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MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

「Les Yper Sound」 Stereolab 和訳

2019-05-26 12:55:44 | 洋楽歌詞和訳

Stereolab - Les Yper Sound (Live on Jools Holland)

 ステレオラブの「レズ・イーペル・サウンド」はイーペル(あるいはイープル)という

ベルギーの地名で、第一次世界大戦において激戦地となりドイツ軍が人類史上初めて毒ガス

を使用した場所として知られている。以下、和訳。

「Les Yper Sound」 Stereolab 日本語訳

あなたはあっちのチームへ
私はこっちのチームへ行く
全ては分けられ
旗か番号によって人々は相まみえる
理由はあるはずだ
烙印を押すことで私たちは戦うことができるんだ
全ては分けられる
ただ全てをならすための正当化
今は何も考えずにあなたは戦うのよ
あなたはこっちのチームへ
私はあっちのチームへ行く
全ては分けられる
旗か番号によって

全ては分けられる
ただ全てをならすための正当化
今は何も考えずにあなたは戦うのよ

人々は相まみえる
理由はあるはずだ
烙印を押すことで私たちは戦うことができるんだ

あなたはあっちのチームへ
私はこっちのチームへ行く
全ては分けられる
旗か番号によって


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「Wow and Flutter」 Stereolab 和訳

2019-05-26 00:31:06 | 洋楽歌詞和訳

Stereolab - Wow and Flutter (Official Video)

 ステレオラブは「再生時に生じる音のむらやひずみ(Wow and Flutter)」に限らず、

歌詞は意外と政治色が強いように思う。以下、和訳。

「Wow and Flutter」Stereolab 日本語訳

私は疑わなかったし、知らなかった
私が知る限りでは人生は終わりがない
私が自身を解放しなければならないと理解した時には
残りの人生に関しては私たちはただ死ぬだけなんだ

それは永遠ではないし不滅でもない
でも物事は進行している
それは永遠ではないし無限でもない
進歩こそが手掛かりとなる

IBMが世界と共に生まれてきたように私は思った
アメリカの旗が永遠にはためくようだった
その冷たい競争相手は貯めこんでいたから
資本が後から追随してくるはずなんだ

それは永遠ではないし不滅でもない
そのように進むだろう
それは永遠ではないし無限でもない
恐竜が生きていた頃からの習わしだ

それは永遠ではないし不滅でもない
そのように進むだろう
それは永遠ではないし無限でもない
恐竜が生きていた頃からの習わしだ

表象を見てみろ
それらは活気づいている
それらは動き、進化し、そして死に絶える
それらは動き、進化し、そして死に絶えるんだ


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「CYBELE'S REVERIE」 Stereolab 和訳

2019-05-25 12:56:17 | フレンチポップ

Stereolab – Cybele's Reverie (Official Video)

 ステレオラブの「キベレーの幻想」を和訳してみる。因みに「キュベレ(Cybele)」とは

フリギア(Phrygia)の大地の女神で、別名「the Great Mother of the God」と呼ばれ

穀物の実りと多産を象徴する(歌詞はオリジナルのものを和訳している)。

「Cybele's Reverie」 Stereolab 日本語訳

断続的な官能的マチエール
官能的なマチエールはなかなか続かない
幼年期はとても共感できる
幼年期は魔法をもたらすから

つまりそれは全てを読んで飲んで食べていた時期
ばらばらで細かくなったもの全てを
みんなが世間に言い触らして
街や田舎で泣いたり笑ったりしていた時期

幼年期はとてもリアルで
高い柱廊がある庭

つまりそれは全てを読んで飲んで食べた時期
ばらばらで細かくなったもの全てを
人々が世間に言い触らして
街や田舎で笑ったり泣いたりした時期

石や樹木や壁が物語る
石や樹木や壁が物語る
(家、それは昔の家
家、それは未来の家)
石や樹木や壁が物語る
(家、それは昔の家
家、それは未来の家)
石や樹木や壁が物語る
(家、それは昔の家
家、それは未来の家)
石や樹木や壁が物語る
(静寂が私を包み込むよう)
石や樹木や壁が物語る
(静寂が私を包み込むよう)
石や樹木や壁が物語る
(静寂が私を包み込むよう)

