その岡谷にある岡谷蚕糸博物館で昨日(23日)の午後に開催された齊藤有里加さん(*1)の講演「150年の眠りから目覚める・・・! 勧工寮葵町製糸場図面 3D復元プロジェクト報告」を聴いた。
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このプロジェクトは東京農工大学の博物館収蔵庫から2017年に見つかった勧工寮葵町製糸場の諸図面(繰糸部の機構、水車、竈、煙道など)41点を読み解いて3D化するというもので2019年から20年にかけて行われた。
葵町製糸場は現在の東京都港区虎ノ門(虎の門病院が立っている場所)に建設され、1873年(明治6年)に開業した。その前年、1872年に富岡製糸場が開業している。共に官営の製糸場。明治初期とはいえ、東京のど真ん中に製糸場があったことは知らなかった。
博物館で2024年2月18までの会期で企画展が開催されていて、展示室にはこのプロジェクトの成果である葵町製糸場の3D画像と1/100の模型、それから大学博物館収蔵庫で見つかった絵図(図面)などが展示されている。私が興味を持ったのは製糸場の模型で、見つかった図面の中に製糸場の平面図と立断面図があり、その図面に基づいて作られた。
建物は木造、小屋組みは1間(約1.8m)ピッチ(スパンは5間、約9mだと思われる)で同形のフレームが並んでいて美しい。これぞ繰り返しの美学。
建築の構成要素そのもののデザインには特にこれといった特徴が無くても、それを直線的に、そして等間隔にいくつも配置すると、「あ、美しいな」とか、「整っていて気持ちがいいな」とか、そういった感情を抱く。このような経験は私だけの個人的なものではないだろう。シンプルなルールによって、ものが秩序づけられた状態・様子を脳が歓迎しているのだ。
建築構成要素を直線状に等間隔に並べるとそこに秩序が生まれ、それを美しいと感じる。これを私は「繰り返しの美学」と称している。
機械化されてもすることは手作業と変わらない。
博物館のアプローチ沿いの繰り返しの美学な仕掛け。かつてこの場所にあった農林省蚕糸試験場岡谷製糸所ののこごり屋根をモチーフにデザインされた。
岡谷蚕糸博物館には今回初めていった。機会があれば再訪したい。