澎湖島のニガウリ日誌

Nigauri Diary in Penghoo Islands 澎湖島のニガウリを育て、その成長過程を記録します。

「都立高、女子生徒の虐待通告せず」の裏側

2010年08月09日 08時54分59秒 | 社会

 昨日、唐突に「産経新聞」一面を飾ったスクープ(?)。
 ある都立高等学校での出来事だが、一般教員と管理職との対立図式が透けて見えるような事件だ。
 
 そもそも、この事件は極めてプライベートな問題だったはず。それをマスコミに通報した人がいて、問題は大きくなった。マスメディアで報道されれば、教育委員会は「学校を適正に指導する」という「伝家の宝刀」を必ず抜く。「伝家の宝刀」と言えば聞こえはいいが、要するにすべてを学校の責任として、誰を処罰の対象にするのか決めるだけのことだ。
 
 この「事件」は、本来、全国紙の一面に出るような大きなものではない。にもかかわらず、これほど大げさになったのは、当該学校内部の対立、教育委員会の意向など、隠された意図が必ずあるはずだ。

 閉鎖的な学校社会での事件は、必ず教育委員会の「指導」で適正化されることになっているが、実は、教育委員会自体が極めて無責任な組織である。行政委員会としての教育委員会は、事務局のお飾りに過ぎず、実際には事務局官僚の政治的意図に基づいて物事が決定されている。こんな組織に「指導」され、懲戒処分を受けることになる当該校長は、まことに気の毒、不運だったとしかいいようがない。

 

都立高、女子生徒の虐待通告せず 校長、緊急性認めず「様子見る」

8月8日0時46分配信 産経新聞

拡大写真
児童相談所への主な虐待通告元の推移(写真:産経新聞)
 東京都台東区の都立高校で4月、1年の女子生徒(15)が実母による虐待を疑われながら、学校が児童相談所へ通告していなかったことが7日、関係者の話で分かった。生徒はその後も虐待を受け、7月に児童相談所の介入により保護された。都教委は「学校の対応は適切ではなかった」として事実関係を調査する。虐待通告をめぐっては1月の江戸川区の岡本海渡(かいと)君事件を受け、文部科学省などが子供の安全確保の徹底を求める通知を出しているが、教訓が生かされていない実態が浮かんだ。

[フォト]児童虐待の検挙199人と過去最多 死亡数も大幅増 22年上半期

 関係者によると、4月下旬、担任の男性教諭が生徒の顔に直径約4センチの青あざがあることに気づいた。前歯も少し欠けていた。生徒が「酔った母親からの暴力に悩んでいる」と話したため、担任は男性校長(60)らへ報告した。その際、校長は緊急性を認めず「様子を見る」として児童相談所へ通告しなかった。

 7月上旬、担任は再び生徒の様子がおかしいことに気づき、左腕と左足にそれぞれ直径約4センチの黒あざを見つけた。生徒が「中間テストの結果が悪かったという理由で、酔った母親からいすで殴られた」と訴えたため、担任が独断で児童相談所へ通告したという。

 生徒は児童相談所に保護され現在、都内の里親家庭へ身を寄せている。生徒は父親と死別、母親と2人暮らしだった。

 文部科学省は、確証がなくても虐待通告するよう通知している。校長は取材に対し「緊急性があるか総合的に判断し、様子を見守ることにした。判断ミスとは思っていない」と話した。

 都教委の高等学校教育指導課の宮本久也課長(52)は「虐待の疑いがあれば通告するのが本来であり、学校の対応が適切だったとは考えていない。事実確認した上で、しかるべき対応を取る」としている。

「神の医師」を作り上げたテレビ朝日

2010年08月08日 11時05分59秒 | マスメディア

 先日の「報道ステーション」で採り上げられた特集「神の医師 101歳の戦後」だが、ネットを検索してみると、多くの人が”感動”したようなのだ。だが、この美談が実は意図的に作られたものであることを指摘した。

