先週から東京で公開されている映画「台湾人生」(酒井充子監督 2008年)について、監督自身が映画を通して伝えたかったことを語っている。
この講演会を主催した台湾フォーラムという団体は、NHKの偏向報道問題(NHKスペシャル「アジアの”一等国”」)を追及しているので、酒井監督も同様の政治的な立場の方かと思われるかも知れないが、この映像を見ればそうではないことがわかる。ふとした偶然から台湾に向き合うようになった経緯が淡々と語られていて、声高の主張よりもむしろ強い説得力を感じさせる。
NHK問題や中国への遠慮など、さまざまな思惑が入り乱れる中で、この映画に妙な”色づけ””意味付け”がされることを、私は心配する。この映画については、「朝日新聞」もかなりの紙面を割いて好意的に紹介したようなので、杞憂だとは思うのだが…。気の利いた「民主主義者」のような顔をして、「植民地統治の犠牲者」「同化政策は人権無視」などと紋切り型の批評だけはしてほしくないものだ。
台湾の日本語世代が少なくなっていく中で、この映画が作られた意義は大きい。つい10数年前までは、台湾自体がこういうテーマの映画を作れるような政治環境にはなかったことも忘れてはならないだろう。
遅れてきて、やっと間に合ったという、記念すべき映画だ。
台湾研究フォーラム 酒井充子監督 20090620 01