透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

春を感じた日

2017-02-26 | A あれこれ

 オオイヌノフグリが咲き始めたわけでもなく、ウグイスの初鳴きを聞いたわけでもない。けれど、22日に春を感じた。

季節のうつろいは連続的で、今日から春!などというデジタルチックな線引きなんてできない。でも、春を初めて感じる日はある。空の色、雲の様子、山肌の色、稜線のかすみ、陽ざし・・・。微かな、幽かな自然の変化。

過去の記録を見ると春を感じた日はほぼ一致している。これは不思議。別に22日という日を記憶しているわけでもない。

動物行動学者・日高敏隆の『春の数えかた』によると生き物たちは皆それぞれの方法で三寒四温を積算し、季節を計っているという。

もしかしてヒトも? もしかして私も?


2006年/3月08日
2007年/2月22日
2010年/2月22日
2013年/2月23日
2015年/2月24日
2017年/2月22日


― 貴重な写真

2017-02-21 | A 火の見櫓っておもしろい




■ 移動式クレーンなどまだ普及していなかった昭和2,30年代には火の見櫓をどのようにして建てていたのでしょうか。

機械はないが知恵がある

ある方から火の見櫓を建てている様子を写した貴重な写真をお借りしました。1955年(昭和30年)に撮影された数葉の写真には火の見櫓に掛けたワイヤをウインチを使って引き、横倒しの状態から起こしている様子や、梃子(てこ)を使って櫓の脚元を動かしている様子が写っています。

火の見櫓のことをまとめて本にしたいということお伝えし、写真の使用を許可していただきました。こうなると途中でやめるわけにはいきません。お借りした写真はネット上で転載されないように本にのみ掲載することにします(悪しからず)。


火の見櫓を引き起こすために建てる親柱や滑車の使い方、トラ(控え綱)の張り方などを理解した上で原稿にするつもりです。


カテゴリー

2017-02-19 | A あれこれ

■ ブログのカテゴリーを追加・変更して 本に関する記事を分けた。今までは建築と本を同じカテゴリーにしていた。

ブログを始めた頃は建築と本のことだけを書こうと思っていて、特にカテゴリーなど意識していなかった。それが次第に色んなことを書くようになって、カテゴリーを追加して対応していたけれど、依然として建築と本を同居させたままにしていた。記事が増えてくると、新たにカテゴリーを設定して記事を分ける作業は大変で、半ば諦めていたのだが、急に思い立って作業をした。

今まで分けなかった言い訳として、建築と本は共に文化的な営みの所産という点で共通しているし、建築と本の寿命の長短は国の文化度をはかる有効なものさし(私の持論)ということも共通しているから同じカテゴリーで構わない、と考えていた。しかし、それはあまりに苦しい言い訳。

記事の一覧を表示させ、本のことについて書いたことがわかる記事を新たなカテゴリー「本が好き」に移動したが、タイトルだけでは判断つかない記事も相当あり、結局すべての記事をメモを取りながら閲覧して移動作業をした。これで、「もやっと」が解消した。まだ「すっきり!」とまではいかないが・・・。


 


734 コンクリート柱の火の見櫓

2017-02-18 | A 火の見櫓っておもしろい




734 岩手県遠野市遠野町の火の見櫓

 昨日(17日)はいつもの通り週末のサード・プレイスへ。そこで久しぶりにKさんと会った。仕事で遠野市に行ってきたという彼が火の見櫓の写真を撮ってきてくれた。

屋根と見張り台はごく一般的なタイプだが、なんと櫓がコンクリート製の柱3本で構成されている。これは珍しい。本当に火の見櫓は千差万別、いろんなものがある。

いつか東北火の見櫓めぐりをしたいものだ。




 


チョコ

2017-02-14 | A あれこれ

  



 バレンタインデーにチョコをわざわざ送ってくれたのは大阪旅行に参加した女性ふたり。チョコレートにはポリフェノールが多量に含まれていて、血圧を下げる効果があるとテレビ番組で見た。このことをふたりとも知っていて、健康を気づかってくれたのかもしれない。ボケないで旅行の幹事をこれからも続けて、というメッセージなのかも。〇さん、Sさん ありがと。


 


「天守再現!江戸城のすべて」

2017-02-13 | A 読書日記


『天守再現!江戸城のすべて』三浦正幸監修/宝島SUGOI文庫

■ 久しぶりに書店で本を探した。城の本をまとめたコーナーでこの本を手にした。帯に小さく**史上最大規模の江戸城、その内郭と外郭/安土城、名古屋城ほか名城紹介**とある。

パラパラとページをめくって驚いた。復元CGや写真、立面図、断面図等で江戸城はもちろん、広島城、豊臣大坂城、松江城、姫路城、彦根城、駿府城等が紹介されているが、それらの図が実に美しい!

