■ 早くも今年前半が終わる。読書は日常生活の一部、食事と同様毎日欠かせない。6月の読了本は図書館本2冊を含め9冊。
『川端康成 孤独を駆ける』十重田裕一(岩波新書2023年)
2歳で父、3歳で母を亡くした川端康成。川端文学の本質を著者の十重田さんは
**天涯孤独となった川端の、いわゆる孤児の感情は、彼の文学の特色を考えるうえで逸することのできないものである。**(8頁)
**他者とつながり、心を通わすことを強く求める思いが、川端の文学の基盤をかたちづくっていた。**(3頁)と説く。
このような視点を与えられると、川端文学の見通しがよくなる。
『マンボウ家族航海記』北 杜夫(実業之日本社文庫2011年)
『幽霊』『木精』『楡家の人びと』の北 杜夫が・・・。
『伊豆の踊子』川端康成(新潮文庫1950年8月20日発行、2021年7月20日第154刷、2022年7月1日新版発行)
**二十歳の私は自分の性質が孤児根性で歪んでいると厳しい反省を重ね、その息苦しい憂鬱に耐え切れないで伊豆の旅に出て来ているのだった。**(38頁) 踊子が「いい人ね」と言うのが聞こえて、**私は言いようもなく有り難いのだった。**(38頁) **私はさっきの竹の杖を振り廻しながら秋草の頭を切った。**(38頁)
『川端康成 孤独を駆ける』を読んだ後だから補助線を引くことができ、上掲の引用箇所、この小説のポイントにきっちり気がつく。
『頭上運搬を追って 失われゆく身体技法』三砂ちづる(光文社新書2024年)
失われゆく文化の記録。
『飢餓同盟』安部公房(新潮文庫1970年発行、1994年25刷)
難しくて、私の読解力ではまったく歯が立たなかった・・・。
『箱男』(新潮文庫1982年10月25日発行、1998年5月15日31刷)
自己の存在を規定するものは何か、それを手放すとどうなる・・・。安部公房が読者に問うているこのテーマは今日的。
『絶景鉄道 地図の旅』今尾恵介(集英社新書2014年)
地図好き、鉄道好きにはたまらない1冊だと思う。
『恋ははかない、あるいは、プール底のステーキ』川上弘美(講談社2023年 図書館本)
川上弘美が描く世界は、あわあわ、ゆるゆる、ふわふわ。輪郭が曖昧でこのように形容される。それはこの小説でも同じ。
『研ぎ師太吉』山本一力(新潮社2007年12月20日発行、2008年1月25日2刷 図書館本)
ミステリーも恋も中途半端。
**私はゆっくり読書を続けていきたいと思います。** ある方から初めて届いた年賀状に書かれていたメッセージ。ぼくもそうしたいと思う。本の無い生活は考えられない。
『華氏451度』(ハヤカワ文庫)
レイ・ブラッドベリが描いた本が禁制品となった社会はディストピアだ。