MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『キャッシュ・トラック』

2021-11-08 00:59:14 | goo映画レビュー

原題:『Wrath of Man』
監督:ガイ・リッチー
脚本:ガイ・リッチー/アイバン・アトキンソン/マーン・デイビス
撮影:アラン・スチュワート
出演:ジェイソン・ステイサム/ホルト・マッキャラニー/ジョシュ・ハーネット/ニアム・アルガー
2021年/アメリカ・イギリス

リメイク作品で「癖」が直る映画監督について

 ガイ・リッチー監督の前作『ジェントルメン』(2020年)は監督の趣向が強すぎてカタルシスに欠けた作品だったと個人的には感じたのだが、本作は2004年のフランス映画『護送係(Le Convoyeur)』(ニコラ・ブークリエフ監督)を『男の復讐(Wrath of Man)』というタイトルに変えたリメイクで、前作では「映画の脚本」だったものが本作においては「作戦の計画」に変えたことで手に汗握るサスペンス映画として良質なものに仕上がっているのではないだろうか。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/nikkangeinou/entertainment/f-et-tp0-211009-202110070000308


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『クーリエ:最高機密の運び屋』

2021-11-07 00:59:08 | goo映画レビュー

原題:『The Courier』
監督:ドミニク・クック
脚本:トム・オコナ―
撮影:ショーン・ボビット
出演:ベネディクト・カンバーバッチ/メラーブ・ニニッゼ/レイチェル・ブロズナハン/ジェシー・バックリー
2020年/イギリス・アメリカ

代償が大きすぎるスパイ活動について

 1962年10月に英国人セールスマンのグレヴィル・ウィンとソ連軍参謀本部情報総局の高官のオレグ・ペンコフスキーがKGBに逮捕された背景には「キューバ危機」というアメリカとソ連の対立があり、その事実に基づいた本作はスリリングにストーリーは展開するものの、話に希望を持たせるためなのか、後半になってウィンの妻のシーラがウィンに面会できたり、ウィンとペンコフスキーが面会できてスパイの成果を伝えることができたり、あり得ないことが描写されている。実際に、8年の実刑を受けたウィンは1964年4月に解放されるのだが、その後はうつ病とアルコール依存症で苦しんだ末に1990年に喉頭がんで亡くなっており、スパイの代償はあまりにも大きすぎるのである。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-92383


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『ロン 僕のポンコツ・ボット』

2021-11-06 00:59:21 | goo映画レビュー

原題:『Ron's Gone Wrong』
監督:ジャン=フィリップ・バイン/サラ・スミス
脚本:サラ・スミス/ピーター・ベイナム
撮影:デイビット・ピアーズ/ヘイリー・ホワイト
出演:ザック・ガリフィアナキス/ジャック・ディラン・グレイザー/オリヴィア・コールマン
2021年/イギリス・アメリカ

結局は親の対応が左右する子供に人間関係について

 主人公のロンだけでも例えば『スターウォーズ(Star Wars)』(ジョージ・ルーカス監督 1977年)のR2-D2、『ウォーリー(WALL-E)』(アンドリュー・スタントン監督 2008年)のイヴ(EVE)、『ベイマックス(Big Hero 6)』(ドン・ホール/クリス・ウィリアムズ共同監督 2014年)のベイマックス(Baymax)の要素が取り込まれており、過去のSF作品がふんだんに引用されている。
 ロンの所有者である中学生のバーニー・プドウスキーは幼い頃に母親を亡くし、父親のグラハムは仕事に忙しくバーニーと関係が上手くいっておらず、結果としてバーニーは引っ込み思案な性格で友だちを上手く作れないでいる。
 ロンをはじめとする「Bボット」はバブル社が、子供たちが友達を作れるように開発したロボットで、一人一台所有しているスマホのような人気機器なのだが、ようやくバーニーが手に入れられたロンは壊れておりネットにもつながっておらず、タイトル通りに「ロンは思い通りにいかない」のである。
 その後は壊れているロンにこそ設計者のマークの理想が体現されているといったお決まりのストーリー展開で、悪くはないものの、結末は分かりやすく例えるならばスマホをガラケーに戻すような感じなのだが、現実には無理な話で本作を観てもなかなか友達が作れるようにはならないと思う。


gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-99765


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『モーリタニアン 黒塗りの記録』

2021-11-05 00:59:46 | goo映画レビュー

原題:『The Mauritanian』
監督:ケヴィン・マクドナルド
脚本:M・B・トレイブン/ローリー・ヘインズ/ソフラブ・ノシルバニ
撮影:アルウィン・H・カックラー
出演:ジョディ・フォスター/ベネディクト・カンバ―バッチ/タハール・ラヒム/シャイリーン・ウッドリー
2021年/イギリス・アメリカ

