透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「吾輩は猫である」

2011-05-31 | A 読書日記



■ 以前も書いたが、日本を代表する作家をひとりだけ挙げるとすればやはり漱石だ。歌手なら美空ひばり。スポーツ選手なら、長嶋茂雄。

さて、漱石の代表作を挙げるとすれば・・・、『吾輩は猫である』だろう。

**吾輩は猫である。名前はまだない。** この有名な書き出しで始まる長編「教養」小説は**南無阿弥陀仏々々々々々々。ありがたいありがたい。**で終わる。 大きな甕の中に落ちた猫の最期。

手元にある角川文庫は昭和41年9月の発行。この年に既に読んだ、と見栄を張っておく。この小説を今読んだら面白いと思うだろうか・・・。明日から読み始めることにする。


ブックレビュー 1105

2011-05-31 | A ブックレビュー





 今月の読了本はこの3冊。多忙を極め、読書の時間はあまりなかった・・・。

『江戸の坂 東京の坂(全)』横関英一/ちくま学芸文庫 「坂道ファンのバイブル」とも評される本書を読むことができた。今月の収穫。

『証拠改竄 特捜検事の犯罪』 朝日新聞出版。 佐藤優氏の書評を週刊誌で読まなければ本書を手にすることはなかっただろう・・・。優れた書評は「読んでみよう」と思わせる説得力を備えている。

『ふすま 文化のランドスケープ』 向井一太郎・向井周太郎/中公文庫。 カバーデザインが美しい。 ふすまから見た日本の建築文化。

「奥」を包む
しめ縄とふすま
結界の白さ 「かくし」対「あらわし」
「気にさわる」文化装置としてのふすま
神が降臨する「すきま」
空間のひだ 間仕切りの重層性
ふすま 文化の記憶と現代性

ピックアップしたこれらの小見出しから本書の内容がなんとなく分かるのではないかと思う。なかなか興味深い論考を読んだ。

 


「真面目な二人」

2011-05-28 | A 読書日記



 時々カフェマトカでコーヒーを飲みながら、雑誌「クウネル」に掲載されている川上弘美の掌編小説を読む。

今日、最新号の「真面目な二人」を読んだ。同じ大学に通うふたりの女の子、学科は違うがある講義で一緒になる。教室の後ろから聞こえてくる「かち、かち」って何の音?と思ったら、交通調査などで使うカウンター機の音だった・・・。 ひとりの女の子が気持ちが動いたときにカウンター機をかちっと押していたのだ。それを知ったもうひとりの女の子、つまり主人公は白黒ふたつのカウンター機を用意して、楽しい方に気持ちが動いたら白をかち、いやな感じ方向に動いたら黒をかちと押してみることに。こんなありそうでなさそうな、なさそうでありそうな設定は川上弘美が得意とするところ。

元カレとよりを戻して、一緒にいるときにカウンターを押してみると白が5、黒が18だった。そうなんだ・・・、と自分の気持ちが分かって、女の子は別れを切りだしたのだった。でも「いい気持ちがほんとうはいやな気持だったり、反対にいやな気持が、後で考えると楽しい気持ちにつながっていたりするから・・・」と気がつくと裏も表も白も黒もごっちゃになっていく・・・。

川上弘美はよく白も黒もごっちゃになった世界、境界のはっきりしない曖昧な世界を描く。

長編の『真鶴』では失踪してしまった夫がまだこちらにいるのかあちらに行ってしまったのか、はっきりしない状況で物語が進むし、やはり長編の『風花』は夫と別れようか、どうしようか、とまるで風花のように気持ちが定まらない若い女性が主人公の物語だ。

「真面目な二人」はふわふわ、ゆらゆらなカワカミワールドが上手く描かれた佳作。




「神様2011」 Yさん、これです。^^


屋根の先端のデザイン

2011-05-27 | A あれこれ



 ブログにカテゴリーをいくつか設定しているが、あるカテゴリーに注意を向けていると他のカテゴリーがおろそかになる。今回は久しぶりに先端のデザイン。

住宅の平面形は居室の南面採光を優先すれば東西に長くなるし、凸部や凹部ができることだって少なくない。それを無理なく、いや多少無理をしてでも正方形にするのには設計者に強い意志が必要だろう。

松本市郊外で見かけたこの正方形のプランの住宅は方形(ほうぎょう:正四角錘)の屋根を載せている。瓦葺きのとんがり屋根のてっぺんに載っているのは一体何だろう・・・。

噴水に見えないこともない。火災除けの願いを込めて「水」をデザインしたのかもしれない。


五角形

2011-05-26 | A あれこれ


春のフォトアルバム ツツジ  110526

 数日前、自然界のいたるところでフィボナッチ数が出てくることを書いた。

花びらの数はフィボナッチ数でないほうが少数派だという(「自然界の秘められたデザイン」による)。 ツツジは漏斗状の花の先が5つに分かれている。5はフィボナッチ数。

正五角形の作図法が知られているが、かなり複雑で難しい。自然は難しい作図を(いとも簡単にかどうかは分からないが)してしまう・・・。

6という数も頻出するが、これは3(フィボナッチ数)の倍。 自然は左右対称を好む。だから3の倍の6も多いのかな・・・。 


只見線沿線の民家

2011-05-25 | A あれこれ



民家 昔の記録 只見線沿線の民家 8210

 1982年だから、今から30年近く前に撮った茅葺き民家。只見線の車窓から撮ったことは記録にあるが、撮影地は不明。喜多方の旅館で蔵座敷に泊ったのもこの旅行のときだと思うが、記憶が曖昧。

