原題:『柘榴坂の仇討』
監督:若松節朗
脚本:高松宏伸/飯田健三郎/長谷川康夫
撮影:喜久村徳章
出演:中井貴一/阿部寛/広末涼子/高嶋政宏/真飛聖/吉田栄作/中村吉右衛門
2014年/日本
桜田門外の変の最大の謎について
安政7年3月3日、事前に暗殺の警告があったにも関わらず、大老の井伊直弼に大抜擢されて護衛を仰せつかった彦根藩士の志村金吾が出発前に、自身の日本刀に袋を被せて紐で縛って抜けないようにするシーンがあるのだが、先頭に立ち、雪が降る中で真っ先に敵を討たなければならない立場に置かれている金吾が刀を抜けないように紐で縛ってしまうという行為が理解できない。もちろん井伊直弼自身が護衛の強化を敢えてしなかったという判断は構わないとしても、警護が油断してはならないはずで、ましてや初めての警護なのだからいつでも刀を抜けるようにしておくはずなのである。これは史実についての議論ではなく、フィクションに関してであり、だから説得力の無い志村金吾の行動に疑問を持たざるを得ない。
本作を観る私の視点は完全にズレているのであるが、桜田門外の変の最大の謎が上手く解釈できていないために、その後のストーリーが予定調和の平凡なものなってしまっているように思うのである。