日本共産党の機関誌「赤旗」が、NHKスペシャル「アジアの”一等国”」について、言及している。
NHK執行部の説明をそのまま転載して形になっているが、日本共産党が日本の台湾統治をどう理解しているかが分かる興味深い内容である。
冒頭の「日本の台湾植民地統治の実態を描いたNHK番組が自民党国会議員や右翼勢力から攻撃されている問題」という表現は、あのNHK番組が、一部の「反動勢力」によって批判されているだけで、心ある「人民」は、そういう見方はしていないという前提に立つ。
確かに「アジアの”一等国”」を批判しているマス・メデイアは「産経新聞」のみで、若干の雑誌社系月刊誌がこれに賛同しているくらいだ。声高に「反対」を叫んでいるのは、右派系の日本人であることに間違いはない。「李登輝友の会」という団体にしても、冷戦時代は「反共」の立場から、蒋介石の台湾人抑圧政治を支持、容認してきた政治家、評論家といった連中が多数含まれている。
だが、日本共産党は、何故、台湾の戦後史を直視し、台湾人の声に耳を傾けないのか?彼らは、38年間にも渡った中国国民党による「戒厳令」の間、「白色テロ」の恐怖に怯え、本心を語ることができなかった。完全に民主国家になったいま、ようやく言論の自由をかみしめているというのに…・。
NHK経営委員長の「(待遇が)いかに良くても植民地が善であるということはない。21世紀の人類の未来に、戦争もない、植民地化もない時代をつくらなくてはならないという見識が、番組の底流に流れていると思う」という弁明をそのまま掲載して、「民主主義」を標榜するNHKが、あたかも「右派勢力」に難癖をつけられているかのような報道は、あまりにも見識がなさ過ぎるのではないか。
「社会主義vs.資本主義」「毛沢東vs.蒋介石」「国民党vs.共産党」といった単純二元論の不毛な論争が続く中で、これまで台湾人の生の声は、一般の日本人に届くことはなかった。最近の20年間で、台湾の日本語世代は、ようやく本音を語る自由を得たのだ。そのことを、紋切り型のサヨク用語で攻撃するのは、不見識そのものと言わなければならない。
ドキュメンタリー番組を意図的に編集しておいて「…戦争もない、植民地化もない時代をつくらなくてはならないという見識が、番組の底流に流れていると思う」などというNHKの弁解は、まさに噴飯ものではないか。日本共産党が、こういう空虚な言葉を一緒になって信じるのであれば、彼らが目指す未来とはいったい何なのだろうと疑わざるを得ない。
日本共産党が「歴史の進歩」を信じ、「民主勢力」が世の中を変えていくと本気で信じるのならば、今こそ、ようやく本心を語り始めた台湾人の声に耳を傾けるべきだろう。
「台湾」番組 問題ない~福岡の「語る会」 NHK執行部が表明
日本の台湾植民地統治の実態を描いたNHK番組が自民党国会議員や右翼勢力から攻撃されている問題で、NHK執行部は4日、「番組の事実関係に間違いはない」とする見解を改めて示しました。NHK福岡放送局で開かれた「視聴者のみなさまと語る会~NHK経営委員とともに」で述べたものです。
問題の番組は4月5日放送の「シリーズ・JAPANデビュー第1回『アジアの“一等国”』」。「反日的」「台湾人へのインタビューが恣意(しい)的に編集された」などとして、安倍晋三元首相ら自民党国会議員が議連を立ち上げ、先月25日には右派集団がNHKを提訴しました。
「語る会」で、日向英実放送総局長は「事実関係を細かく調べた結果、間違いは発見できなかった。インタビューも恣意的に編集していない」と語りました。
小丸成洋経営委員長は「放送法で経営委員は個別番組の編集に立ち入ることはできないが、執行部から番組に問題は一切ないと報告を受けた」と説明。安田喜憲経営委員は「個人的な意見」とした上で、「(待遇が)いかに良くても植民地が善であるということはない。21世紀の人類の未来に、戦争もない、植民地化もない時代をつくらなくてはならないという見識が、番組の底流に流れていると思う」と述べました。(「赤旗」より)