台北故宮博物館は、大陸中国に返還すべきだ、と言った人がいる。
親中派のサヨクではない、「台湾独立運動」を続ける林建良氏だ。「中国に併呑された台湾」(「西部ゼミナール」6月13日放送)というTV番組で、秋山祐徳太子が「故宮博物院は台湾の宝でしょう?」と質問したのに対し、林氏は上記のように応えた。

故宮博物院は、台北観光の目玉。「台湾に来たなら、故宮博物院とタロコ渓谷(花蓮)を見ないとね」とガイドさんは言う。中華文明の展示会のような故宮博物院だが、林建良氏は何故これを大陸に返すべきだと言うのか。
まず、現在の馬英九政権の対中姿勢。この1年間、中国資本の台湾投資容認や人的交流の拡大など、台湾の自立性を阻害しかねない政策を立て続けに実施してきた。馬英九は中国国民党のプリンス、外省人でもあるので、「偉大な中華文明」「ひとつの中国」を掲げる点においては、中国共産党と全く同じ考えだ。
中国国民党と中国共産党は、その成り立ちにおいて「異母兄弟」だと言われる。国民党は「三民主義」を、共産党は「マルクス・レーニン主義、毛沢東思想」を掲げたのだが、八十年余りを経て、手元に残ったのは「中華思想」だけになってしまった。今や「偉大な文明」「ひとつの中国」という「中華思想」だけが、中国と台湾を結びつけるイデオロギーとなっているのだ。蒋介石が台湾に持ち込んだ故宮の文物は、まさに「中華思想」の体現化、物体化なのだ。
これに対抗するには、故宮博物院の文物を大陸に返還する、これが林建良氏の主張だ。南の小島(台湾)に強制的に移植された文物は本来の場所(大陸)に戻り、台湾は自らのアイデンティティを取り戻すのだ。
昨日から報道されている新彊ウイグルの暴動を見ていると、「二二八事件」もこのような有様だったのだろうかと想像した。1947年、中国国民党は、この事件で三万人もの台湾人を無法にも虐殺したが、その全体像が明らかにされるようになったのは、わずか10数年前である。当時は、大戦後の混乱期だったので、事件の映像も写真もほとんど残されていない。台湾人は、李登輝氏が政治舞台に登場するまで、ひたすら時を待ち続けたのだ。
これから何十年後かは分からないが、ある日、このウイグル暴動の真相がウイグル人側から明らかにされる日が来るかもしれない。そのときこそ、「中華思想」「中華帝国」の落日だ。
中国当局者の面前で「中国がひとつであったことは、歴史上一度もない」と言った、故・衛藤瀋吉氏の姿を思い出す。
親中派のサヨクではない、「台湾独立運動」を続ける林建良氏だ。「中国に併呑された台湾」(「西部ゼミナール」6月13日放送)というTV番組で、秋山祐徳太子が「故宮博物院は台湾の宝でしょう?」と質問したのに対し、林氏は上記のように応えた。

故宮博物院は、台北観光の目玉。「台湾に来たなら、故宮博物院とタロコ渓谷(花蓮)を見ないとね」とガイドさんは言う。中華文明の展示会のような故宮博物院だが、林建良氏は何故これを大陸に返すべきだと言うのか。
まず、現在の馬英九政権の対中姿勢。この1年間、中国資本の台湾投資容認や人的交流の拡大など、台湾の自立性を阻害しかねない政策を立て続けに実施してきた。馬英九は中国国民党のプリンス、外省人でもあるので、「偉大な中華文明」「ひとつの中国」を掲げる点においては、中国共産党と全く同じ考えだ。
中国国民党と中国共産党は、その成り立ちにおいて「異母兄弟」だと言われる。国民党は「三民主義」を、共産党は「マルクス・レーニン主義、毛沢東思想」を掲げたのだが、八十年余りを経て、手元に残ったのは「中華思想」だけになってしまった。今や「偉大な文明」「ひとつの中国」という「中華思想」だけが、中国と台湾を結びつけるイデオロギーとなっているのだ。蒋介石が台湾に持ち込んだ故宮の文物は、まさに「中華思想」の体現化、物体化なのだ。
これに対抗するには、故宮博物院の文物を大陸に返還する、これが林建良氏の主張だ。南の小島(台湾)に強制的に移植された文物は本来の場所(大陸)に戻り、台湾は自らのアイデンティティを取り戻すのだ。
昨日から報道されている新彊ウイグルの暴動を見ていると、「二二八事件」もこのような有様だったのだろうかと想像した。1947年、中国国民党は、この事件で三万人もの台湾人を無法にも虐殺したが、その全体像が明らかにされるようになったのは、わずか10数年前である。当時は、大戦後の混乱期だったので、事件の映像も写真もほとんど残されていない。台湾人は、李登輝氏が政治舞台に登場するまで、ひたすら時を待ち続けたのだ。
これから何十年後かは分からないが、ある日、このウイグル暴動の真相がウイグル人側から明らかにされる日が来るかもしれない。そのときこそ、「中華思想」「中華帝国」の落日だ。
中国当局者の面前で「中国がひとつであったことは、歴史上一度もない」と言った、故・衛藤瀋吉氏の姿を思い出す。