について

 野口英世は友人の八子弥四郎から当時としては高額の千円の借金をしており、それも研究費としてならまだしも酒代や女郎買いなどの浪費であったために、弥四郎はともかく、それが原因で没落してしまった八子家からはよく思われていなかったために、帰国してお礼のために父親の八子留太郎に贈った金時計を一度は母親の八子民に捨てられてしまう。しかし英世の浪費癖は彼の父親の野口佐代助から受け継いだもののようで、それに関して驚くべき描写があった。

 野口シカが賭博場まで夫を迎えに行くと、佐代助は博打に負けて15両の借金を作ってしまい、逃げられないように柱に縛り付けられていた(写真左)。ところがカットが切り替わると、まるで何事もなかったかのように2人は一緒に家に帰ってくるのである(写真右)。しかし何事もなく15両もの借金が帳消しになるはずはなく、シカが体を売ったはずであるのだが、これがピンとこない理由はシカを演じた三田佳子が当時既に50歳を超えていたためであろう。清作(のちの英世)が小学校に入学する前の話だから、この時シカは20代後半である。このことが史実かどうかはともかく、脚本を担った新藤兼人の女性観が反映されているように思う。


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