 ことの経緯は別の日付の本ブログを見ていただくとして、下記のYouTube映像で気づいたことがある。この映像をUPしたのは、JapWarCriminalsという人物で、60歳の米国在住中国人らしい。Japとは聞き捨てならない言葉だ。JapWarCriminalsとは「戦争犯罪者の日本人野郎」という意味だ。
 
 映像の中には「毛主席」という言葉が何度も出てくる。戦争犯罪という「原罪」を背負う「日本人野郎」に対してさえも、毛主席の中国共産党はこんなにも慈悲深い…こういう宣伝話なのである。中国国内では共産党の宣伝材料に、日本では「感動美談」として使えるのなら、一挙両得という次第。テレビ朝日は、これを何の検証もせずにそのまま放送し、多くの人に「感動」を与えてしまった。

 中国にまつわる「美談」は、鵜呑みにしてはならない。それくらいのことはテレビ朝日も承知のはずなのに、何故こうなるのか?  この「美談」を放送したのは、私の知る限りでは「テレビ朝日」だけだ。つまり考えられるのは、意図的に「美談」を作り出したということだ。
 テレビ朝日の責任は重大だ。 

《百歳侵華老兵在華贖罪~百歳の侵略日本兵が中国で贖罪》


台湾のリアルタイム天気予報

2010年08月07日 17時53分55秒 | 台湾

 いよいよ海外旅行がピーク。
 
 台湾各地の天気予報は、次のサイトで分かる。

壹電視 NEXT TV 天気預報》
http://www.nexttv.com.tw/weather

 毎日、日替わりのコスプレ・ギャルが出てきて、天気予報を伝える。台北から高雄までの台湾海峡側、東台湾では花蓮、宜蘭など、島嶼部では澎湖諸島、金門・馬祖まで、詳しい天気予報が分かる。みんなとても、カワイイ

 何と、日本語を使っているのが驚き。もちろん、台湾国内向けの放送なので、日本人対象ではない。こんなに親しみを感じる国は、他にはないと思いませんか?


「”神の医師” 101歳の戦後」はこうして作られた

2010年08月06日 06時18分30秒 | マスメディア

 テレビ朝日系「報道ステーション」で放送された「”神の医師” 101歳の戦後」が、大きな感動を与えているそうだ。

 「感動」に冷水をかけるようで恐縮だが、まず下記の映像を見てほしい。これは、中国側で制作された「山崎宏物語」である。山崎宏が、暴虐を重ねる日本軍(皇軍)を脱走し、中国共産党のもとに抱かれて、今や幸福に生きているというストーリーだ。

 だが、考えてみてほしい。中共(=中国共産党)が「革命根拠地」に立てこもった延安時代には、共産党員同士で苛烈な粛清や洗脳が行われた。それは毛沢東が実権を握るための殺し合いと言っていい。そこで完成された「人間改造」の手法は、「解放後」の大躍進、プロレタリア文化大革命で存分に使われた。善良で豊かな人間的感情を持つ者は、「反革命分子」として糾弾され、「洗脳」されるか、殺害されるかのどちらかの道が待っていた。そのような暗愚と相互不信の中国社会で、山崎宏という人が今まで生き延びられたのは、それなりの「存在価値」があったからだ。
 中共にとっては、山崎宏は「反日教育」の宣伝材料に尽きる。人民に対して、日本は暴虐非道の国であるが、中国側に尽くした日本人はかくも幸福になれる、すべては(毛主席の)中国共産党のおかげだという宣伝なのだ。

 問題なのは、テレビ朝日が中国側の宣伝材料をそのまま使っていること。この脱走兵が「神の医師」になったとまで言うのなら、それが事実かどうか検証をすべきではなかったか? 彼を知る軍関係者にインタビューするとか、国内でもいろいろな検証は可能だったはず。にもかかわらず、テレビ朝日は「神の医師」という中国側の報道(物語)をそのまま垂れ流しにした。

