透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

ブックレビュー 1505

2015-05-31 | A ブックレビュー



■ 「私は記憶に残らない読書はしない」と友人から以前言われたことがあった。歩きながらの会話の中ではなかったかと思う。本の読み方としては、確かにその通りだと思う。読書は量より質、ということだろう。でも月末に読み終えた本が少ないと気になることも事実。

今月読んだ本は3冊だった。

『日本全国 獅子・狛犬ものがたり』上杉千郷/戎光祥出版  既に数回読んだ。狛犬に関する情報が網羅的にそして簡潔に分かりやすく書かれている。狛犬に関する基礎的な知識を得るのに最適な教科書のような本だ。この本の「獅子舞はライオン調教の名残」という指摘に納得。

午後、久しぶりにHさんとカフェトークしたが、Hさんもこの獅子舞について狛犬と関連があるのではないか、と言っていた。狛女でもないのになかなかするどい。

この本は手元に置いて時々目を通したい。

『狛犬誕生 神獣のルーツをたどる』塩見一仁/澪標  帯に**神社の参道や社殿の前に鎮座する狛犬さん そのルーツは五千年の昔にさかのぼるのだ!** とある。この分厚い本は狛犬について30年も研究しているという著者の研究成果をまとめたもの。

**「獅子・狛犬」の源流をライオンに求めるためには、シルクロードを西にたどり、古代オリエントまでさかのぼる必要がある。**(11頁) 著者は狛犬が日本に伝わってきた過程について、現地を訪ね、文献を調べることで明らかにしている。

日本に狛犬が仏教とともに伝わってきたのは平安時代。その後、日本で狛犬は次第に変容していくが、その過程についても多くの文献を紐解いて明らかにしている。

『メディア・モンスター 誰が黒川紀章を殺したのか?』曲沼美恵/草思社 **研修で話す内容を打ち合わせていた席でのことだ。ふとした拍子に、目の前の折り畳み式事務机が倒れ、黒川が持ってきていたカードが床に散らばった。それを拾おうとして駆け寄った木村はまず、その枚数の多さに驚いた。軽く数百枚はあっただろうか。木村はその中の1枚を手にとってよく見た。
そこには黒川が学生時代からそれまでに読んだ本や聞いた話のなかから、これはと思う内容やキーワード、記憶しておきたいエピソードなどが簡潔に記されていた。黒い字で要点が書かれている上に、赤字で書き込みがしてあった。その横に、今度は緑色のペンで別の書き込みがされていた。
黒川はそれを移動する車中などで何度も読み返し、その都度、気がついたことを書き込んでいたに違いなかった。講演の前にはカードを取り出し、テーマに合わせた話題を選び、話す内容をシミュレーションしていた。**(379~380頁)

私は黒川紀章の講演を遺作となった国立新美術館で聴いたことがある。受講者の多くは建築関係者ではなく、一般の人たちだったと思う。難しい建築用語を使うことなく、分かりやすく、手掛けてきたいくつかのプロジェクトを紹介しながら建築について、都市について講じていたと記憶している。

そうだったのか・・・、黒川紀章はものすごく努力をしていたのだ。天才と言われた長嶋も実は人の見ていないところでバッティング練習をかなりしていたようだ。

久しぶりに頑張ろうという気持ちになる本を読んだ。



 


「メディア・モンスター」を読む

2015-05-31 | A 読書日記



 第4章まで読み進んでようやく具体的なプロジェクトのことが出てきた。中銀カプセルタワービルの設計、施工での様々な苦労話が紹介されている。

スタディを繰り返した結果、2本のシャフトに取り付けることになった140個のカプセル、その製造に関して住宅メーカーは相手にしてくれなかった・・・。で、大阪の海上用のコンテナを製造している会社に依頼することに。内装はどうする・・・、探しまわって百貨店の中にある船舶の内装を請け負う部署に依頼することになった。

