年寄りの漬物歴史散歩

 東京つけもの史 政治経済に翻弄される
漬物という食品につながるエピソ-ド

明治の添加物報道

2007年02月15日 | 福神漬
明治42年11月2日 大阪朝日新聞

中国のハルピンで暗殺された伊藤博文公の国葬が明治42年11月4日に行われるため、新聞記事はその準備や彼の経歴の記事が多く、突然その中に醤油の事件の記事が出てきた。

醤油にも劇薬
▲ (大阪)警察本部の検挙
先に清酒中に防腐剤として劇薬のホルマリンを使用するものあり、その筋の知るところとなり、多量の廃棄を命じられたるが近頃に至り某会社の製造販売する醤油中にも甘味をつけるために薩可林(サッカリン)を用いたる上、さらに防腐剤としてホルマリンを使用していると警察本部において探知し二三日前より衛生課の二三の技師は(大阪)西署その他と協力して販売店につき現品押収の上分析に付したるがその結果はなお不明なるも製造元はこのために大恐慌を起こし、一方現品の隠匿に努めると同時に『サッカリンその他を混入したものはわずかに販売店に配布したる見本品7樽に限りにして、これは顧客に一々試味を受ける際に甘くなくては悪い品のように思われるため止む得ず混入したものであって、ひとつの販売政策に過ぎず、その証拠に他の商品及び倉庫貯蔵の何千万石には一滴も左様のものは混じっておらず、何分将来の信用上にも重大の関係を及ぼすことなれば十分秘密の間に調査されたし』云々を半ば自白的に願い出でたるも、もちろん信用すること出来ねば(11月)一日技師数名は製造場に臨検した。一説には会社の製造法が不備のため多数の腐敗を見るに至ってこれにホルマリンを入れて無理に腐敗を止めて、年末前の売れ行きを見込んで法外の安値で発売を試みたるものと言える。とにかくこうも飲食物に劇薬や有害物が放り込められるようでは少しも安心することは出来ず当局者の厳重な取り締まりが望ましい。

解説
その筋とは明治の当時食品衛生の取り締まりは警察の管轄であった。技師は衛生を取り締まる警察の技師。
薩可林(サッカリン)は東京では甘精と表記されている。

コメント
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