透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

岡谷蚕糸博物館

2023-12-24 | B 繰り返しの美学
 製糸業を抜きには語ることができない長野県岡谷市の歴史。




その岡谷にある岡谷蚕糸博物館で昨日(23日)の午後に開催された齊藤有里加さん(*1)の講演「150年の眠りから目覚める・・・! 勧工寮葵町製糸場図面 3D復元プロジェクト報告」を聴いた。

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このプロジェクトは東京農工大学の博物館収蔵庫から2017年に見つかった勧工寮葵町製糸場の諸図面(繰糸部の機構、水車、竈、煙道など)41点を読み解いて3D化するというもので2019年から20年にかけて行われた。

葵町製糸場は現在の東京都港区虎ノ門(虎の門病院が立っている場所)に建設され、1873年(明治6年)に開業した。その前年、1872年に富岡製糸場が開業している。共に官営の製糸場。明治初期とはいえ、東京のど真ん中に製糸場があったことは知らなかった。

博物館で2024年2月18までの会期で企画展が開催されていて、展示室にはこのプロジェクトの成果である葵町製糸場の3D画像と1/100の模型、それから大学博物館収蔵庫で見つかった絵図(図面)などが展示されている。私が興味を持ったのは製糸場の模型で、見つかった図面の中に製糸場の平面図と立断面図があり、その図面に基づいて作られた。

建物は木造、小屋組みは1間(約1.8m)ピッチ(スパンは5間、約9mだと思われる)で同形のフレームが並んでいて美しい。これぞ繰り返しの美学。





ここで繰り返しの美学の復習。

建築の構成要素そのもののデザインには特にこれといった特徴が無くても、それを直線的に、そして等間隔にいくつも配置すると、「あ、美しいな」とか、「整っていて気持ちがいいな」とか、そういった感情を抱く。このような経験は私だけの個人的なものではないだろう。シンプルなルールによって、ものが秩序づけられた状態・様子を脳が歓迎しているのだ。

建築構成要素を直線状に等間隔に並べるとそこに秩序が生まれ、それを美しいと感じる。これを私は「繰り返しの美学」と称している。

製糸業が盛んだった岡谷にあるこの博物館には繰糸機が何基も展示されていて、その進化をみることができ、なかなか興味深い。博物館には宮坂製糸所が併設されていて、実際に繰糸の様子を見ることができる。




機械化されてもすることは手作業と変わらない。



博物館のアプローチ沿いの繰り返しの美学な仕掛け。かつてこの場所にあった農林省蚕糸試験場岡谷製糸所ののこごり屋根をモチーフにデザインされた。


岡谷蚕糸博物館には今回初めていった。機会があれば再訪したい。

*1 東京農工大学科学博物館 特任准教授

飛騨高山の民家

2023-06-12 | B 繰り返しの美学
 高山ウルトラマラソン 国府町に設けられた第4関門はスタート地点から74.1kmのところにあります。この過酷な100kmマラソンにチャレンジした友人を第4関門で待つ間、しばらく時間がありました。こちらは最短コースを車で移動、友人はまわり道コースを走って、ですから。で、近くを歩いてみました。

高山の民家の特徴は、写真の通り、垂木や持出し梁、持送りの木口を白く塗ってあることです。等間隔に部材が並ぶこの様はリズミカルで美しい「繰り返しの美学」です。







ゴールまであと25.9km、頑張れS君!
S君はこの後、制限時間内にゴールした。すばらしい! 

道の駅 尾瀬かたしな

2022-07-12 | B 繰り返しの美学

 建築の構成要素そのもののデザインには特にこれといった特徴が無くても、それを直線的に、そして等間隔にいくつも配置すると、「あ、美しいな」とか、「整っていて気持ちがいいな」とか、そういった感情を抱く。このような経験は私だけの個人的なものではないだろう・・・。シンプルなルールによって、ものが秩序づけられた状態・様子を脳が歓迎しているのだ。

建築構成要素を直線状に等間隔に並べるとそこに秩序が生まれ、それを美しいと感じる。このことを「繰り返しの美学」と称して時々ブログで取り上げてきた。

ここは利根郡片品村にある道の駅 尾瀬かたしな。等間隔に配置した梁の先を方杖が支えている。上述した「繰り返しの美学」の構成。直線ではなく緩やかにカーブしているが、それで条件に合致していないと判断することもないだろう。実に美しい構成だ。

