私の母は料理が好きな人だった。子どもにハンバーグを食べさせることはあまりなかった。それ故、ハンバーグに関して言えば、まったく思い入れがないのである。
好物は何ですかと聞かれて「ハンバーグ」と即座に答える子どもを見ると、親がろくなものを食わせておらず、かつ料理下手であることをまず疑う。この推測はよく当たるから怖い。出来合い物に慣れて育った人間は感受性に乏しい一面がある。
幼い頃の私は忙しい母が手の空いた時に「オムライスを作って」と頼んだものである。機嫌の悪い時は聞き入れられず「お好み焼き」になるのだが、後からフライパンさばきを見るのが楽しかった。母の薄焼き玉子を焼く技術は大したもので、ケッチャップライスの上には極薄のそれがのっかっていた。
この前、さびれた大衆食堂で期待もせずにオムライスを注文したら母の味にそっくりで驚いた。そして店の主が阿久悠さんに酷似しており、マジマジと彼の顔を見てしまった。水の入ったガラスコップにスプーンが浸けてあるのが昔風で泣かせた(笑)

好物は何ですかと聞かれて「ハンバーグ」と即座に答える子どもを見ると、親がろくなものを食わせておらず、かつ料理下手であることをまず疑う。この推測はよく当たるから怖い。出来合い物に慣れて育った人間は感受性に乏しい一面がある。
幼い頃の私は忙しい母が手の空いた時に「オムライスを作って」と頼んだものである。機嫌の悪い時は聞き入れられず「お好み焼き」になるのだが、後からフライパンさばきを見るのが楽しかった。母の薄焼き玉子を焼く技術は大したもので、ケッチャップライスの上には極薄のそれがのっかっていた。
この前、さびれた大衆食堂で期待もせずにオムライスを注文したら母の味にそっくりで驚いた。そして店の主が阿久悠さんに酷似しており、マジマジと彼の顔を見てしまった。水の入ったガラスコップにスプーンが浸けてあるのが昔風で泣かせた(笑)