わずか10㎡のスペースにバスタブとトイレ、ベッド、机など生活に必要な最低限の家具や水周り品を納めることができるか・・・、事務所に現寸模型を造って検討。

カプセル用の小型冷蔵庫は140という小さいロットだから作ってくれるメーカーが無い・・・。排水管の音にどう対処するか、等々。

設計がかなり進んだ段階でオーナーからプロジェクトを中止したいと連絡が・・・。何だか、「プロジェクトX」のようになってきた・・・。読んでいて中島みゆきの歌が脳内CDから聞こえだした・・・。

建築確認申請にも時間がかかった。「これって建築なの?」と都庁の窓口で言われたそうな。防災計画や避難計画をどうするか・・・、特別避難階段が必要なのでは?そのスペースは到底確保できない。結局確認が下りるまでに1年半以上かかったという。

知らなかった・・・、あのカプセルタワーにこんなにも難題があったなんて。

以下著者の黒川評 **黒川は建築家の間ではたいそう商売上手のように言われていたが、根はやはりビジネスマンではない。デザインに関しては頑固なところもあるし、いざとなれば損得抜きで行動してしまう。マネジメントも上手とは言えなかった。**(361頁) 



 


朝カフェ読書

2015-05-30 | A 読書日記



 月に数回、出社前に渚のスタバで少しまとまった時間を読書に充てている。

朝のスタバで先日買い求めた『メディア・モンスター 誰が黒川紀章を殺したのか?』 曲沼美恵/草思社を読んだ。600頁を超える分厚い本だが、およそ半分を読み終えた。

黒川紀章が学生の時、実家で家族全員で撮った写真や、駆け出しの頃、アルバイトの学生たちと事務所で撮った写真などは初めて目にした。

それにしても細かなことまでよく調べたものだと思う。カバー折り返しにあるプロフィールによると著者はフリーランスとなる前は日本経済新聞の記者として東京都の行政や雇用問題、教育問題、脳死臓器移植問題等の取材に携わっていたとのこと。ならば、関係者への取材はお手のものだろう。

今月24日付の信濃毎日新聞の書評欄で藤森照信さんはこの本について**黒川紀章、この一冊をもって瞑すべし。**と書いている。

読了後、改めて書きたい(というパターンがこのところ多い)。


 


偶然

2015-05-29 | A あれこれ

 先日東京の友人と電話で話していて、友人が青梅の酒造会社のある活動(具体的には書かないでおく)に関わっていると聞いた。何でもその会社には茅葺きの建物があるという。

友人が僕に話している茅葺きってもしかしたらこの建物のことではないだろうか・・・。なぜかその時おぼろげに浮かんだこの写真の様子を伝えると、そうかもしれないとのこと。

で、サービスサイズでプリントしてある写真を画像データにしてメールで送ると、「そうです、そうです!! これです」と返信がきた。

この写真を撮ったのは1978年10月のことだからもう40年近く昔のことだが、今でもこの茅葺きの建物が残っていて、友人が今この酒造会社と関わりがあるという。

40年近く昔に僕が偶々写真を撮ったこの建物に今時々友人が訪れている・・・。なんという偶然だろう・・・。


民家 昔の記録  東京都下青梅にて 撮影1978年10月








546 筑北村坂北向原の火の見櫓

2015-05-28 | A 火の見櫓っておもしろい


546 東筑摩郡筑北村坂北(旧坂北村)向原にて 撮影日150527



 善光寺の御開帳には電車で出かけた。電車の窓から火の見櫓を探していて、この火の見櫓の屋根が長野道の向こう側の小高い丘の上の樹間にちらっと見えた(撮影位置が少し違うので上の写真には写っていない)。ヤグラセンサーの感度は今なお良好。昨日、迷うことなくこの火の見櫓に到達することができた。脳内GPSも健全。 

3角形の櫓に6角形の屋根、6角形の見張り台。ごく一般的なタイプの火の見櫓。梯子の段数とそのピッチによって、見張り台の高さが約7m80cmと分かった。



見張り台の対辺が平行ではない、この6角形は歪んでいる。意図的に見張り台を歪ませた例は珍しい。梯子を見張り台の床面より上まで伸ばしてあるのは昇り降りしやすくするための配慮として好ましい。