朝の8時前に嬬恋村に入り、いくつかの市町村をめぐって、午後4時半頃ようやく国道120号添いにある片品村役場に到着した。役場の隣の道の駅で少しばかり土産を買い求めた。





道の駅 尾瀬かたしなの食堂で提供している丸沼ダムカレー。残念ながら土日祝日限定だった。



この尾瀬大橋(斜張橋、橋長230m)を通過して国道401号を北上した・・・。


越本はこの橋を渡った先にある。

追記(2022.08.12) 全国に道の駅は1198駅ある(8月に4駅追加された)。


信州まつもと空港

2022-05-05 | B 繰り返しの美学

 今日は5月5日、こどもの日。信州スカイパークのターミナルゾーンで早朝ウォーキング。ちょっとコースアウトして空港ターミナルへ。


長いキャノピー、久しぶりに見た繰り返しの美学。

建築構成要素を直線状に等間隔に並べるとそこに秩序が生まれ、それを美しいと感じる。シンプルなルールによって、ものが秩序づけられた状態・様子を脳が歓迎しているのだ。このことを「繰り返しの美学」と称して時々ブログに取り上げている。


 


繰り返しの美学

2021-04-05 | B 繰り返しの美学

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松本市島立にて 撮影日2021.03.27

 「繰り返しの美学」でこの塀を取り上げる。石積み基礎の上の塀は腰が押縁下見板張り、壁上部が漆喰の真壁。等間隔に並ぶ柱から持ち出している腕木が繰り返し感を強調している。それにしても立派な塀だ。


 


松本駅お城口のキャノピー

2021-02-23 | B 繰り返しの美学



 松本駅のお城口(東口)のキャノピーに注目。4本のステー(つっかい棒)にワイヤーを張った梁が8本等間隔に並ぶ、繰り返しの美学。上の写真だとすっきりしているが、近くで見ると



こんな様子。下から2番目のステーの通りだけ下端をワイヤーで繋ぎ、両端には斜材を入れている。ガラスをこの構造フレームに直接載せることはできなかったんだろうなぁ。これ以上のスッキリは、無理か・・・。


 


繰り返しの美学

2021-02-21 | B 繰り返しの美学

 建築の構成要素そのもののデザインには特にこれといった特徴が無くても、それを直線的に、そして等間隔にいくつも配置すると、「あ、美しいな」とか、「整っていて気持ちがいいな」とか、そういった感情を抱く。このような経験は私だけの個人的なものではないだろう・・・。シンプルなルールによって、ものが秩序づけられた状態・様子を脳が歓迎しているのだ。建築構成要素を直線状に等間隔に並べるとそこに秩序が生まれ、それを美しいと感じる。このことを「繰り返しの美学」と称して時々ブログに取り上げてきた。

このように書いて国宝の旧開智学校の屋根棟を載せたのが2019年の6月のことだったから、1年半以上間が空いたことになる。



久しぶりに取り上げる繰り返しの美学は長野県生坂村の道の駅「いくさかの郷」のトイレ棟。トイレ棟の全形が分かる写真を撮るべきだったと反省。床面の誘導ブロックの状況からトイレの入口前の通路の様子であること、入口が3か所あることが分かる。

トイレ棟の屋根は切妻形状で通路まで伸ばしている。今回は通路部分の構造フレームに注目する。

木造の場合、伝統的な構法では柱、軒桁、梁の納め方に
京呂組と折置組というふたつの方法がある。在来工法(構法)は柱の上に桁を通し、桁に梁を掛けるのが一般的で、これは京呂組に近い組み方だ(桁と梁の天端の高さ関係に相違がある)。

このトイレ棟の軒回りの構造材の取り合いを見ると、柱と登り梁を一体に組んでできるフレームの間に桁、いやつなぎ梁(とした方が好ましい)を入れている。 きちんと観察してこなかったのはうかつだったが、梁には集成材を使っていたように思う。大断面集成材を構造部材として使う場合には在来木造とは異なり、鉄骨造のフレームと同じ扱いをすることが少なくない。このトイレ棟も同様に扱っているのかもしれない。

