エッセイ  - 麗しの磐梯 -

「心豊かな日々」をテーマに、エッセイやスケッチを楽しみ、こころ穏やかに生活したい。

きけ わだつみのこえ  -文藝春秋「名著講義」-

2008-12-18 | 文芸
【布絵磐梯 かえる日もなきいにしえ】

文藝春秋の10月号から始まった新連載、藤原正彦の「名著講義」を楽しみにしている。
大学1年生を対象として開催しているた読書ゼミネール、毎週1冊の本を通して、学生との授業のエッセンスだ。
1回目は・新渡戸稲造「武士道」、2回目は・内村鑑三、3回目は・福沢諭吉「学問のすすめ」だった。
 それぞれかつて読んだ本だったが、新しく教えられることも多く、あらためていろいろ考えさせられている。

 連載の「名著講義」4回目の今回は、「新版 きけ わだつみのこえ」だった。
いまさらながら、戦争の愚かさ、死んでいった兵士の、親を、家族を思う気持ちに込み上げるものがある。戦後63年、風化しがちな戦争の悲惨さを忘れず、今、当たり前に生きている平和であることの幸せを再認識しなければならない。

この本は、多くの若者に読んで欲しいと思う。あらためて平和の意義を考える一つのよすがとなるだろう。
 「きけ わだつみのこえ」にみる多くの遺書から、自分を含めてその後の若者が当時の学生と比べ、如何に人間的に軟弱であることかと痛感している。

次回の「名著講義」が楽しみだが、渡辺京二著「逝きし世の面影」の予定、出来れば図書館で借りて読んで見たいと思っている。

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母へ最後の手紙 林市造(京大学生。昭和20年4月12日沖縄にて戦死。23歳)
『お母さん、とうとう悲しい便りを出さねばならないときが来ました。
 親思う心にまさる親心今日のおとずれなんときくらん、この歌がしみじみと思われます。
 ほんとに私は幸福だったです。わがままばかりとおしましたね。
 けれども、あれも私の甘え心だと思って許してくださいね。
 晴れて特攻隊員と選ばれて出陣するのは嬉しいですが、お母さんのことを思うと泣けてきます。
 母チャンが私をたのみと必死でそだててくれたことを思うと、何も喜ばせることができずに、安心させることもできずに死んでいくのがつらいです。
 私は至らぬものですが、私を母チャンに諦めてくれ、と言うことは、立派に死んだと喜んでください、と言うことは、とてもできません。けどあまりこんなことは言いますまい。
 母チャンは私の気持をよく知っておられるのですから。』
【「きけわだつみのこえ 日本戦歿学生の手記」(青年学生平和の会 発行:1949より)】

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(参)ネット:昭和毎日ニュースより
きけわだつみのこえ」刊行 1949年10月20日
1947年12月、東大の学生たちによって東大出身の戦没学生の遺稿集「はるかなる山河に」が出版された。この遺稿集が反響を呼び、全国から寄せられた戦没学生の遺稿75点からなる「きけわだつみのこえ」が刊行され、20数万部のベストセラーとなった。前途ある若者たちが戦争に疑問を抱きながらも押しつぶされ、迫りくる死をどう受け入れたか。本心をついに言えず死んでいった彼らの姿が読者の胸を打ち、戦後の平和運動に大きな影響を与えた。