動物で提示される強制収容所における未来について

 本作はアフリカのモーリタニア人のモハメドゥ・オールド・サラヒが2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件の実行者たちをリクルートしたという名目でアメリカ政府に捕らえられ、キューバにあるグアンタナモ基地の収容キャンプに14年間監禁されたという事実を基にした物語だが、「黒塗りの記録」とあるように、それは事実のほんの一部でしかないのかもしれない。だから本作はグアンタナモ湾収容キャンプに収容されている、「Don't Kill the Iguana(イグアナを殺すな)」という看板の下で自殺に追い込まれたマルセイユと、「See you later, alligator」、「After while, crocodile」という挨拶で「ワニ」として生き残るサラヒの二通りの末路をとりあえず示せたということに過ぎないのかもしれない。
 それにしてもラストでモハメドゥ・オールド・サラヒ本人が「自分自身のことのようだ」と言って歌っている曲がボブ・ディランの「ザ・マン・イン・ミー」なのだから、このような極限状態に置かれた人物に勇気を与えるボブ・ディランはやはり偉大なのだと納得せざるを得ない。以下、和訳だが意訳している。

「The Man in Me」 Bob Dylan 日本語訳

俺の中の男はほぼ全ての仕事を引き受けるだろう
その報酬として彼が求めるささやかなものは
俺の中にいる男にたどり着くために
君のような女性を手に入れることなんだ

俺の家のドアはどこも
嵐雲が猛威をふるっている
俺はもう報酬を受け取るべきではないと
自分自身で結論を出す
俺の中の男を見つけ出すために
君のような女性を手に入れるべきではないと

でも君がそばにいることが分かるだけで
この上ない感情に見舞われ
つま先から耳まで
俺の気持ちで震えるんだ

俺の中の男は時々
見られることを避けるために隠れることもあるが
それはただ「機械的」になることが嫌なだけなんだ
俺の中にいる男にたどり着くために
君のような女性を手に入れることが味気なくなるから

Bob Dylan - The Man in Me (Official Audio)
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-101965


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『ハロウィン KILLS』

2021-11-04 19:40:07 | goo映画レビュー

原題:『Halloween Kills』
監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン
脚本:デヴィッド・ゴードン・グリーン/ダニー・マクブライド/ジョン・カーペンター
撮影:マイケル・シモンズ
出演:ジェイミー・リー・カーティス/ジュディ・グリア/アンディ・マティチャック/カイル・リチャーズ
2021年/アメリカ

ホラー映画と抽象概念との相性について

 前作『ハロウィン』(デヴィッド・ゴードン・グリーン監督 2018年)の出来が良かったので、本作もかなり期待して観に行った。本作はさらに時代を遡って『ハロウィン』(ジョン・カーペンター監督 1978年)で描かれた1963年にマイケル・マイヤーズが起こした事件から掘り起こされておりブギ―マンに対する意気込みは十分なのだが、途中から市民の心に宿る恐怖心がマイケル・マイヤーズを生み出したという抽象概念がメインになり、さらに驚くべきことに最後は何度刺しても銃撃してもマイケルは死なないので、まさに「歩く抽象概念」と化してしまい、訳がわからなくなっている。続編が制作されるということなので、この「難問」にけりを付けて欲しいと思う。
 エンディングテーマとして流れたゴーストの「ハンターズ・ムーン」を和訳しておく。

「Hunter's Moon」 The Ghost 日本語訳

長い時が過ぎ去ったが
友よ、俺はおまえのために戻って来た
子供の頃に俺たちが隠れていた場所に
友よ、俺はおまえのために戻って来たんだ

俺の記憶は薄れつつあるが
再び俺を悩ますために戻って来た
今俺の心は多少疲弊しているが
今夜再び一撃を加える時期が来たんだ

あれこそ狩りの合図の月なんだ

墓石の下には姉がいる
友よ、俺はおまえに会いたくて仕方がない
古い墓地を再び訪れて
友よ、俺はおまえに会いたくて仕方がない

俺の記憶は薄れつつあるが
再び俺を悩ますために戻って来た
今俺の心は多少疲弊しているが
今夜再び一撃を加える時期が来たんだ

あれこそ狩りの合図の月なんだ

俺は戻って来た
最後の一度でいいからおまえに会いたくて仕方がないんだ

俺の記憶は薄れつつあるが
再び俺を悩ますために戻って来た
今俺の心は多少疲弊しているが
今夜再び一撃を加える時期が来たんだ

あれこそ狩りの合図の月
あれこそ狩りの合図の月なんだ

Halloween Kills - "Hunter's Moon" (End Credits Version)
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-101754


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『キャンディマン』

2021-11-03 00:58:44 | goo映画レビュー

原題:『Candyman』
監督:ニア・ダコスタ
脚本:ニア・ダコスタ/ウィン・ローゼンフェルド/ジョーダン・ピール
撮影:ジョン・ガレセリアン
出演:ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世/テヨナ・パリス/トニー・トッド/ヴァネッサ・ウィリアムズ
2020年/アメリカ