Stereolab - Cybele's Reverie (Live on Later With Jools Holland)

Stereolab - Cybele's Reverie (Live at the Hollywood Bowl)


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感情的天皇論

2019-05-25 00:53:23 | Weblog

文芸評論家の加藤典洋さん死去 「敗戦後論」で論争巻き起こす
加藤典洋氏死去=文芸評論家、早稲田大名誉教授
文芸評論家の加藤典洋さんが死去 71歳

 大塚英志の『感情天皇論』(ちくま新書 2019.4.10.)は理解しにくいものだった。大塚は本書の手法として以下のように書いている。

「その手法としては、まず時代として、明仁天皇夫妻が結婚した一九五九年前後と退位を控えた二〇一八年前後を扱う。彼らの始まりと終わりを重点的に考えようと思う。その間を『平成天皇の時代』として考えてみる。なぜ、一九五九年に『始まる』のかは本書の中で明らかになるだろうが、彼らの結婚とともに昭和天皇の退位が語られた事実も大きい。無論、それは大きな声にならなかったが、そういう声とともに彼らは『始まった』のである。
 そして分析の対象として用いるのは、もっぱら文学者によって書かれたテキスト、あるいは映画などが描き出した表現である。天皇家の人々のことばは原則としてこの序章以外では引用しない。論じる作品の中には天皇を扱ったものもあるし、そうではないものも含まれるが、それらの作品は、最終的には『私たち』の問題にブーメランのように跳ね返ってくるからである。そうでなくては、なんの意味もない。
 つまり本書は文学や映画を通じて天皇をめぐる時代精神を抽出していくオールドスクールな『批評』という方法を選択する。」(p.48-p.49)

 手法がどうであろうとそれが「批評」であるならばかまわないと思うのだが、「天皇論」と謳われているにも関わらず、第一章は1959年の皇太子夫妻の成婚パレードで夫妻が乗る馬車に駆け寄った「投石少年」の話、具体的に言うならば投石少年と皇太子妃の話なのである。例えば、何故「投石少年」は山口二矢のように名前を公表されないのか三島由紀夫や石原慎太郎(第二章では大江健三郎)のテキストを使って論じられているのだが、実害が無く、名前を出したら少年に危害が及ぶからという配慮が働いただけであろうし、さらに何故皇太子ではなく皇太子妃を論議の俎上に乗せているのか、「天皇論」としては論点がズレている。彼らが正田美智子に関心を示したのは、ただたんに若かった彼らが「俗情と結託」しただけだと思う。

 驚くべきなのは結論である。大塚は「感情天皇制」を終わらせるためには天皇家の「バチカン化」が必要だというのである。大塚はまんがの原作者でもあるらしいから、まんがとしてなら面白いと思うが、本書をどうにか読了したとしても天皇家の「バチカン化」は荒唐無稽としか言いようがない。
 仮に天皇家の「バチカン化」を目指すとするならば、例えば、金日成主席を崇拝する北朝鮮国民くらいに、むしろ日本国民は天皇に対して過度の感情を持つ必要があるだろうが、その前にバチカンをナメていると思う。大塚は加藤典洋に対して「批評家の劣化とはこういうことか、と自戒だけはしよう。(p.227)」と書いている。確かに加藤も酷かったが、ページを多く割いて書いている割には結論がぶっ壊れているという点で大塚も加藤同様に十分に劣化しているのではないだろうか? 何故誰も大塚を批判しないのか不思議なのだが、黙殺ということならば納得はできる。