別に城マニアでもないが、買い求めた。文庫本とはいえ、この充実ぶりで700円(税込み)は安い。

真っ先に紹介されているのは安土城天主(現在では「天守」が正式な学術用語、当初は天主と書かれたという注がついている)で、復元南立面図が載っている。本文を読まなくて、図を見て説明文を読むだけでも楽しい。

ずっと後の方には石垣の反りと勾配、石割りの手順や石の積み方も紹介されている。

今週はにわか城マニアになって、この本を見る、いや読む。


 


 


「天災から日本史を読みなおす」

2017-02-09 | A 読書日記


『天災から日本史を読みなおす 先人に学ぶ防災』磯田道史/中公新書

 この国は災害列島だ。はるか昔から幾度となく地震や津波に襲われ、甚大な被害を被ってきた。本書で磯田さんは残された史料を読み込んで、例えば天正地震のとき戦国武将がどう対応したか、伏見地震のときはどうであったか、を分かりやすく解説し、そこから今に活かせる教訓を示している。

例えば**三〇〇年前のこの古文書は我々に物語る。老人・子どもは災害時の低体温症にとくに弱いこと。年長者は責任ある言動をしなければならないこと。疲労困憊時には弱気になり判断がにぶること。我々はこれらを自覚して、老いも若きも、最後まで避難を投げないことが大切だ。**(68頁)のように。これは宝永地震が招いた津波に襲われたとき、避難するさまを記録した「柏井氏難行録」という史料を読み解いて得た教訓。

磯田さん小学生の時から歴史学者になりたいと思っていたそうで、地震や津波の史料を蒐集すること、20年。本書にはさまざまな史料が示され、その成果が活かされている。

大変興味深い本に出合った。今週末に読みたい。この本を薦めてくれたT君に感謝。


第63回 日本エッセイスト・クラブ賞受賞


文学作品に出てくる火の見櫓

2017-02-05 | A 読書日記



 吉村 昭氏には歴史上の出来事を扱った作品が多い。資料を当たり、例えば事件・事故当日の天気など、細部まで調べ上げて作品化している。

『関東大震災』文春文庫は大正12年9月1日に関東地方を襲った大地震について克明に描いている。

当時も火の見櫓はあったから、この作品の中にも出てくるのではないか、そう思って頁をめくっていて、次のような件をみつけた。**麹町区第一消防署勤務であった林錠太郎氏の回想によると、その日も若い署員が望楼に上がって火災発生を監視していた。
正午少し前、林氏が突然起った地震で署外に飛び出し望楼を見上げると、鉄骨作りの望楼が左右に激しく揺れている。倒れる恐れがあると思ったが、望楼は柔軟にしなうだけで折れる気配はなかった。(後略)**(50頁)

これほど具体的な描写に出合ったのは初めてだ(望楼は火の見櫓の別称)。

火の見櫓が出ている有名な文学作品は、何作もあるかもしれない。島崎藤村の『夜明け前』にも出ていた。(過去ログ

 宇江佐真理さんの髪結い伊三次捕物余話「心に吹く風」の2編目の「雁が渡る」には火の見櫓が主要な舞台として出てくる。(過去ログ2
 
北杜夫の代表作『どくとるマンボウ青春記』にも松本市内にあった火の見櫓が出てくる。自室のカオスな書棚から、この本を探し出せなかったが。(過去ログ3


 


「江戸の都市力」を読む

2017-02-01 | A 読書日記



■ 『江戸の都市力 ― 地形と経済で読みとく』鈴木浩三/ちくま新書を読み始めた。

書店で新書のコーナーで目に入ったこの本、全く迷うことなく直ちに買い求めた。あれこれ迷って、結局何も買わないこともあれば、今回のようなこともある。

カバー折り返しに次のような紹介文がある。**繁栄を誇った未曾有の大都市「江戸」は、どのように造られ、どのようにして人々の暮らしを支えていたのか。(中略)本書は、江戸の歴史を地理、経済、土木、社会問題など多視点から見ていくことにより、その本質、発展の秘密に迫る一冊である。**

また、「はじめに」には**この本のテーマは、徳川家康が入府してからの「江戸づくり」である。ハードとソフトのインフラが有機的に結びつきながら整っていく様子、まち造りがもたらした経済の急拡大、出来上がった都市を管理する仕組みなど「江戸の都市力」と、その源について話を進めていく。**と本書のテーマが明確に示されている。このような本は大概論旨が明確で理路もはっきりしているから、読みやすく分かりやすい。

第4章は「幕府の体制固め -水運網と支配システム」となっていて、その内に「3 明暦の大火によって完成した百万都市の骨格」というヤグラーにとって興味深い論述もある。

