youtubeで興味深い映像を見つけた。
5年前、靖国神社で行われた追悼式典の映像で、金美齢氏が何故、靖国神社に参拝するのかを語っている。
http://www.youtube.com/watch?v=ALfu0RWGG84&feature=related (youtube映像)
終戦時、11歳だった金氏は、そのときまで「日本人」であり、日本の勝利を疑わない「軍国少女」だった。台湾にいた「兵隊さん」は、いつも金少女にやさしくしてくれ、台湾人を守ってくれた。「靖国で会おう」と言い残し、国のために散っていった彼らを、そのとおり靖国に奉るのは当然のことであり、それにとやかく言う日本人は「恥知らず」である。これに反対する外国人には「not your business!」(あなたの知ったことか!)と言えばいい、と喝破する。
私個人としては、学徒出陣を経験した親族が戦後二度と靖国神社に行かなかったことや、恩師である相沢久先生の著作(「現代国家における宗教と政治」)に親しんだ経験から、靖国問題については、いろいろな想いが交差する。だが、それらはこの金氏の発言の前にはかすんでしまうかのようだ。
会場からは、英語で靖国反対を叫ぶ声が起きるが、これに対して金氏は「Americans, get out of Japan and Yasukuni!」と言い返す。
この当時、金氏は民進党・陳水扁総統の政策顧問だった。その後、陳水扁総統は選挙に敗れ、不正蓄財の疑いで投獄されて現在に至っている。陳水扁氏を破った馬英九総統(中国国民党)は、中台関係をさらに強化しようとしており、徴兵制度の廃止を掲げている。まさに台湾の政治的自立さえ危ない状況になっているのだ。
「台湾独立派」のリーダーとみなされていた金氏は、李登輝氏が登場する以前の台湾には入国さえできなかった。ようやく、李登輝総統になってから、長年の思いを祖国の人々に伝えられるようになったのだ。その意味で、金氏の靖国への思いは、普通の日本人よりも何倍、何十倍と重いに違いない。
台湾人が民主選挙で馬英九を選択したとき、金美齢氏は「不満の春にも花は咲く」※という一文を「産経新聞」に寄せた。議会制民主主義の選挙によって馬英九氏が選ばれた以上、これまでの努力は水泡に帰したかも知れないが、それはそれで仕方がない…と記されていた。
※ http://blog.goo.ne.jp/torumonty_2007/e/d1188229980ca7c03f0d89162da34b95
あれから1年、民主化された台湾はどこに漂流していくのか?