作品は愛されても作者は愛されない結末について

 キャンディマンの伝説は1977年に実際にキャンディマンに出会ったウィリアム・”ビリー”・バークが主人公で芸術家のアンソニ・マッコイに語る通り前作『キャンディマン』(バーナード・ローズ監督 1992年)でも語られた1800年代の有名な肖像画家が遭遇した事件に端を発する。
 そもそも奴隷の身分の両親から生まれたダニエル・ロビテイルは才能に恵まれ名を馳せたものの、モデルだった白人の娘を身ごもらせて彼女の両親の逆鱗に触れ、利き腕である右腕を切り落とされ、全身に蜜を塗られて蜜蜂に襲われて死に至り亡骸は燃やされるのであるが、その亡霊がキャンディマンとしてガブリニ・グリーンに住む住人たちを襲うようになったという話である。
 2019年の現在、アンソニ・マッコイは画家として作品を描いているのだが、ガールフレンドでアートギャラリーの主任であるブリアナ・カートライトの「コネ」で作品を展示させてもらうものの、中に絵画作品を忍び込ませ外見は普通の鏡で構成された「Say My Name, Candyman Five Times」は女性美術批評家のフィンリー・スティーブンスや知り合いには酷評されてしまう。
 ところが展示会の翌日にアンソニの作品の前で関係者2人の死体が発見され、アンソニは一躍時の人となり、フィンリーも評価を一変させるのである。アンソニはそれで良かったのかもしれないが、アンソニを刺した蜜蜂(ダニエル?)は彼らを赦さないのである。
 しかしアンソニが例えば、5回名前を唱えた女子高生たちも殺してしまうということは物理的にあり得ないが、アンソニのような酷い目に遭っている芸術家は少なからず存在するだろう。つまりキャンディマンとは現実と幻想の間に存在する象徴(匿名)なのである。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-97630


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『THE GUILTY / ギルティ』

2021-11-02 00:54:20 | goo映画レビュー

原題:『The Guilty』
監督:アントワーン・フークア
脚本:ニック・ピゾラット
撮影:マズ・マカーニ
出演:ジェイク・ギレンホール/クリスティナ・ヴィダル/エイドリアン・マルティネス
2021年/アメリカ

「正義感」と「怒り」の曖昧な境界について

 冒頭から主人公のジョー・ベイラーがイラついている理由は、どうやら不祥事を起こして閑職としてロサンゼルス市警察の緊急電話指令員として働かされているからである。だから同僚たちともコミュニケーションが上手く行っておらず、ジョー本人も喘息などの病気でさらに彼の状況を悪化させている。
 そんな時に、ジョーはエミリーという女性から元夫から誘拐されたという通報を受けるのだが、山火事が重なってなかなか警察官を出動させることができずにさらにイライラが増す。
 このジョーの「怒り(anger)」は同時にジョーが起こした「不祥事」にもつながるのだが、彼は19歳のジョセフを必然性もなく、ただ怒りでもって発砲して殺害してしまったのであるが、これは同僚との口合わせで裁判所で何とか正当防衛という形で正当化しようとしている。
 しかしエミリーの事件を解決する過程で自分が誤解していることが分かることで怒りが自身を間違った方向に導いていることに気がつき、ジョーは自分の「不祥事」も認めることを決意し、冒頭で映ったエピグラフ「And the truth shall make you free(そして真実があなたを自由にするはずだ)」が活きてくるのである。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-92950


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『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール : 報復の荒野』

2021-11-01 00:54:45 | goo映画レビュー

原題:『The Harder They Fall』
監督:ジェイムズ・サミュエル
脚本:ジェイムズ・サミュエル/ボアズ・イェ―キン
撮影:ショーン・ボビット/ミハイ・マライメア・Jr
出演:ジョナサン・メジャース/イドリス・エルバ/ザジー・ビーツ/キース・スタンフィールド
2021年/アメリカ

一週間しか劇場公開されない傑作西部劇について

 実話を基にした物語だとかメインキャストが黒人俳優だけという話題が先行しているが、本作で長編デビューとなるジェイムズ・サミュエル監督は驚くべきクオリティの才を見せている。
 例えば、冒頭に登場する二挺の金の拳銃はクライマックスにおいて舞台となるポップな色彩に彩られた街につながり、画面の手前で対峙している2人の男の長い影が画面の上にそれぞれ伸び、煙草に火を点けるために擦られたマッチと同時にダイナマイトのカットに繋げるアプローチも上手いが、音楽の使い方も秀逸で例えば「キャット・ファイト」が始まるのはフェラ・クティがジンジャー・ベイカーと共演した「レッツ・スタート(Let's Start)」のライブヴァージョンがそのまま使われているのである(下の動画のMCを含む冒頭部分)。
 オフビート感を残しつつ、ギリシャ神話を大胆に取り入れたストーリー展開も申し分なく、本作がアカデミー賞作品賞を獲ってもおかしくないと思う。

Fela Kuti - Live With Ginger Baker (LP)
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/crankin/entertainment/crankin-9453510


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