明治42年11月4日 東京朝日新聞
甘精使用について(サッカリン)
醸造試験所某技師は大阪警察本部の検挙しつつある甘精事件について語って言う。
日本醤油醸造株式会社が甘精をその製品醤油中に入れたということはもとより着味に用いたるは明らかなリ重大問題である。通常醤油の着味はとしては野田(千葉県)等にては、飴(グリコース)を用い着色用としては焼糖(カラメル)を用いつつある次第にて日醤も同じく飴・グリコースを用いならば今回の失態は無かっただろう。思うに現今甘精の輸入税は百斤60円にて随分高価に当れば到底飴や砂糖の代品として儲かるべくものにあらざるに、もし日醤が事実サッカリンを使用せしば数年前に見越し輸入された残品であるだろう。何れにせよ欧州諸国と同じ本邦にても法律をもって飲食物に混入を禁じている以上あえてその禁を犯したるは日醤会社の大失態と言わざるを得ないという。而してサッカリンが果たして衛生上有害であるか否やは未解決の問題にて、たとえ有害でなくとも、また滋養物にあらず、ことにサッカリン使用増加は各国ともその財政上少なからざる打撃を蒙るものなればこの点よりこれの使用を禁じるを得策とする云々。
サッカリンには高価な輸入税がかけられたので大量の駆け込み輸入があった。
甘精使用について(サッカリン)
醸造試験所某技師は大阪警察本部の検挙しつつある甘精事件について語って言う。
日本醤油醸造株式会社が甘精をその製品醤油中に入れたということはもとより着味に用いたるは明らかなリ重大問題である。通常醤油の着味はとしては野田(千葉県)等にては、飴(グリコース)を用い着色用としては焼糖(カラメル)を用いつつある次第にて日醤も同じく飴・グリコースを用いならば今回の失態は無かっただろう。思うに現今甘精の輸入税は百斤60円にて随分高価に当れば到底飴や砂糖の代品として儲かるべくものにあらざるに、もし日醤が事実サッカリンを使用せしば数年前に見越し輸入された残品であるだろう。何れにせよ欧州諸国と同じ本邦にても法律をもって飲食物に混入を禁じている以上あえてその禁を犯したるは日醤会社の大失態と言わざるを得ないという。而してサッカリンが果たして衛生上有害であるか否やは未解決の問題にて、たとえ有害でなくとも、また滋養物にあらず、ことにサッカリン使用増加は各国ともその財政上少なからざる打撃を蒙るものなればこの点よりこれの使用を禁じるを得策とする云々。
サッカリンには高価な輸入税がかけられたので大量の駆け込み輸入があった。