 毛沢東時代(1949-76)の中国は、日本軍国主義と日本人民を区別して、前者を「批判」していた。だが、江沢民以降の中国は、日本・日本人そのものが「邪悪」なのだという「反日教育」を進めている。
 悪魔のような日本人でも、中国共産党に帰依すれば「神の医師」になれる…これが山崎宏ストーリーに他ならない次の映像を見れば、中国の意図はあきらかだろう。テレビ朝日は、これをどう説明するのか。


《百歳侵華老兵在華贖罪》
 ここでは「毛主席」という言葉が何度も繰り返される。この映像をUPさせたのは、JapWarCriminalsと称する米国在住の中国人。Japとは、聞き捨てならない言葉だ。「戦争犯罪者の日本野郎」という意味だ。


安心してつき合える隣国

2010年08月04日 12時02分11秒 | 台湾

 今日の「産経新聞」掲載のコラム「台湾有情」に興味深い記事がある。「今こそ”日台FTA”」いう記事だ。
 初めて訪台した日本人が「地下鉄の割り込みはないし、エスカレーターで誰もが右側に立っている。人も車も交通ルールを守り、日本と変わらない。」と驚くエピソードが書かれている。(下記参照)

 唐突な話になるが、毛沢東はかつて「ズボンを穿かなくても原爆を作る」と宣言して、中国は現在の核大国、超大国になった。米ソと対立する状況の中で、国内の政治体制を引き締めるために、大躍進(1958~)、文化大革命(1966~)などの大衆動員をおこない、その結果、数千万単位の人民が死地に追いやられた。中共(=中国共産党)は、この過去の暴政を自己批判するどころか、「中華愛国主義」の拠り所にさえしている。

 暴政によって引き裂かれた社会の信頼関係は、容易には回復しない。現在、中国が殺伐な拝金・コネ社会であるのも、共産党の暴政に起因するところが大きい。
 
 東アジア世界の中で、日本が共通理解を持ってつき合える相手は、おそらく台湾だけだろう。かけがえのない隣人を大事にすべきなのだが、実際にはますます「媚中」傾向が強まっている。
 「日台FTA」こそ、まず進めるべきだろう。 
 

今こそ「日台FTA」

2010年8月4日 産経新聞 「台湾有情」より

7月は日本人の来訪が相次いだが、中国と関係の深い友人、近親が初めて訪れた台湾をほめちぎるのを聞いてうれしかった。

「地下鉄の割り込みはないし、エスカレーターで誰もが右側に立っている。人も車も交通ルールを守り、日本と変わらない。中国がこのレベルになるのにどのくらいの年月がかかるか、気が遠くなるほどです」

一昨年まで3年間、江蘇省南通市で日本語を教えた大学時代の友人は、帰国後こんなメールをくれた。

同省蘇州市で日本企業の工場長を務めている近親は「タクシーの運転手が親切だし夜道も安心して歩ける」とすっかりくつろいだ表情だった。

治安の良さや外国人への心配りなど、台湾は世界の一流国並みだ。ところが中国の妨害で国際社会からは疎外されている。馬英九政権は世界の自由貿易化に乗り遅れまいと6月末、中国との自由貿易協定(FTA)に相当する経済協力枠組み協定(ECFA)に調印した。そうすれば中国は台湾が諸外国とFTAを結ぶことに反対しない、と期待したからだ。

ところが調印後も中国が軟化する気配はない。日本は最良の隣人を助けるためにも、台湾とFTAを結ぶべきではないか。中国の顔色をうかがっているばかりでは、台湾は中国にのみ込まれかねない。(山本勲)


「”神の医師” 101歳の戦後」の正体は?

