MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『悪の偶像』

2020-07-09 00:36:00 | goo映画レビュー

原題:『우상』 英題:『Idol』
監督:イ・スジン
脚本:イ・スジン
撮影:サン・ウォンホウ
出演:ハン・ソッキュ/ソル・ギョング/チョン・ウヒ/ユ・スンモク/チョ・ビョンギュ
2019年/韓国

顔面崩壊した「アイドル」の存在意義について

 よくよく考えるならば意味の分からないシーンも散見される。例えば、詳細は避けるが、足の指に注射を打った意図がよく分からないし、入院しているリョナの部屋のドアを激しく叩いたのは誰だったのかネタバレしないままなのである。
 ストーリーも動機など詳しく明かされないままなのであるが、それでも本作は素晴らしいと思う。個人的には『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ監督 2019年)よりも良いと思う。
 冒頭に男のモノローグが流れるのであるが、当然その内容はその直後に映った男が語っていると思わせることで既に観客をミスリードしており、2人のメインキャラクターも似させるなどして意外な展開を見せるのである。
 主人公で市議会議員のク・ミョンフェは知事選に出馬しようとしていた矢先に息子のヨハンが交通事故を起こして相手を死なせてしまう。被害者は小さな工具店を営むユ・ジュンシクの息子のブナンで、新婚旅行中の事故だったのだが、妻のリョナは行方不明のままで、ミョンフェとジュンシクによるリョナ探しが始まる。
 韓国の政界に関しては寡聞にして知らないのだが、政治家として自分のイメージに不利になる出来事を次々と反転させていくク・ミョンフェが最後に「崩壊した顔」でぶちまける演説に聴衆が拍手喝采を送るところなど「アイドル」の戯画として強烈な皮肉が効いていると思う。


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