原題:『MILLION DOLLAR ARM』
監督:クレイグ・ギレスピー
脚本:トーマス・マッカーシー
撮影:ギュラ・パドス
出演:ジョン・ハム/レイク・ベル/スラージ・シャルマ/マドゥル・ミッタル/ピトバッシュ
2014年/アメリカ
無理やり話を感動的にする歪について
『ミリオンダラー・アーム』というリアリティ・ショー番組を企画した2人のうち、J・B・バーンスタインは独身であるが、パートナーのアッシュ・ヴァスデヴァンには幼い子供が3人いる。ゲロの話をしようと思っているのであるが、最初にアッシュの幼い娘が嘔吐するシーンが映され、その後、パーティーに誘われたバーンスタインがインドでスカウトしてきたリンク・シンとディネシュ・パテルと、アシスタントとしてついてきたアミトと一緒に気晴らしで参加したのであるが、飲み過ぎてディネシュとアミトが帰りの車の中で嘔吐してしまうのである。しかしこの悲惨な状況はアッシュの幼い娘による伏線によってその後、4人が家族同様に親密になる暗喩として機能するのである。
しかし本作の最も奇妙な点は本来であるならば主役になるはずの2人のインド出身のメジャーリーガーが脇役で、『ミリオンダラー・アーム』というスカウト番組の企画者でしかないバーンスタインが主役になっていることである。最後で分かることなのであるが、リンク・シンとディネシュ・パテルは実際にピッツバーグ・パイレーツとメジャー契約までこぎつけたのであるが、実質の活動はガルフ・コーストリーグというマイナーリーグで2009年と2010年に少しだけ登板しただけで、リンクはその後、オーストラリアで活躍した後に、2014年にはトミー・ジョン手術を受けており、ディネシュにいたっては引退して帰国している。これでは感動話にならないので、主役はバーンスタインなのである。
バーンスタインが『ミリオンダラー・アーム』を思いついたきっかけとして、『ブリテンズ・ゴット・タレント』に出演しているスーザン・ボイルを観たことになっているが、スーザン・ボイルが『ブリテンズ・ゴット・タレント』に出演したのは2009年4月で、『ミリオンダラー・アーム』は2008年に開催されている。
このようにインド出身で最初にメジャー契約をした2人の話を無理やり感動的な話にしようとした感は否めないのである。