明治33年10月18日万朝報
べったら市の前景気
明19日は日本橋大伝馬町のべったら市であるが、この市の売物である浅漬大根は例の際物師が下総種(千葉産)の下等の大根を仕入れ漬け込み1樽100本につき70銭内外の原価なのに、コウジと塩の代金を30銭と見積もり、まず100本1円内外の原価となるが、べったら市の売価は1本5~6銭位に売れる見込みなれば利益も多いので今年は浅漬売りも非常に多いだろう。(原価は五分の一なのだから)。また掛鯛、宮師等の連中は原料高値のため売れ行きを気遣い、従って例年より減少するようである。縁日の菊もこの市にて相場の定まるのだが本年は上出来ゆえ値段も安くなるだろう。
明治33年10月20日万朝報
昨夜は予記のごとく、大伝馬町のべったら市にて日本橋署にては当番非番の巡査総出にて警戒をして、大通りを除くほか要所要所で車を止めたが(馬車・人力車)、べったら市の全体から見れば予想通り浅漬売りは7割を占め、その他植木屋の菊、宮師、棒屋、荒物屋等を主な物とし肝腎の掛鯛はヒョウタン新道の角に1軒あったのみである。見世物は本町4丁目と大伝馬町1丁目の新道に一団となって囃していて、通旅篭町の大丸は店頭に幸福細工と羽衣を飾り、同所梅花亭では例年通り切山椒の大売出しで景気をあおっていた。浅漬の相場は上等1本5~6銭下等2~3銭、掛鯛は上80銭より中50銭以下20銭位だった。その人出は近年には珍しき混雑にて夜9時10時ころには最も雑踏していて警官は制服巡査のみでも5間(1間はふつう6尺(約1.82メートル)の長さ・9m毎ということ)に一人の割合で警備し、角袖巡査もこの中に混じっていてスリも容易に近づけず、大伝馬町・小伝馬町の馬車鉄道線路には同会社の車掌・取締・人夫等を多数配置して通行人を保護していた。警察扱いの事故はなかったと言う。
角袖巡査とは、明治時代、当時、制服を着ず和服を着ていた刑事巡査のことを「角袖巡査(かくそでじゅんさ)」や「角袖(かくそで)」と呼んだ。
「角袖」とは四角い形をした袖のことで、和服の袖が四角いことから和服を意味する。この「角袖」を逆さまにし、初めと終わりだけ取ったのが、「デカ」である
べったら市の前景気
明19日は日本橋大伝馬町のべったら市であるが、この市の売物である浅漬大根は例の際物師が下総種(千葉産)の下等の大根を仕入れ漬け込み1樽100本につき70銭内外の原価なのに、コウジと塩の代金を30銭と見積もり、まず100本1円内外の原価となるが、べったら市の売価は1本5~6銭位に売れる見込みなれば利益も多いので今年は浅漬売りも非常に多いだろう。(原価は五分の一なのだから)。また掛鯛、宮師等の連中は原料高値のため売れ行きを気遣い、従って例年より減少するようである。縁日の菊もこの市にて相場の定まるのだが本年は上出来ゆえ値段も安くなるだろう。
明治33年10月20日万朝報
昨夜は予記のごとく、大伝馬町のべったら市にて日本橋署にては当番非番の巡査総出にて警戒をして、大通りを除くほか要所要所で車を止めたが(馬車・人力車)、べったら市の全体から見れば予想通り浅漬売りは7割を占め、その他植木屋の菊、宮師、棒屋、荒物屋等を主な物とし肝腎の掛鯛はヒョウタン新道の角に1軒あったのみである。見世物は本町4丁目と大伝馬町1丁目の新道に一団となって囃していて、通旅篭町の大丸は店頭に幸福細工と羽衣を飾り、同所梅花亭では例年通り切山椒の大売出しで景気をあおっていた。浅漬の相場は上等1本5~6銭下等2~3銭、掛鯛は上80銭より中50銭以下20銭位だった。その人出は近年には珍しき混雑にて夜9時10時ころには最も雑踏していて警官は制服巡査のみでも5間(1間はふつう6尺(約1.82メートル)の長さ・9m毎ということ)に一人の割合で警備し、角袖巡査もこの中に混じっていてスリも容易に近づけず、大伝馬町・小伝馬町の馬車鉄道線路には同会社の車掌・取締・人夫等を多数配置して通行人を保護していた。警察扱いの事故はなかったと言う。
角袖巡査とは、明治時代、当時、制服を着ず和服を着ていた刑事巡査のことを「角袖巡査(かくそでじゅんさ)」や「角袖(かくそで)」と呼んだ。
「角袖」とは四角い形をした袖のことで、和服の袖が四角いことから和服を意味する。この「角袖」を逆さまにし、初めと終わりだけ取ったのが、「デカ」である