2010年08月02日 23時36分02秒 | マスメディア

 季節柄、戦争回顧ものが目立つTV界だが、今夜の「報道ステーション」には違和感だけが残った。「神の医師 101歳の戦後」という特集で、山崎宏という101歳になる「医師」が紹介された。
 この山崎宏という人は、1937年に徴兵され、中国大陸に行く。ある日、日本兵が中国人の母親から幼子を取り上げ絞め殺すのを見て、「日本軍は悪い」と思い、軍を逃げ出したという。逃亡の果て、中国人に食料をあたえられ、助けてもらい、中国人と生活を共にする。敗戦後、山崎さんは日本に帰国せず、「中国人に恩返しするために」医師になろうと決心する。ただし、小学校しかでていなかったので、「数年間の猛勉強の結果」医師になったという。
 「医師」にはなったものの、文化大革命などの政治暴風の中、日本人であることでずいぶんと苦労したという。いまでは、家族に囲まれ、診療活動も続けているという話だった。

 ここまで書くと、誰もが疑問に思うことがある。山崎さんは「脱走兵」であったという事実だ。北朝鮮に”逃亡”したジェンキンスさんが、祖国である米国に帰れば、軍法会議にかけられるというので、その政治的処理が問題になったことは記憶に新しい。山崎さんの場合も基本的には同じことだ。
 「日本軍が幼児を絞め殺した」のを見たから、中国側に逃亡したというのも、にわかには信じられない話だ。当時、日本が敗戦することなど考えられなかったし、中国側とはいったい誰を指すのだろうか? きっと語ることが出来ない「真実」が別にあるのだろう。
 
 「報道ステーション」では、ジェンキンスさん問題で、脱走兵のことを散々語ったはずだ。だが、山崎さんに関しては、「悪の日本軍から逃れて、医療活動で中国に一生を捧げた人」という描き方をしている。20年ほど前だったら、こんな描き方は決して出来なかったはずだ。現在、軍隊経験者は80歳代半ばになってしまった。「脱走兵」の意味や、旧・日本軍の規律について、もう文句を言う人はあるまい…こういう読みでこの特集が作られたのではなかったか。 そう考えると、腹話術人形のような古舘のコメントに、余計、腹が立ってくる。
 要するにテレ朝はでっち上げの「美談」を放送したということだ。 さすが「媚中」の総本山と言われる朝日だけあって、山崎さんのような人まで「日中友好」のシンボルとして担ぎ出そうとするのか?

 8月上旬は、さまざまな「戦争回顧」番組が放送される予定だが、中にはこんな番組が他にもあるかも知れない。歴史的検証も示さずに、感情に訴えるような番組は要注意だろう。

 蛇足だが、中国の医師養成制度は、一体どうなっているのだろうか? 文革期、「裸足の医者」というのが喧伝されたが、今は聞かない。しかし、この山崎さんのような経歴の人が、「医師」として今なお診療活動を続けている。たとえ、漢方医だとしても、診療行為をさせて大丈夫なのだろうか。私には、中国という国が本当に得体の知れない、不気味な国に思えてくるのだが、どうだろう? 医師の資格を相互認定などしたら最期、日本は中国人のニセ医者で溢れてしまうに違いない。
 テレ朝は、「東アジア共同体」を支持し、「日中の医師資格相互認定」までも推進しようとする立場だ。その意味では、山崎さんの美談は、かえってマイナスだった。 馬脚をあらわした…と言っておこう。

 この山崎という人の正体は、次の映像を見ると氷解する。「報道ステーション」の元ネタはこれのようだ。

http://v.ifeng.com/society/200907/76dbcaca-a9bd-47ee-a47e-069cb7aabd2a.shtml   (山崎宏当日?逃兵 留在中国七十年)


懺悔の夏が来た~「歴史の報復」(石原慎太郎)を読んで~

2010年08月02日 09時13分27秒 | 歴史

 今朝の「産経新聞」に石原慎太郎の「歴史の報復」という一文(※)が載っている。従来の彼の主張を繰り返したもので、取り立てて目新しいことは含まれていない。

※ http://www.sankei.jp.msn.com/politics/policy/100802/plc1008020315003-n1.htm

 この季節、マスメディアは、原爆投下の日、敗戦記念日を目前にして、先の戦争を振り返る特集を組む。特に熱心なのはNHKで、何本もの特集が放送されるようだ。
 だが気になるのは、戦争体験がますます風化し、マスメディアの報道内容も、年々観念的になっている点。戦争体験者が社会の主流だった頃、護憲的な平和論が隆盛を極めたが、その一方では「そんなきれいごとでは国は守れない」という冷静な認識も根強く存在した。ところが今や、「戦争を知らない子供達」の子供にあたる世代になって、マスメディアも多くの国民も観念的な平和論に取り憑かれてしまった。石原の一文などは、極めて例外的な内容である。
 
