年寄りの漬物歴史散歩

 東京つけもの史 政治経済に翻弄される
漬物という食品につながるエピソ-ド

11月4日続報 大阪朝日スクープのまとめ

2007年02月26日 | 福神漬
明治42年11月4日 大阪朝日新聞
○ 日本醤油会社の混乱
由々しき問題となる
日本醤油会社の製品に薩加林(サッカリン)に混入発売したことは大阪警察本部衛生課に於いて探知し横堀7丁目大阪出張所及び幸町通2丁目の倉庫に貯蔵の現品千数百樽押収封印をほどこした上分析試験中の様子は昨日記事にしたとおりであるがその後の様子を更に報道すべし。
△ 終に白状する
検挙を受けたため大騒ぎとなり急遽尼崎工場に参集した取締役兼主任技師鈴木藤三郎氏は訪問の記者に向かって「断じて工場に於いてサッカリンを混入したような事は無く。大阪一部の顧客の嗜好に合わせて出張所に於いて少量のものに混入したものに過ぎない」と語った。日醤幹部は3日午前大阪警察本部に出頭しあくまで見本品に投入したに過ぎずと弁明したが当局者の分析試験により在庫品より次々と検出しはじめたので,ついにごまかすことできず午後に至り第一号50樽、第二号80樽、第三号80樽、第四号400樽,分銅印201樽、扇印65樽、亀甲印225樽だけに大阪に於いて甘味を付けるためサッカリンを入れた。尚、在庫の上等品松印62樽、富士印145樽には断じて混入していないと申しでたが当局者は念のためこれも分析したところやはり同様のサッカリンを
検出したので言葉を曖昧にして処罰を免れんとするも最早できず、利害を説いて事実の供述を迫ったところ、夜に入ってついに隠すことできず、尼崎醸造場に於いてxx監督技師自らサッカリンを全部に混入した旨初めて白状した。
△ 処分方法の上申
当局者が最初検挙に着手した時はこのような大げさなことになると思われず調べが進むほど次第に大きくなって結局尼崎醸造場に於いて混入したものと判明したもので取締上大阪在庫品のみで事件を収めるべきでないと、兵庫県警本部に電報を打って事件を報知すると同時に内務省に不正品の処分方法を上申したもようである。方針が確定次第直ちに会社在庫品のみならず市中府下の一般小売店にある醤油もことごとく押収するはずという。
△ 如何にするか
内務省が大阪警察本部よりの報告によって全国に販売した醤油に対してどのような処分方法を命じるか注意する問題となるが明治34年十月内務省令第31号「人工甘味質取締規則」には「サッカリンの他これに類する化学的薬品にして含水炭素にあらざるもの販売用に使用してはいけないとした。これに違反したとき、明治33年制定した「飲食物その他衛生上危険の物品を取締規則」により行政庁に於いて製造販売その他を禁止することをできるとある。法律によって多分廃棄処分となるだろうから会社の販売する醤油が数万石あるというので非常に多大な損害となるだろう。
△ サッカリンの購入先
会社はあくまでもこのことを秘密にするため、サッカリンの購入先について余程注意を払ったと見えて、ことごとく尼崎工場には東京に本社より直送し、これをxx技師が秘密薬と称して厳重に金庫に入れておき同技師の手によって混入したので同工場で作業している労働者も知らなかった。
△ 第二の分析試験
一方サッカリンのほうは嫌疑が確定したのでこの処分が決まるまで更に本部は着色料の有害無害、防腐剤の有無をも試験に付すはずだがホルマリンは今のところ嫌疑に止まり、まだ解らない状態である。
△ 会社の状況
同社の資本金一千万円(二十万株)にして内350万円(一株17円50銭)が払い込み済である。しかし尼崎工場の建設に多額の固定資本を要し、一方製品が不完全にして、九州・山陰・中国その他各地へ送り出した醤油が種々の欠陥によって返品が来たため、資金繰りが苦しくなり重役間で紛争がおこった。社内の内紛と製造上の責任問題で社長を辞し、大株主毛利公爵家令田島信氏が社長となり某銀行より多額の借り入れを為し経営を続けている状態である。何分醤油醸造期間が短いため発酵が十分とならないので、原料麦の臭いがし、また甘味も乏しく売れ行きがよくないのでついに不正手段を使ったもので窮状がわかり哀れなものである。

スクープ記事を書いた記者もことの成り行きが大きくなって行くので驚いている様子が見える。この事件の始末が平成の(福神漬)の表示に影響しているのである。

コメント
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