青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

緑彩色のマリアージュ

2020年06月23日 17時00分00秒 | 箱根登山鉄道

(雨宿りのベンチ@塔ノ沢駅ホーム)

小やみになったと思えば、突然ザーッと強く降る雨の塔ノ沢。ホームには4~5人程度が座れる屋根掛けの小さな待合室がありますので、雨降りの撮影の際は重宝します。箱根の登山電車で終日駅が無人駅なのは、ここ塔ノ沢だけ。試運転の電車が来るまでは、ベンチに座って瞑想するもよし、雨を見ながら物憂げに過ごすもよし。自分だけの時間が流れて行きます。

ほんのごくたまに、駅の裏手にある銭洗弁天にお参りに来る地元の人が通り過ぎます。紫陽花と、オジサマには似つかわしくない(?)カラフルな青い雨傘の組み合わせ。深い緑に鳥居も苔生す深澤銭洗弁財天は、証券会社の創業者の方がこの地に勧進したもの。塔ノ沢の湯宿を定宿にしていた彼の夢枕に、白蛇が現れたことがきっかけで建立されたのだそうで。大正時代から100年近く、この塔ノ沢の駅を見守り続けています。

また雨の激しくなって来た塔ノ沢。塔ノ峰隧道を登って、108-109が駅に戻って来ました。しとどに濡れる紫陽花を入れ込んでフレーミングしましたが、傘を差しながらの撮影は正直カメラを濡れないようにするので精一杯・・・足元は雨を見越して長靴履いて来たからいいのだけど。運転台の社員さんも土砂降り雨に思わず腕まくり。

弁財天のお堂様に隠れて雨宿りしながら、ハチキューの塔ノ沢の出発を見送ります。どのみち光はあまり射し込まない山峡の駅、露出は稼げませんのでスローシャッターで。濡れた紫陽花の葉のしっとりとした緑と、鳥居の基礎を覆う抹茶のような苔の緑と、109の車体を包む深い緑。それぞれの緑彩色が、視覚の中で混沌とまじり合いました。


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