■ 「私は記憶に残らない読書はしない」と友人から以前言われたことがあった。歩きながらの会話の中ではなかったかと思う。本の読み方としては、確かにその通りだと思う。読書は量より質、ということだろう。でも月末に読み終えた本が少ないと気になることも事実。
今月読んだ本は3冊だった。
『日本全国 獅子・狛犬ものがたり』上杉千郷/戎光祥出版 既に数回読んだ。狛犬に関する情報が網羅的にそして簡潔に分かりやすく書かれている。狛犬に関する基礎的な知識を得るのに最適な教科書のような本だ。この本の「獅子舞はライオン調教の名残」という指摘に納得。
午後、久しぶりにHさんとカフェトークしたが、Hさんもこの獅子舞について狛犬と関連があるのではないか、と言っていた。狛女でもないのになかなかするどい。
この本は手元に置いて時々目を通したい。
『狛犬誕生 神獣のルーツをたどる』塩見一仁/澪標 帯に**神社の参道や社殿の前に鎮座する狛犬さん そのルーツは五千年の昔にさかのぼるのだ!** とある。この分厚い本は狛犬について30年も研究しているという著者の研究成果をまとめたもの。
**「獅子・狛犬」の源流をライオンに求めるためには、シルクロードを西にたどり、古代オリエントまでさかのぼる必要がある。**(11頁) 著者は狛犬が日本に伝わってきた過程について、現地を訪ね、文献を調べることで明らかにしている。
日本に狛犬が仏教とともに伝わってきたのは平安時代。その後、日本で狛犬は次第に変容していくが、その過程についても多くの文献を紐解いて明らかにしている。
『メディア・モンスター 誰が黒川紀章を殺したのか?』曲沼美恵/草思社 **研修で話す内容を打ち合わせていた席でのことだ。ふとした拍子に、目の前の折り畳み式事務机が倒れ、黒川が持ってきていたカードが床に散らばった。それを拾おうとして駆け寄った木村はまず、その枚数の多さに驚いた。軽く数百枚はあっただろうか。木村はその中の1枚を手にとってよく見た。
そこには黒川が学生時代からそれまでに読んだ本や聞いた話のなかから、これはと思う内容やキーワード、記憶しておきたいエピソードなどが簡潔に記されていた。黒い字で要点が書かれている上に、赤字で書き込みがしてあった。その横に、今度は緑色のペンで別の書き込みがされていた。
黒川はそれを移動する車中などで何度も読み返し、その都度、気がついたことを書き込んでいたに違いなかった。講演の前にはカードを取り出し、テーマに合わせた話題を選び、話す内容をシミュレーションしていた。**(379~380頁)
私は黒川紀章の講演を遺作となった国立新美術館で聴いたことがある。受講者の多くは建築関係者ではなく、一般の人たちだったと思う。難しい建築用語を使うことなく、分かりやすく、手掛けてきたいくつかのプロジェクトを紹介しながら建築について、都市について講じていたと記憶している。
そうだったのか・・・、黒川紀章はものすごく努力をしていたのだ。天才と言われた長嶋も実は人の見ていないところでバッティング練習をかなりしていたようだ。
久しぶりに頑張ろうという気持ちになる本を読んだ。