このように分析的な観察をすることが目的ではない。柱と梁が一体になったフレームが等間隔に並んでいるなあ、美しいなあ・・・。ただそれだけのこと。


 


旧開智学校の屋根

2019-06-12 | B 繰り返しの美学



 建築の構成要素そのもののデザインには特にこれといった特徴が無くても、それを直線的に、そして等間隔にいくつも配置すると、「あ、美しいな」とか、「整っていて気持ちがいいな」とか、そういった感情を抱く。このような経験は私の個人的なものではないだろう・・・。シンプルなルールによって、ものが秩序づけられた状態・様子を脳が歓迎しているのだ。

建築構成要素を直線状に等間隔に並べるとそこに秩序が生まれ、それを美しいと感じる。このことを「繰り返しの美学」と称して時々ブログに取り上げてきた。旧開智学校の屋根の棟の飾りはまさに繰り返しの美学だ。リズミカルな構成が美しく、心地よく感じる。


 

 


鯉の季節

2019-04-24 | B 繰り返しの美学


繰り返しの美学 山梨県北杜市高根町にて 撮影日190413

水中を泳ぐ鯉、空中を泳がせようと考えた古の人の発想ってすごい。

同じようなものを繰り返し直線状に並べるとそこに秩序が生まれ、その光景を美しいと感じる。このことを「繰り返しの美学」と称して時々取り上げてきた。

先日、北杜市高根町で目にしたこの光景、まさに繰り返しの美学だ。


繰り返しの美学について(過去ログ)


 


水玉のバナーフラッグ

2018-04-04 | B 繰り返しの美学


撮影日180404

●●● 今朝、松本城の桜を見てから伊勢町通りに移動すると、松本市美術館で開催中の草間彌生展のバナーフラッグが並んでいた。

草間彌生といえば水玉。白地に赤い水玉と赤地に白い水玉のフラッグが交互に繰り返されている。

これぞ繰り返しの美学。逆光で透明感の出ている小旗が早朝の街なみに映える。


 


「水玉」と「網目」草間彌生展

2018-03-15 | B 繰り返しの美学



草間彌生 ALL ABOUT MY LOVE @松本市美術館 20180303~0722






最新シリーズ「わが永遠の魂」の作品約70点が並ぶ会場にて(この会場では撮影が許可されている)

●●● 幼少のころから幻覚や幻聴に悩まされていた草間彌生は創作活動に没頭することで自己を保ってきたと言われている。

今回の特別展の展示作品約180点を一通り観て、草間彌生の作品は「繰り返しの美学」だと解した。


 


牛伏川階段工

2017-10-31 | B 繰り返しの美学



■ 2002年(平成14年)に国の重要文化財になった「牛伏川本流水路」を見る機会があった。フランスの砂防技術を参考にして、明治から大正にかけて延長141m、高低差23mあるところに19段の石積み階段を施工した「牛伏川階段工」で、2012年(平成24年)に国の重要文化財に指定されている。

リズミカルな川の流れ、繰り返しの美学。



現地にある説明板


 


金沢監獄 中央看守所・監房

2016-12-06 | B 繰り返しの美学

明治村6

 愛知県犬山市の明治村に行くことが決まり、「村内地図」を見ていて、この「金沢監獄 中央看守所・監房」を是非見たいと思った。

監房棟は中廊下型のプランであり、廊下の両側に独房が規則正しく並ぶ様は「繰り返しの美学」な光景であろう、と容易に予測できたから(*1)。



中央に看守所が配置され、5つの監房棟が放射状に配置されていたことが分かる。明治村には中央看守所と第五舎房の一部のみが移築保存されている。


8角形の央看守所外観

第五監房棟外観(移築されたのは一部)左後方は第四監房棟の「付け根」部分。
中央看守所の屋根の塔





移築される前は廊下の長さはこの5倍くらいだったことが、説明板の配置図に示されている。その繰り返しの美学を見たかった・・・。



火の見櫓でよく見るリング式ターンバックルが使われている。そう、昔は建築にもごく普通に使われていたのだ(過去ログ)。


独房


*1 『建築探偵雨天決行』藤森照信・増田彰久/朝日新聞社 に旧中野刑務所が載っている。独房が廊下の両側に規則的に並ぶ「繰り返しの美学」が印象的。

金沢監獄 中央看守所・監房:旧所在地 金沢市 建設 明治40年