原題:『Reprisal』
監督:ブライアン・A・ミラー
脚本:ブライス・ハモンス
撮影:ディーン・カンディ
出演:フランク・グリロ/ブルース・ウィリス/オリビア・カルポ/ジョナサン・シェック
2018年/アメリカ
「石原裕次郎化」したジョン・マクレーンについて
噂に違わぬ酷い出来の作品だった。例えば、主人公のジェイコブが勤めている銀行に単独で強盗に押し入ったガブリエルは妨害電波発生装置で携帯電話を使用不能にし、顔もバレずに声も出すことなく完全犯罪を成し遂げるのであるが、その次に起こした現金輸送車の襲撃があまりにもお粗末で、同一犯が起こしたように見えないのである。
偶然、ガブリエルの居場所を突き止めて、ガブリエルの犯行現場を目撃したジェイコブが現金輸送車に乗って現金を運んでいた女性を救助した後、入院中のその女性の元に忍び込んだガブリエルが女性にジェイコブに電話をさせておびき寄せるのであるが、あの慌ただしさの中でどのような話の流れからジェイコブが女性に電話番号を教えられたのかが気になって仕方がない。
ようするにメチャクチャなのであるが、原題の「仕返し(reprisal)」という言葉の意味を勘案するならば、ガブリエルの父親はかつて兵士としてアメリカのために戦ったものの、認知症を患ってからは政府に手厚くもてなされることのない不満からガブリエルがアメリカ社会に「報復」を試みたと読めなくもないのだが、自分の勤め先を襲われ、さらに糖尿病を患った娘を妻と共に誘拐されたことに対するジェイコブのガブリエルに対する復讐にしか見えない。半年後のラストでジェイコブが警察官として採用されているところを見ると、ガブリエルに関する話は重要視されていないと感じる。
それでも本作が日本で劇場公開された理由はブルース・ウィリスが出演しているためであろうが、ウィリスはかつての『ダイ・ハード』のように動き回ることはなく、むしろテレビドラマ『太陽にほえろ!』の石原裕次郎の立場に甘んじている。