年寄りの漬物歴史散歩

 東京つけもの史 政治経済に翻弄される
漬物という食品につながるエピソ-ド

福神漬物語 22

2009年11月27日 | 福神漬
明治42年12月19日東京朝日新聞
醤油早醸造について
日本醤油醸造会社が醤油早造りの方法を考案し、法律で禁止していたサッカリン又はホルマリンを混入し大失敗を招いたがこれに関して世間で醤油王として知られる千葉県葛飾郡野田町茂木啓三郎氏(キッコーマン)の談話によれば同会社の今回のことは醤油業界の発展から見るとき、むしろ大いに悲しむべきことだと言う。昔から醤油の早造りは業界の長年の課題にてこのため幾多の研究に失敗し、ついには再起することが出来なかった例が多い。然れどもなお研究を重ねる余地があることは勿論、これらは国家経済上より公衆衛生上より、また業界進歩の上より常にこの研究を怠らず、而して私は機械よりも製麹(せいきく)及びこれが発酵熟成の原理に向かって研究を進め従来熟成期間3年の気候を一年間に短縮し、一年の温度を一日に短縮し種々の試験をした結果一日の間に春(午前3時より同10時まで)夏(午前11時より午後2時半まで)秋(午後2時半より同8時半まで)冬(午後8時半より翌午前3時まで)の四期あるのを発見しこの間において製麹上におけるバイキンの発生及びその活動作用・もろみの熟成作用を研究してバイキンは一昼夜にて発生し、発酵は三ヵ月間にて良く、空気乾燥及び融和作用を完成し得ることを発見した。而して、その風味は主として製麹は原料及びその限度の如何により熟成作用によって五味(酸・甘・渋・辛・苦)を備えて初めて人口に美味を生じさせるものを発見し、これを従来のゆっくりと熟成してその五味の自然作用を完全するものなるを知れリ。由来世に五穀と称する大豆・米・小麦・大麦・粟の五種はよく上記の五味を備えて醸造に適しているものであるが稗のごときは甘にあらずば腐・小豆・インゲン・エンドウのごときもまた甘と腐との二つを出でず全く五味を欠きて醸造に適せざる物なり。而して麹を養うにはその温度・人体の温度を平温にしてバイキンまた人体より以上の温度を要求せずしてよく発生活動をし、炭酸ガスと空気の配分によりよりよく五味を備え熟成の後は圧搾によって苦味を去り火入れによって渋を去ることによって始めて人の口に上るを得るものなれば予はこの方法によって早造りを試み良好なる成績を収めつつあれど尚より以上有益なる発明の出でんことを待ち望むものなり云々。

野田の醤油史 市山盛雄
 鈴木藤三郎によって作られた醤油は失敗したが旧来の醤油醸造業を近代化するきっかけとなった。

彗星のように急に現れて皆の話題をさらい、直ぐに消えた日本醤油醸造株式会社の事件は今では知る人も少なく醤油業界史にもほんの2~3行の記載となっているが、その影響は現在のJAS規格の『しょうゆ』と『福神漬』に残っている。
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