「晩飯はやっぱり魚貝かw」
「そう~な~せっかく遠くまで来たんだからぜひ食いたいよ」
「●☆駅の近くに割烹が二つあるよ。とりあえず向こうに行ってどっちかに決めよう」
「そうだな」
駅のすくそばに、いかにも高そうなゴツイ構えの割烹とその向かい側にこじんまりした造りのそれがあった。
「どっちにする?」
「う~む。大衆割烹の方にしよう。門構えで金を取られちゃたまんねぇからな。シンプルな店は料理も期待できる。これは俺のカンだ」
「よし、入ろう」
壜ビールをコップについで乾杯し、舌を湿らした。実に旨い。造り盛合せ、焼き貝、アワビバター炒めをたのんでおき、私達は魚の話を始めた。

造りはイサギ・ウニのせイカ・スズキ・カツオ・カンパチ・ヒラメ。群を抜いてスズキが良かった。アワビは海水の味だけで余計な調味料を排しており、高評価だった。

更に三重の郷土料理を追加注文した。
・手羽先ハーハー揚げ
・福溜(トコブシ腸煮)
・カキ塩辛
・手こね寿司(ライト感覚のカツオ漬け丼)
・天巻(海老天の海苔巻き、刻み大葉がアクセント)

「手羽先唐揚げ、天むすの発祥は実は三重なんだ。意外に知られてないが…」
「それは知らなんだわ。商魂たくましい名古屋が派手なプロパガンダでパクッたんだな。何でもありの世界かよw」
「ほんとにこっちは損してると思う」
「パクッたもん勝ちかよ!竹島みてぇじゃね~か。もっと主張せんといかんわ」
旧友との会話は弾んだ。肩のこらない店の雰囲気。主人は黙々と自信のある料理を出してきた。従業員の対応もさらりとして好印象である。地元庶民に愛される大衆割烹、いぶし銀の存在感だ。
「いい店だ。美味い魚に酒と友人。他に何にも要らない。俺の地元はやたらと能書きを言う店が多くてな…教養のない、偏った固定観念に縛られた料理人が目立ってうんざりするんだよ」
「いわゆる一地方料理でアゴを上げるというやつかw」
「料理人がどこの出かは大体見当がつくがな。頭の●い取り巻きがチヤホヤするから、豚がつけあがるんだ。豚の味噌漬けは美味いが、こんなオヤジはとても食えたもんじゃねぇ」
「舌が回ってきたなw」
「そういった連中は、各地の郷土料理に対して尊敬の念が感じられない。ある人が俺に教えてくれたんだ。料理には人間性が出るってね。驕りや性根の悪さが料理に出てくるからタチわりーんだよ」
「どこにあんだ、その店は。教えてくれよ。客層は?」
「知りたいか。立地条件は最悪だからw普通の人は行かない。ちょっと耳貸して◆□◎▼бпЯ」
「はー。ダーティーなイメージが確かにあったけども…それは(汗)」
「イメージじゃなくってダーティーそのものなんだよ。だからいつまで経っても倉敷に勝てないどころか、大きく引き離されるんだ。店も客も謙虚さを忘れている。人間の最も大切な部分だよ。国がこんな有様になったのは国民自体の責任も多々ある。ばら撒き政策を期待しているようでは世界の笑いもんさ」
「ハッハッハッハッハ」