長い棟にX状に木を組んだ千木がいくつも載せられている。通常千木の数は奇数。いまこの地方を訪ねても、このような素朴な茅葺き屋根の民家は残っていないだろう・・・。


新聞を読んで

2011-05-24 | A あれこれ



 今日(24日)の信濃毎日新聞朝刊の記事によると、全国に自動販売機が約520万台あって、その約半数が飲料用自販機だという。260万台という数字は以前書いた記事(自動販売機の消費電力)と一致している。

飲料用自販機1台あたりの年間消費電力量は平均的な世帯の約35%だと記事にある。ということは飲料用自販機3台で平均的な世帯と年間消費電力量がほぼ同じ、ということになる。260万台の飲料用自販機の消費電力量は86万6千世帯のそれとほぼ同じなのか・・・。

長野県の世帯数はどのくらいだろう・・・。人口が210万人位だから、もしかしたら同じくらいかもしれない・・・。長野県のHPによると、今年4月1日現在、人口が214万人で世帯数は79万5千だ。

ということは・・・、全国の飲料用自販機と長野県の全世帯の年間消費電力量がほぼ同じということになる・・・。多い・・。やはり、飲料用自販機を減らすことが必要ではないかなぁ。 


「証拠改竄」

2011-05-24 | A 読書日記



 大阪地検特捜部で行われた証拠改竄事件。 この事件をスクープした朝日新聞の記者によって明らかにされる事件の深層。

検事たちが描いたストーリーが破たんしていることを認めようとせず、ストーリーに合うように証拠を改竄してしまうとは・・・。

広く科学の分野では仮設の正しさを実証実験によって証明する。仮説に合致するようなデータが得られなければ、仮設の見直しが行われる。が、時にデータ改竄が行われることがあるようで、そのことが新聞などを通じて伝えられる・・・。

大阪地検特捜部が行った行為はこれと同じ部類の犯罪ではあるが、恐ろしい。無実の人を有罪にしてしまってかまわないという、あえて書けば「組織的な病理」。

この問題を個人の犯罪に帰着させて幕引きしようとする・・・。これでは結局何も変わらないのではないのか、と不安になる。


元バス停

2011-05-23 | A あれこれ



 朝日村のスタイル・ガレへ「工芸と音楽」 三人展 + bonnecura を観に出かけた。 ギャラリーの入り口に置かれたこの看板。どこかで見たような形・・・。そう、これは元バス停。

看板に生まれ変わった元バス停が村内の工房などに設置されるそうだ。カフェ・シュトラッセにはバス停のまま設置されていた。どんな看板にするか思案中、なんだろう。シュトラッセはドイツ語で街道という意味だそうだから、バス停はぴったり。


「岳」

2011-05-22 | E 週末には映画を観よう


信州・松本ロケ地マップより

映画「岳―ガク―」を観た。邦画は「食堂カタツムリ」以来かな(101027に「桜田門外ノ変」を観ていた)。

主人公の島崎三歩は山岳救助ボランティア。底抜けに明るい性格の青年を好演しているのは小栗旬(という知らない若手俳優)。相手役の新人救助隊員、椎名久美を長澤まさみが演じている。

山岳遭難者、それも冬山での遭難者の救助は危険で困難。猛吹雪の冬山で多重遭難が発生。遭難した父娘の救助に向かった久美も救助を待つ身に・・・。

映画には必ずメッセージが込められているもの。正月明けに観た「アンストッパブル」 には「家族の絆」が大切だというメッセージが込められていた。約半数の夫婦が離婚するというアメリカ社会の現状を憂えてのメッセージ、と私は理解した。

ではこの映画に込められたメッセージは? 

「生きろ! 簡単にあきらめるな、困難な状況を克服して生きろ! ということ」だと受け止めた。

登山は学生時代に何座か登って以来、ぷっつり。今年の夏は雨飾山にでもチャレンジするか・・・。


・山に捨てちゃいけないものは?   ゴミと命。

・山小屋を営む女性を市毛良枝が演じていた。笑顔がとても魅力的だった。


「風花」

2011-05-21 | A 読書日記



 川上弘美の『風花』が集英社文庫になった。

解説文を作家・小池真理子が書いている。**夢なのかうつつなのか、にわかには判別しがたい世界。(中略)煙のようにあわあわとしたものが静かに流れていく。** 川上弘美の描く世界は誰が評しても、なぜかこのようになる。

タイトルの「風花」は結婚7年目にして夫・卓哉の浮気を匿名の電話で知らさた主人公・のゆりのゆれる気持ちの表象。数年前に単行本で読んでいるから、とりあえず書棚に並べておく。『真鶴』は再読したいと思っているが、この『風花』は再読するかどうかは分からない・・・。



壁のカメ

2011-05-18 | F 建築に棲む生き物たち


棲息地:松本市内の民間会社の外壁 観察日:110518

ベンゼン環のことを亀の甲と言ったりするが、亀の甲のことをベンゼン環とは言わない。でもこの亀の甲はベンゼン環・・・。 
亀は試験管を持っているのか、試験管に乗っているのか・・・。 松本にはこんな亀も棲んでいる。