MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『関心領域』

2024-06-08 00:58:57 | goo映画レビュー

原題:『The Zone of Interest』
監督:ジョナサン・グレイザー
脚本:ジョナサン・グレイザー
撮影:ウカシュ・ジャル
出演:クリスティアン・フリーデル/ザンドラ・ヒュラー/ラルフ・ハーフォース/ダニエル・ホルツバーグ/サッシャ・マーズ
2023年/イギリス・ポーランド・アメリカ

「退屈」と正反対の感情について

 時代は1943年、主人公はアウシュビッツ強制収容所の所長であるルドルフ・ヘスと妻のヘートヴィヒである。二人には五人の子供がいて使用人たちと共に仲良く暮らしており、夫が昇進してオラニエンブルクに転勤することになってもヘートヴィヒはベルリンに留まりたいがためにルドルフは単身赴任になってしまうのであるが、間もなくして重要な使命を与えられてアウシュビッツに戻ることになるのである。つまりヘス一家はアウシュビッツの隣で、壁一枚の場所で楽しく暮らしているのである。
 上映が始まってからかなり長い間画面が暗いままなのであるが、これは映像以上に音が重要なファクターだという暗示であろうが、この家族の日常の観賞は決して楽しくはなく、むしろ退屈と言っても過言ではないであろう。しかし観客は既にこの家族はアウシュビッツ強制収容所のすぐ隣に住んでいることを知っている以上、強制収容所では私たち観客が本作を観て感じている「退屈」とは正反対のことが起こっていることは感じざるを得ないのであるが、私たちはこの感情を言い表す言葉を持ち合わせていない。
 ラストにおいては、ヘスが勤めている収容所の中には現代のアウシュヴィッツ・ビルケナウ博物館が存在し、山積みになった靴や衣服が展示されている場所で清掃員たちが働いており、あくまでも監督は実際に何が起こっていたか詳細は分からないというスタンスであり、それは1985年に公開されたドキュメンタリー作品『Shoah ショア』のクロード・ランズマン監督と同じであろう。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/otonamuse/trend/otonamuse-otonamuse-jp-guid-57678


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