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日本のアイヒマン

2019-05-24 12:34:34 | Weblog

 『安倍三代』(青木理著 朝日文庫 2019.4.30.)はとても興味深い本だった。印象的な発言を引用してみる。

「(もともと深遠で強固な政治思想があるわけではない安倍晋三の)基底にあるものが『天のはかり』や『天命』『使命』なるものだとするならば、夫の晋三は懸命にその役割を演じている面もあるのではないか - そう重ねて尋ねた時に返ってきた答えは、相当に真実を射貫いているのではないかと感じられた。昭恵の答えはこうだった。
『主人は、政治家にならなければ、映画監督になりたかったという人なんです。映像の中の主人公をイメージして、自分だったらこうするっていうのを、いつも考えているんです。だから私は、主人は安倍晋三という日本国の総理大臣を、ある意味では演じているところがあるのかなと思っています。』
 だとするならば晋三はやはり、こうすれば祖父・岸信介や周辺の゛狼゛たちに喜ばれる、こうすれば与えられた『運命』を見事に演じきれる - そう考えている程度の核しか持たない空疎な゛子犬゛なのではないか。ひょっとすると本人は核らしきものを持っていると思い込んでいるかもしれないが、そんなものは所詮後づけの皮相な代物であり、地と知にきっちりと根ざしたものではない - 青年期までの晋三を徹底取材した私はそう確信するに至った。」(p.286-p.287)

 「可もなく不可もなく、どこまでも凡庸でなんの変哲もないおぼっちゃま(p.225)」という安倍晋三に付された形容は、否でも応でもアドルフ・アイヒマン(Adolf Eichmann)を想起させる。確固とした思想ではなく、生き残るためだけに手段を選ばず行動することで、同様にただ生き残りたい人たちが同調して群がっていくのである。これは適菜収も『もう、きみには頼まない 安倍晋三への退場勧告』(KKベストセラーズ 2018.11.10.)において指摘している(p.65)。
 誤解のないように繰り返すが、安倍首相はアイヒマンであり、決してヒトラーではない。「日本のヒトラー」は日本人ではなく、今はトランプ大統領であるが、要するに「アメリカ」なのである。


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『バイス』

2019-05-24 00:56:03 | goo映画レビュー

原題:『Vice』
監督:アダム・マッケイ
脚本:アダム・マッケイ
撮影:グリーグ・フレイザー
出演:クリスチャン・ベール/エイミー・アダムス/スティーヴ・カレル/サム・ロックウェル
2018年/アメリカ

究極の忖度ができる副大統領について

 まずは本作に関する批評を引用してみる。

「オリバー・ストーンの『ブッシュ』、マイケル・ムーアの『華氏911』を代表として、同時多発テロ事件とイラク介入は数多くの映画に描かれてきました。ただ、ブッシュは悪役というよりは愚かな政治家という印象が強いので、大統領のブッシュではなく副大統領のチェイニーに注目するのはよい切り口ですね。問題は、その悪の描き方にあります。
 ローレンス・オリビエがシェークスピア劇を映画に仕上げた『リチャード三世』では、主人公が悪ければ悪いほど見ていてワクワクしてしまう。逆にストーンの『ニクソン』の場合は、孤独な姿に哀れを催してしまう。でもこの『バイス』のチェイニーは、ただ悪いだけの人なので、ちょっと平板な印象を与えます。
 俳優の責任じゃありません。チェイニー役のクリスチャン・ベールは役づくりのためにぶくぶく太って、目的のために手段を選ばないリアリストでありながら家族への愛情は強い多面的な性格を伝えています。チェイニーの妻、いわばマクベスに対するマクベス夫人を演じるエイミー・アダムスも発声と姿勢によって芯の強いキャラクターを演じて見事。だから役者は揃ってるんですが、脚本が問題です。かつてアダム・マッケイ監督が関わったアメリカのコメディ番組『サタデー・ナイト・ライブ』のようなコントをちりばめるという方法が、一人の人間を描くという伝記の表現とうまくなじまない。できあがったのは、正統スタイルの伝記映画にバラエティー番組のくすぐりとマイケル・ムーアのような政治アピールが混ざったような映画です。
 ううん、惜しい。せっかくの悪役なんですから、戦争犯罪を指弾する政治アピールなんて横に置いて、リチャード三世のように喜々として悪に勤しむチェイニーを見たいところでした。」(2019年4月7日付毎日新聞「藤原帰一の映画愛」)