 何故、夏が来るたびに、過去の戦争を反省し、これを「繰り返しません」と誓わなければならないのか? 1945年の国家的破滅は、何故起こったのか? このことを真剣に追究しなければ、再びこの国は「歴史の失敗」を繰り返すのかも知れない。
 
 先日、「地球温暖化のウソ」を主張する武田邦彦・中部大学教授が、刮目すべきことを言っていた。
 「資源の節約・省エネなど、日本が世界に率先してやるべき理由など何もない。日本が経済力で優位を保っているうちに、有望な先端分野に積極的に投資をすべきだ。同時に、工学部の人気を復活させ、技術立国を進めるべきだ」「二酸化炭素の削減など、日本が先頭に立ってやっても、結局、中国やインドが使い切ってしまうだけのこと」「日本が経済力の優位を失えば、世界中で日本を相手にする国などない。アメリカやロシアという白人国家が、アジアの黄色人種の日本を助けるわけがないでしょう」
 
 この武田氏の発言※※(BS TVでのインタビュー)は、少々エキセントリックだが、本質を突いた発言である。日本人は歴史に謝罪を繰り返すうちに、かえって「歴史の報復」を受けることになる…そんな暗い予感がよぎる。

※※ http://takedanet.com/2010/06/post_4388.html
        http://takedanet.com/2008/02/co2_6dcf.html 
    http://takedanet.com/2010/06/post_71d3.html
    http://takedanet.com/2010/06/post_cbc9.html
    http://takedanet.com/2010/05/9_eb46.html
        http://takedanet.com/2009/10/post_1b47.html
        http://takedanet.com/2009/10/post_3037.html
        http://takedanet.com/2009/03/post_f08e.html
       http://takedanet.com/2007/04/post_3aab.html

 
  上掲の武田教授のブログは、とても率直で面白い。さすが東大教養学部基礎科学科出身というだけあって、自然科学以外の分野にも造詣が深い。この人を「トンデモ教授」扱いして、無視するのは間違っている。たとえ扱いにくい、奇人であっても…・。

【日本よ】石原慎太郎 歴史の報復

《産経新聞》2010.8.2 03:40

(早く都知事など辞めてしまって、執筆活動に専念されては如何?)

 人間のさまざまな意欲の所産である歴史は、その流れの中で多くの歪(ひず)みを生んではきたが、長い目で見るとそれを修正し結果として『ある意味で』公平な帰結をもたらしているようにも思える。

 かつて十九世紀から二十世紀にかけて歴史を支配した食うか食われるかの帝国主義の原理は、有色人種の中で唯一近代化に成功した日本が、白人の列強に伍して引き金を引いた第二次世界大戦の結果覆され多くの植民地は解放されて独立を果たし、かつての宗主国は彼の地に埋蔵されている資源にしきりに媚(こ)びざるをえないようになった。

 世界が時間的空間的に狭小なものとなり、多くの情報によって人間たちの欲望が膨張氾濫(はんらん)し、それをあがなう技術が進展し、生存の舞台である自然の破壊は進み、世界は温暖化という、意識はされても確かな対処の方法を取りきれぬ危機に晒(さら)されている。そしてこの未曾有の問題への適格な対処を、私たちは過去のいかなる歴史からも学ぶことは出来はしない。

 私が三十年ほど前に聞いたあのブラックホールの発見者ホーキングの、「文明が進みすぎた惑星の運命は皆同じで、宇宙時間からすればほとんど瞬間的、地球時間からすれば百年たらずで生命は消滅するだろう」という予告は段々信憑(しんぴょう)性を帯びてきた。

 しかし現代における人間たちの絶対的な価値基準は、どうやらどこの国においても所詮(しょせん)物欲、金銭欲でしかありはしない。そして政治はそれに媚びざるを得ない。それを抑制出来るのは『神』しかあるまいが人間の作り出した『神』もまたこの事態に所詮沈黙せざるをえない。