脚部はトラスを組んで、脚元まで伸ばしてある。これは好ましい。この火の見櫓がカバーしているエリア、集落についても調べたいところだが時間的な余裕がなかった(と言い訳)。


 


真々部諏訪神社 神明社の狛犬

2015-05-28 | C 狛犬



■ 安曇野市豊科高家の真々部諏訪神社には境内社の神明社があり、そこにも1対の狛犬(獅子・狛犬)がいた。

 

台座の大きさが約240×360、像の高さが約400と小振りだが、力強く、存在感がある。



阿形の獅子、鍛え上げた体。胸を張り、きっちり蹲踞の姿勢を取っている。鬣(たてがみ)が美しい。耳はたれている。





台座に彫り込まれた文字、「昭和十年一月 東京市 酒井八右衛門」。二代目酒井八右衛門は大正7年に没しているから、この狛犬の石匠は昭和33年没した三代目酒井八右衛門。初代は江戸三大石匠のひとりだという。


吽形の狛犬 阿形の獅子より摩耗が進んでいるようだ。狛犬の耳は立っている。





刻字の名前は辛うじて「野村保太郎」と読める。同じ境内にある別の大きな狛犬の台座にあった「野村保泉」と同一人物。野村保太郎は二代目酒井八右衛門の弟子、屋号で保泉とも称していたのだが、この「泉」は酒井八右衛門の屋号の井亀泉(せいきせん)の泉から取ったもの。

同時期(昭和9年10月と昭和10年1月)に同じ神社に納められている2対の狛犬。その台座に刻まれている野村保泉と野村保太郎という同一の石匠の名前。このふたつの名前をどのように使い分けていたのかは分からない。

東京に仕事場を構えていた石匠の狛犬が遠く信州安曇野にあるというのは、一体どのような縁によるのだろう・・・。


 


黒部ダムカレー1

2015-05-26 | F ダムカレー

 

 大町市内の17店舗(*1)の食堂で、ご当地グルメとして黒部ダムカレーを提供しています。名前が示す通り、黒部ダムをモチーフにしたカレーで、次の3つの約束があります。

①ごはんをアーチ式ダムの堰堤の形にすること
②カレーのルーは堰堤の内側に流しこむこと 
③カレールーの上に遊覧船に見立てたトッピングを乗せること

今日はこのカレーを食べに福来家に行ってきました。なるほど、確かに3つの約束を守っています。

トッピングはサクサクのサケ(信州サーモンだそうです)フライでした。ダムの外側には色鮮やかな野菜サラダ。

ダムが決壊しないように注意して食べました。ハイカラな都会的な味ではなく、そう、昔懐かしい田舎の味とでも評したらいいのでしょうか、そんな味でした。

黒部の氷筍水のペットボトル付きで964円はお得です。964(くろよん)、値上げするわけにはいきませんね。このことを女性店員さんに言うと笑ってました。

今度大町に行く機会があったら、別の食堂で黒部ダムカレーを食べてみたいです。 


 *1 今日(5月26日)ネットで調べた店舗数

 写真を撮ることを了解していただきました。写真など撮らない方が上品でしょうね。


安曇野市豊科 真々部諏訪神社の狛犬

2015-05-24 | C 狛犬

 先日NHKラジオの朝の番組で神社の数はコンビニより多いと聞いた。確か8万8千社くらいだった。ネットで確認してもそのくらいの数になっている。ちなみに全国で最も神社が多いのは新潟県で約4,900社、なぜ新潟県に多いのだろう・・・。何か理由がありそうだ。

神社がこんなに多いのだから狛犬も相当数棲息していることになる。しかも狛犬は絶滅の恐れはないだろう・・・。

昨日(23日)の朝、安曇野市三郷明盛の熊野神社まで狛犬に会いに出かけた。その帰路、なんとなく松本方面を目指して生活道路を走っていて、鎮守の杜が目に入った。で、立ち寄ったところが、豊科高家の真々部諏訪神社だった。


