本作はアフリカのモーリタニア人のモハメドゥ・オールド・サラヒが2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件の実行者たちをリクルートしたという名目でアメリカ政府に捕らえられ、キューバにあるグアンタナモ基地の収容キャンプに14年間監禁されたという事実を基にした物語だが、「黒塗りの記録」とあるように、それは事実のほんの一部でしかないのかもしれない。だから本作はグアンタナモ湾収容キャンプに収容されている、「Don't Kill the Iguana(イグアナを殺すな)」という看板の下で自殺に追い込まれたマルセイユと、「See you later, alligator」、「After while, crocodile」という挨拶で「ワニ」として生き残るサラヒの二通りの末路をとりあえず示せたということに過ぎないのかもしれない。 それにしてもラストでモハメドゥ・オールド・サラヒ本人が「自分自身のことのようだ」と言って歌っている曲がボブ・ディランの「ザ・マン・イン・ミー」なのだから、このような極限状態に置かれた人物に勇気を与えるボブ・ディランはやはり偉大なのだと納得せざるを得ない。以下、和訳だが意訳している。
冒頭から主人公のジョー・ベイラーがイラついている理由は、どうやら不祥事を起こして閑職としてロサンゼルス市警察の緊急電話指令員として働かされているからである。だから同僚たちともコミュニケーションが上手く行っておらず、ジョー本人も喘息などの病気でさらに彼の状況を悪化させている。 そんな時に、ジョーはエミリーという女性から元夫から誘拐されたという通報を受けるのだが、山火事が重なってなかなか警察官を出動させることができずにさらにイライラが増す。 このジョーの「怒り(anger)」は同時にジョーが起こした「不祥事」にもつながるのだが、彼は19歳のジョセフを必然性もなく、ただ怒りでもって発砲して殺害してしまったのであるが、これは同僚との口合わせで裁判所で何とか正当防衛という形で正当化しようとしている。 しかしエミリーの事件を解決する過程で自分が誤解していることが分かることで怒りが自身を間違った方向に導いていることに気がつき、ジョーは自分の「不祥事」も認めることを決意し、冒頭で映ったエピグラフ「And the truth shall make you free(そして真実があなたを自由にするはずだ)」が活きてくるのである。 gooニュース https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-92950