 チェイニーが「喜々として悪に勤し」んでいるのかどうかは微妙なところで、個人的にはディック・チェイニーがアドルフ・アイヒマン(Adolf Otto Eichmann)のように見えた。つまり大学生時代には飲酒運転などで逮捕されたりするなどぶらぶらしていたが、役割を得るとその役割を忠実にこなしていく才能である。それはチェイニーの次女のメアリー・チェイニーにも受け継がれ、同性愛者であるにも関わらず父親と同じ共和党に所属し、同性婚を認めないブッシュ大統領を支持したことにも表れているのである。
 本作の「語り手」はチェイニーの親戚らしく、彼が交通事故に遭ってチェイニーが心臓の移植手術をするのは2012年の出来事らしい(ドナーはフィクションである)が、取り出された彼の心臓のアップがその「強さ」を暗示している。
 2006年にチェイニーが誤って猟銃で友人の弁護士を撃ってしまったのであるが、謝罪したのがチェイニーではなくその弁護士だった実際の映像を見た時、アメリカにも忖度があるのだと納得した次第である。


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『アメリカン・アニマルズ』

2019-05-23 12:22:11 | goo映画レビュー

原題:『American Animals』
監督:バート・レイトン
脚本:バート・レイトン
撮影:オーレ・ブラット・バークランド
出演:エヴァン・ピーターズ/バリー・コーガン/ブレイク・ジェンナー/ジャレッド・アブラハムソン
2018年/アメリカ・イギリス

「視覚」の甘さについて

 最初に冒頭で引用されるチャールズ・ダーウィンの『種の起源(On the Origin of Species)』の当該箇所を書き出して和訳してみる。

「私の見解では、ヨーロピアン・アニマルズがヨーロッパの洞窟に移住したように、外の世界の次世代の者たちよってじわじわと移住してきたアメリカン・アニマルズはいつもの想像力を駆使しながらケンタッキーの洞窟のさらなる奥へ移住したと考えざるを得ない。(On my view we must suppose that American animals, having ordinary powers of vision, slowly migrated by successive generations from the outer world into the deeper and deeper recesses of the Kentucky caves, as did European animals into the caves of Europe.)」

 本作は2004年にケンタッキー州のトランシルヴァニア大学の図書館で起きた時価1200万ドルを超えるジョン・ジェームズ・オーデュボンの画集『アメリカの鳥類』の窃盗事件を当事者のインタビューを挟みながら再現されたものである。
 引用された文章で重要な箇所は「いつもの想像力(ordinary powers of vision)」という部分だと思うが、「Vision」は「視覚」と捉えた方が分かりやすいであろう。つまり盗みを働いた4人は、つまらないありきたりの日常を変えるために高価な画集に目をつけ、『レザボア・ドッグス(Reservoir Dogs)』(クエンティン・タランティーノ監督 1992年)のような犯罪映画を参考に計画を立てるのであるが、当然のことながら映画を観る上で「視覚」は重要になる(因みにケンタッキーの洞窟とはプラトンの『国家』の「洞窟の比喩(Allegory of the Cave)」を暗示していると思うが、繁雑になるので詳細は省く)。
 4人は老人に扮してまで窃盗を実行しようとするのだが、いざとなったら計画の詰めの甘さが晒されるのである。例えば、最初の実行日には図書館の秘書が4人もいたために敢えなく諦めて翌日にしたり、いざ実行してみると秘書を気絶させるために使うつもりだったスタンガンの威力が弱く、秘書を黙らせることができず、肝心の画集の『アメリカの鳥類』は重すぎて盗み損なってしまい、その後のクリスティーズのオークションハウスでも自分の携帯電話の番号を教えてしまいあっけなく逮捕されてしまうのである。
 つまり4人の「視覚」の甘さが露呈するのであるが、ラストにおいて4人の一人であるスペンサー・ラインハードは地元で鳥の絵画を専門とする画家として暮らしているのであるが、それはオーデュボンが描く鳥とは大きくかけ離れたクオリティーで、ここでも「視覚」の甘さが描かれているのであり、つまり下のポスターのイメージの対比のようなものである。


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『ダンボ』(2019)

2019-05-23 00:59:31 | goo映画レビュー

原題:『Dumbo』
監督:ティム・バートン
脚本:アーレン・クルーガー
撮影:ベン・デイヴィス
出演:コリン・ファレル/マイケル・キートン/ダニー・デヴィート/エヴァ・グリーン
2019年/アメリカ

