MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『逃走の道』

2022-06-07 00:59:32 | goo映画レビュー

原題:『逃走の道』
監督:渋江修平
脚本:渋江修平
出演:村杉蝉乃介/コウメ太夫/大塚ヒロタ/影山徹/竹井亮介/橋本美和/AMI
2022年/日本

「人形」と「人間」の間で葛藤する強盗犯について

 星新一のショートショートをテレビドラマ化を『星新一の不思議な不思議な短編ドラマ』として現在NHK-BSプレミアムで放送されているのだが、5月に放送された『逃走の道』は出色の出来栄えだったと思う。
 宝石店を襲撃した後に逃走してきた二人の男(村杉蝉乃介とコウメ太夫)が夜中に丁度走り出そうとしている列車に飛び乗る。とりあえず身を隠したトイレの中でコウメの方が「前からケーキ屋さんになるのが夢」だったが「刑期の方が長くなって20年」とダジャレを飛ばし、村杉も自分がなりたいものを語ったのだが騒音で聞き取れない。
 トイレから出て車内の後方に座っていたのだが、いつもと様子が違うことに気が付いた二人は、車内には人形しかいないことが分かった。
 そして見ている私たちもおかしな演出に気がつく。ショパンの「別れの曲」が鳴り出すと、何故か村杉は動きを止めてしまうのである。しかし何かを思い出しているわけでもなく、「別れの曲」はコウメには聞こえていないようなのである。
 ここで村杉が何になりたいのか想像してみるならば、村杉は列車内で「囚われて」いるような「人形」ではなく真っ当な「人間」になりたかったのである。車内で村杉は「人形」と「人間」の間をさまよっていたのである。これは星新一の原作には書かれていないオリジナルで秀逸な演出だと思うのである。


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