原題:『マスカレード・ホテル』
監督:鈴木雅之
脚本:岡田道尚
撮影:江原祥二
出演:木村拓哉/長澤まさみ/小日向文世/濱田岳/前田敦子/石橋凌/渡部篤郎/松たか子
2019年/日本
「形式」を織り成す独特のモンタージュについて
本来ならば原作者が東野圭吾である以上、ミステリーを楽しむべき作品ではあるのだろうが、個人的には鈴木雅之監督の演出に期待して観に行ったのだが、前作の『本能寺ホテル』(2017年)では影をひそめてしまっていた独特のモンタージュが『プリンセス トヨトミ』(2011年)の頃の全盛期まで戻って来たようなうねりを感じた。
それはもちろんホテルという建物の「形式」を最大限に利用した画面の構図作り、さらに主人公でホテル・コルテシア東京のフロントクラークである山岸尚美が捜査一課の警部補で潜入捜査を試みる新田浩介にフロントスタッフの「形式」を強いるのみならず、チェックする部屋の机の上に置かれているホテルオリジナルのペーパーウェイト(文鎮)のロゴの向きも正確に定位置を細かく直すところや、エレベーターの階数を示すパネルの数字までブレずに映され、それ故にペーパーウェイトのわずかなズレが不穏な空気を作り出し、ストーリーのクライマックスに重大な影響をもたらすのである。これ以上本作に何を求めるというのか?