寮管理人の呟き

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なにわ野菜 割烹指南 / 上野修三

2007年09月08日 | 書籍

株式会社クリエテ関西、2007年2月28日発行、定価6500円+税

上野修三さんは私の尊敬する料理人の一人である。大阪料理の豪快さと細やかさを知ったのはdancyuの特集記事であった。大きな寒ビラメを一匹丸々使って様々な料理を作るというものであった。

内臓と野菜の味噌煮、鱗と皮のから揚げ、造りの納豆醤油和えなど、見たこともないような料理に驚くとともに、写真から美味しさが伝わってきた。「始末」という言葉を料理でもって簡潔に説明する男気に好感を抱いた。

本書の前書きとも言える「始末の心」で上野さんは以下のように語っている。

…大阪人は昔から「始末」という言葉を大事にしてきましたなぁ。ややもすると吝嗇と受け取るお人もあるけど、それは違いまっせ。節約とか、倹約の意味でしてネ。無駄を省いて物を生かしきる。つまり合理的な考え方のことですわな…大阪は天下の台所として、豊富な食材が集まった場所であります。遠くから新鮮な素材は運べないため、塩蔵や乾物が多かった。大阪が乾物商の発祥となった所以でおますな。つまり大阪は地産地消と集散の食文化といえる…板前の仕事は食べ物を通して人様を納得させることにある…作り手、食べ手の双方が納得のいく長いお付き合い、“飽きない商い”(洒落やおまへんで)こそ、始末がええってもんだす…

彼の料理には静と動がある。薀蓄はさり気なくがベストである。料理の味を冷静に判断するのが客の仕事だろう。それが出来ない人間が多いから、盆地の料理人の言うことを鵜呑みにするのである。

京都を意味もなく持ち上げる風潮はそろそろ止めにしないか。全国レベルがグングン上がっていることに気づいていないのは、偏狭な地にへばりつく職人のみかもしれない(笑)

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