 さらに厄介なのは、その肝心の神様が人間たちを角逐(かくちく)に追いこむ体たらくだ。人間が作り出したものなのに、いったん人間の手を離れると『神』はいたずらに絶対化され、その本質を逸脱してしまうようだ。私には、いわゆる一神教同士のいがみ合いがどうにも理解できない。多神教というか、むしろ氾神論社会ともいえるこの日本でいう『我が仏は尊し』というくらいの心情なら理解も出来るが、歴史的には同根ともいわれるユダヤ教、キリスト教、イスラム教の間の激しい摩擦は理解に遠い、というより『神』の立場からすれば許しがたいものに違いない。彼等は自ら造った『神』たちを自らの手で殺そうとしているのだろうか。

 しかしその背景にはやはり人間の歴史がもたらした所以(ゆえん)がある。宗教の独善がもたらした中世における、エルサレムの占拠を巡っての十字軍なる愚挙が歴史の中に長い尾を引いて、さらにキリスト教圏の白人によるイスラム教圏の民族への植民地支配がかの地での抑圧と憎しみを増殖し心理的に深い溝を造成してきた。そしてそれが今日の世界での激しい対立意識を加速している。自らの国に住む異教徒の女性の衣装を禁じるような愚かさ。

                   ◇

 私は、あのペンタゴンとニューヨークの貿易センター・ビルへの多発テロが行われた時ワシントンにいて、昨日訪れたアメリカの防衛中枢である国防総省が炎上するのを目にして強い感慨を禁じ得なかった。あの出来事を象徴する出来事がすでにかなり以前に在ったことを、アメリカ人の奢(おご)りからくる鈍感さは気づいてはいなかった。

 かつてベトナム戦争当時、アメリカの国民的英雄だったヘビー・ウエート級ボクシングの世界チャンピオンカシアス・クレイは、その名前をモハメド・アリと変えて従軍を拒否して有名となった。もっともベトナム戦争そのものが国内で否定されたことで彼は市民として復権したが、彼のとった行動の根底にあったものをアメリカの白人たちは見逃していた。

 私から見れば非寛容としかいいようのない一神教同士の角逐は、その現代的な要因としてのパレスチナ問題が第二次大戦後のイギリスの三枚舌の嘘(うそ)にも発していることもあって、とても容易には治まるまい。というよりも宗教的な信条としてテロによる死を恐れぬ、歴史を背にした死を賭しての報復の遂行を無上の光栄とする、襲われる側からすれば狂信的な、攻撃側の姿勢は今後も防ぎようあるまい。ことは長引こうが、結果は見えているような気がする。

 これは日米戦争の末期、飛行機を駆って自爆する神風攻撃に震撼(しんかん)させられたアメリカ艦船の乗員の恐怖にも似ていようが、基本的に異なるものがある。第一に日本の特攻隊員は神格化された天皇のために死んだものなど一人もいはしない。宗教的な狂信などはどこにもなかった。第二に、彼等の攻撃対象はあくまで敵艦であって、無差別に一般市民をも巻き添えにすることなど決してありはしなかった。その証左に、敗戦を知らずに最期に出撃した特攻機は、攻撃の目的のアメリカ軍基地で彼等が戦勝の祝賀のパーティーを開いているのを確かめ、近くの海に自爆している。

 いずれにせよ現代の世界は、文明の進展がもたらした環境破壊とそれを防ぎきれぬ人間たちの物欲の氾濫、そして一神教同士の憎しみ合い、いわば過去の歴史が育(はぐく)んだ歴史的事実からの報復を受けているといえるだろう。

 かつてアインシュタインもインドの詩人タゴールも、やがて行き詰まった世界を救うのは日本人の抱く独自の、人間的に優れた価値観だろうとはいってくれたが、金銭フェティシズムに溺(おぼ)れている現今の日本人に、はたしてその役割が果たせるだろうか