今年は火の見櫓に関係する記述のある本も読まなくてはならない。





ブックレビュー 1701

2017-02-01 | A ブックレビュー

■ 時の流れは速い。今日から2月。1月に読んだ本は7冊。

『吾輩は猫である』夏目漱石/角川文庫

漱石が39歳の時(1906年)に発表したデビュー作。『猫』は今回で4回目かな? 苦沙弥先生のところに棲みついた猫による人間観察、社会批評。

名前のない猫の飼い主・苦紗弥先生のモデルは漱石自身。そして猫は苦紗弥先生、すなわち漱石を客体化して観察するもうひとりの漱石。ふたつの視点を設定したところが漱石のスゴイところだ。

ストーリーらしいストーリーがないから、おもしろいと思わない人も多いかもしれない。


『昨日のまこと、今日のうそ』宇江佐真理/文春文庫

久しぶりに読んだ髪結い伊三次捕物余話シリーズ。巻を重ね、時は流れ、伊三次とお文さんは今や脇役で主役は息子たちの世代に。**互いに連れ合いに恵まれた子供達の姿を見るのも伊三次の楽しみだった。さて、子供達はどんな女房や亭主を持つのだろうか。**(「花紺青」180頁)と思ったりする。

伊三次とお文さんが一緒になるのか、ならなのか、と気をもみながら読んだのがいまや懐かしい。

シリーズ全16作品の内、文庫化されていないのは2作品のみとなった。今年中に文庫化されるかもしれない。早く読みたい気もするが、このシリーズを読み終えてしまうのが寂しいような気もする。


 『空が青いから白をえらんだのです 奈良少年刑務所詩集』寮美千子・編/新潮文庫

刑務所で行われた社会性涵養プログラムから生まれた詩57編。詩の力、ことばの力ってすごい、と再認識した。

あたりまえ

食べられる
眠れる
歩ける
朝を迎えられる
母がいる
みんな あたりまえのこと

あたりまえのことは
あたりまえじゃないんだと

あたりまえのなかのしあわせに気づかずに
薬を使って偽物のしあわせを求めたぼくは
いまやっと 気がついた

あたりまえの しあわせ
あたりまえが しあわせ

(80頁)

そうだよね、日々あたりまえの暮らしを続けられることが幸せなんだよね。


 『科学報道の真相』瀬川至朗/ちくま新書

メディアは権力や権威に阿ることなく常に冷静な目をもって対峙できるかどうか。


『空海』高村 薫/新潮社

804年の夏、遣唐使船4隻が備前国田浦を出港。漂流の末、唐に漂着したのは空海と最澄が乗った2隻だけだった。
空海が唐に着いたのは日本を出発してから半年後だった。

唐の青龍寺(しょうりゅうじ)で恵果(けいか)は両部の大法を伝承すべき弟子として千人以上の門下の中から空海に白羽の矢を立てた。この事実を高村 薫は運命、もしくは奇跡と呼ぶ以外にない。と書いてる。

運命の邂逅からわずか半年後、恵果は入滅。ということは入唐が半年遅れていたら恵果に会うことはできなかった。綱渡りの密教相承だった。

そして帰国後、空海の良き理解者となる嵯峨天皇が即位する。 本当に空海は強運の持ち主、そして天才だ。

京都に行く機会がったら、東寺にまた行きたい(過去ログ)。


『文庫解説ワンダーランド』斎藤美奈子/岩波新書

文庫本の巻末の解説は**読者を興奮と混乱と発見にいざなうワンダーランドだった!痛快極まりない「解説の解説」が幾多の文庫に新たな命を吹き込む。**(カバー折り返しの紹介文)

斎藤さんのするどい分析に、なるほど! 

『江戸の災害史 徳川日本の経験に学ぶ』倉地克直/中公新書

既に書いたことを繰り返す。中公新書は中身が濃い。この本も例外ではなかった。江戸時代には思っていた以上に地震や火事、飢饉が頻発していた。

この本に「宝暦の飢饉」が紹介されている。

宝暦5年(1755年)、冷害で大変な被害が出た東北。弘前藩では過去の経験から領内に米を備蓄していた。そのため餓死者をほとんど出さなかった。それに対し、盛岡藩や八戸藩では凶作の兆しが見えているにもかかわらず、江戸への廻米を強行したために、盛岡藩領では5万人!、八戸藩では3千人もの餓死者が出たという。

領主の判断で被害がこんなにも違うのか、と驚く。そして、八甲田雪中行軍遭難事件を思い出した。


 今年は月に1冊くらいのペースで宇江佐さんの作品を読みたい。書店で次に読む作品を探そう。