明治42年11月3日東京朝日新聞
不正醤油検挙
日本醤油醸造尼崎工場1600樽押収さる
日本醤油醸造は第二工場を摂津尼崎におき8万5千坪広大なる敷地内に建設した工場に於いて一ヵ年60万石以上製造の予定にて醸造をしているが同工場に於いて製造される醤油には腐敗品が多く各地元売所販売者より返還されるものあり、会社に於いてこの処分方法に困り、夜中密かに職工二名にてハシケに積み尼崎沖合いに投棄したために海面一体茶色を呈しいるとの風説もあったほどだった。大阪警察部は3~4日前某署より提出の小分醤油を分析すると多量のサッカリンを検出したので直ちに取り調べると日本醤油醸造株式会社より発売と判明した。本部にては小売業者の行為かも知れずと同時に多方面を取り調べるが至る所、同様の不正品を発見したので全く同社より発売の際すでに混入した物との見込みをつけ更に大検挙をなさんとせる際、早くも同社重役はこれを感知して非常に驚愕し、早速本部へ出張の上、見本品7樽に限り混入したる旨自白し何分目下売り出し中にて少なからざる打撃を受けることなれば秘密にせられたき旨を嘆願したる由なるが本部においてはこの申し状の疑いをいだき、内密に他方面を取り調べしにやはり同様のサッカリンを検出したれば今は猶予ならずと一日夜より二日朝にかけてxx警部は三名の刑事と共に西区幸町通二丁目の貯蔵庫及び横堀7丁目の大阪出張所に臨検し合計1600余樽この代金約一万円を押収してことごとく封印を施して引き上げ、目下分析試験中である。なおサッカリンの外に何らの防腐剤を混入した見込みなるものホルマリンかどうかは分析中の結果を見れば判明するだろう。
11月3日は明治時代は天皇誕生日で大阪の朝日新聞のスク-プで東京の朝日新聞は要約された記事となっている。
不正醤油検挙
日本醤油醸造尼崎工場1600樽押収さる
日本醤油醸造は第二工場を摂津尼崎におき8万5千坪広大なる敷地内に建設した工場に於いて一ヵ年60万石以上製造の予定にて醸造をしているが同工場に於いて製造される醤油には腐敗品が多く各地元売所販売者より返還されるものあり、会社に於いてこの処分方法に困り、夜中密かに職工二名にてハシケに積み尼崎沖合いに投棄したために海面一体茶色を呈しいるとの風説もあったほどだった。大阪警察部は3~4日前某署より提出の小分醤油を分析すると多量のサッカリンを検出したので直ちに取り調べると日本醤油醸造株式会社より発売と判明した。本部にては小売業者の行為かも知れずと同時に多方面を取り調べるが至る所、同様の不正品を発見したので全く同社より発売の際すでに混入した物との見込みをつけ更に大検挙をなさんとせる際、早くも同社重役はこれを感知して非常に驚愕し、早速本部へ出張の上、見本品7樽に限り混入したる旨自白し何分目下売り出し中にて少なからざる打撃を受けることなれば秘密にせられたき旨を嘆願したる由なるが本部においてはこの申し状の疑いをいだき、内密に他方面を取り調べしにやはり同様のサッカリンを検出したれば今は猶予ならずと一日夜より二日朝にかけてxx警部は三名の刑事と共に西区幸町通二丁目の貯蔵庫及び横堀7丁目の大阪出張所に臨検し合計1600余樽この代金約一万円を押収してことごとく封印を施して引き上げ、目下分析試験中である。なおサッカリンの外に何らの防腐剤を混入した見込みなるものホルマリンかどうかは分析中の結果を見れば判明するだろう。
11月3日は明治時代は天皇誕生日で大阪の朝日新聞のスク-プで東京の朝日新聞は要約された記事となっている。