原題:『Les Saveurs Du Palais』
監督:クリスチャン・ヴァンサン
脚本:クリスチャン・ヴァンサン/エチエンヌ・コマール
撮影:ローラン・ダイアン
出演:カトリーヌ・フロ/ジャン・ドルメッソン/イポリット・ジラルド
2012年/フランス
大統領の「描写」について
決して出来が良いとは言えないが、本作に関して言及しておきたい。
主人公のオルタンス・ラボリはかつてフランス大統領の専属料理人として働いていたのだが、なかなか大統領本人と料理に関して話し合う機会も持てず、大統領の健康への配慮や経費の使い方などで自分が思う理想の料理を提供することが困難になった末にオルタンスは2年間務めた専属料理人を辞めてしまい、今は南極のフランス観測基地の料理人をしている。
ところで結局本作が何を言いたいのか勘案するならば、理想の料理を楽しんで食してもらえるならばどこへでも行って働けて自由を謳歌できるオルタンスと比較するならば、大統領という職業は極めて不自由だということではないだろうか。オルタンスが自分の過去を語らない理由も、大統領の日常がよく分からないこととリンクさせており、つまり大統領はオルタンスの「陰画」として描かれているのである。