真実味をもたらす「過渡期」について

 ティム・バートン監督の作品を全て観ているわけではないのだが、バートン監督の作風として何でも「デフォルメ」しがちという印象がある。ところが本作は元々ファンタジーのアニメーションということもあって逆に、ダンボたちのCGの造形のみならずリアルを追求しているところが功を奏したのではないだろうか。
 時代背景は第一次世界大戦終了後の1919年で、戦場から戻って来たホルト・ファリアは左腕を失っている描写もリアルで、さらにそれまで移動しながら上演していた「メディチ・ブラザーズ・サーカス」が所定の場所でV・A・ヴァンデヴァーが経営する「ドリームランド」に合併されるというエンターテインメントの進化や、ラストでは1903年と1911年の二度ノーベル賞を受賞しているマリ・キュリーに憧れて発明家になることを目指していたホルトの娘のミリーがダンボのイメージを使って映写機を操っている。
 既に分かっている通りに、その後人類は再び戦争を始めるし、会社の合併は従業員たちの混乱を生じさせ、女性の地位が向上するわけでもなく、ホルトの義手も含めて必ずしも上手くいってはいないのだが、その「過渡期」が却ってリアルさを増し「ファンタジー」に真実味をもたらしていると思うのである。


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『ハロウィン』(2018)

2019-05-22 18:21:44 | goo映画レビュー

原題:『Halloween』
監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン
脚本:デヴィッド・ゴードン・グリーン/ダニー・マクブライド
撮影:マイケル・シモンズ
出演:ジェイミー・リー・カーティス/ジュディ・グリア/ウィル・パットン/ニック・キャッスル
2018年/アメリカ

時代を反映し続けるホラー作品について

 1978年に制作された第一作『ハロウィン』(ジョン・カーペンター監督)から40年後が描かれているのだが、なかなかよく出来ているのではないだろうか。
 精神病棟に閉じ込められていた殺人鬼のマイケル・マイヤーズが復讐のために脱出して妹のローリー・ストロードに会いに来る。マイケルの性格を熟知していたローリーはその日が来ることを確信しており、猟銃を撃つ練習をしているのだが、当時は一緒に練習をしていたカレンは既に40年前の出来事ということもあって孫のアリソンと共にローリーとは距離を置いて生活している。
 マイケルに襲われても安全な場所をローリーは自宅の地下に作っており、マイケルが襲ってきた際には、カレンとアリソンもそこへ避難する。ところがそれはトラップで、実際はマイケルを閉じ込めて焼却する場所だったのである。さらにマイケルが持つナイフが男性器のメタファーであるならば、自分たちの「安全地帯」をマイケルの「場」にすり替え、3人の女性が揃って不死身のマイケルを抹殺するシーンは時代を反映した極めてフェミニスト色の強い作品ではないだろうか。


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『ハンターキラー 潜航せよ』

2019-05-22 00:32:04 | goo映画レビュー

原題:『Hunter Killer』
監督:ドノヴァン・マーシュ
脚本:アーン・シュミット/ジェイミー・モス
撮影:トム・マライス
出演:ジェラルド・バトラー/ゲイリー・オールドマン/コモン/ゼイン・ホルツ/リンダ・カーデリーニ
2018年/アメリカ

ロシアの不気味さを「味わう」作品について

 例えば、ロシアのザカリン大統領の扱いがあまりにも雑だという批判は免れないとしても、冒頭からラストまでどこからミサイルが飛んでくるのかよく分からない演出などはなかなか見逃せないのではないだろうか。
 ジョー・グラス艦長が率いる原子力潜水艦の乗務員たちは上から落ちてくるミサイルに脅える一方で、ザカリン大統領を救出するミッションを得たビル・ビーマンが率いるネイビー・シールズのチームは身を隠していた場所に下からロシアの軍人に槍をつかれ、ポール・マルティネリが負傷するのである。この海における「上」と陸上の「下」の攻撃の対照性は上手い演出として評価してもいいと思う。
 さらにセルゲイ・アンドロポフ艦長と彼の部下との「忠誠心」が試されるクライマックスなどアメリカ人が抱く計り知れないロシアの不気味さが良質のフックになっている。


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