撮影日 150523

鳥居越しに境内を見る。境内は明るく、開放的な印象だ。神楽殿の両脇に狛犬がいる。 




拝殿に向かって右側に社殿



拝殿、社殿とも唐破風付きの立派な建物。鳥居の手前の説明板により御祭神は建御名方命(たけみなかたのみこと)と譽田別尊(よたわけのみこと)だと知った。どんな神様なのかは分からないが、この2柱を狛犬が守護しているのだ。





この狛犬、フォルムが整っていて実に美しい。



鬣(たてがみ)も尾も立体的な造形。共に美しい。体を支える前肢は筋肉が表現され、力強い。




拝殿に向かって左側、吽形の狛犬もやはり形が整っていて美しい。全体と細部の造形のバランスが良い。右側の狛犬(獅子)の耳はねているが、左側の狛犬の耳は立っている。この辺りにも造形の流儀というか決まりがあるのだろう。



台座に彫り込まれた文字は「原型 三木宗策 石匠 野村保泉」と読める。別のところに彫り込まれた文字から昭和9年10月の建立だと分かった。

三木宗策という名前をネット検索して、木彫作品を手掛けた彫刻家だと分かった。明治24年に福島に生まれ、昭和20年に没している。

野村保泉という名前もヒットした。三代酒井八右衛門という石匠の弟子で、保泉は号で本名は保太郎。二代酒井八右衛門は号を井亀泉(せいきせん)という。初代酒井八右衛門は江戸三大石匠と呼ばれていたという。保泉の泉は井亀泉から採ったようだ。

三木宗策がフォルムを決めて、野村保泉が彫ったということだろう。東京で彫って、遠路運んできた、ということだろうか。

にわか勉強で事情がまだリアルに呑み込めないが、この狛犬は血統書付きのブランド品といったところか・・・。

台座 約700×1000
像の高さ 約1300




神社境内、拝殿に向かって左側に境内社があって、そこにも小振りの狛犬がいた。この狛犬については後日別稿で。


 


安曇野市三郷明盛 熊野神社の狛犬

2015-05-23 | C 狛犬



安曇野市三郷明盛中萱の熊野神社 鎮守の杜全景 ここに棲んでいるのはどんな狛犬だろう・・・。

撮影日150523



大きな台輪鳥居の手前に狛犬がいた。


神楽殿


拝殿



狛犬が守護する御祭神はこの4柱 拝殿の後方に本殿があるのだろうが、なんとなく見てはいけないような気がして・・・。

以上、基本情報を押さえた上で狛犬観察。



 

白御影石の台座の上に蹲踞の姿勢でいる阿形の獅子と吽形の狛犬



ざっくりと大味な感じがしないでもない。体を縦方向に少しつぶしたようなバランス。技術力あれど造形力いま一つ、といったところか。何というか、とにかく一所懸命彫ったという印象。

阿形の獅子。口の中に玉を入れ、前足を大きな玉に載せている。





吽形、子連れの狛犬 尾の先が台にかかっている。

台座サイズ 450×800 狛犬の高さ約1m



台座に彫刻師村越清次郎という刻字がある。どんな人なのかは分からない。




境内の一角を占める稲荷社を朱の鳥居越しに見る。



        
昭和3年10月生まれの一対のきつね。造形的におもしろい。

前脚で押さえているのは宝珠か? 何でも京都の伏見稲荷大社の狐は片方が巻物、もう片方が宝珠を銜えているそうだ。何年か前の正月に伏見稲荷大社に行って来たが、その頃は全く興味がなく、見てこなかった・・・。


                                      


71枚目@真々部諏訪神社

2015-05-23 | C 名刺 今日の1枚


71枚目 Kさん@真々部諏訪神社

 プライベート名刺はいわば自己紹介カード、三郷の真々部諏訪神社で出会ったKさんと名刺交換をした。

この名刺本来の使い方を久しぶりにした。

いただいた名刺によると、Kさんは神社や龍を研究しておられる方。神社について、龍について一体どんなことを研究しておられるのだろう・・・。

いつか伺ってみたい・・・。