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透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

ブックレビュー 1503

2015-03-29 | A ブックレビュー

 
 

 毎年恒例、花咲か爺さんの全国ツアーがこの鄙里にやってくるのはまだしばらく先になりそうだ。

3月の読了本は4冊。

『形態デザイン講義』内藤廣/王国社
『日本近代建築の歴史』村松貞次郎/岩波現代新書
『松本景観ルネッサンス』溝上哲朗/書肆 秋櫻舎
『日本全国獅子・狛犬ものがたり』上杉千郷/戎光祥社

溝上氏の『松本景観ルネッサンス』はなかなか興味深い内容だった。松本城下の通りの計画を論じたもので、松本平の周囲の山々をアイストップとして計画されているということを実証的に示している。

シンプルな三角形の山容の常念岳は松本平のシンボル的な山だが、この山を城下では見ることができないようにして、松本城の黒門手前のところからだけ見ることができるように計画されているという溝上氏の発見。

この常念岳の囲い込みと利休の「朝顔の茶会」の演出とは瓜二つだという氏の見方は、なるほど!だった。

*****

狛犬研究の第一人者である上杉千郷氏の『日本全国獅子・狛犬ものがたり』は狛犬の教科書のような本だ。

この本との偶然の出会いが僕を狛犬の世界に誘うことになった・・・。


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狛犬本

2015-03-24 | C 狛犬



 『日本全国 獅子・狛犬ものがたり』 上杉千郷/戎光祥出版  なかなかおもしろそうな本を見つけた。知らない出版社だが、えびすこうしょうしゅっぱん と売上カードにルビがふってある。 

狛犬について分かりやすく書かれた本だ。この教科書的な本を読んで狛犬に関する基礎的な知識を得れば、狛犬の見え方が変わってくるだろう・・・。いままで見えなかったものが見えてくるかもしれない。

既に書いた喩えだが、星座に関する知識がなければ、満天の星をみても星座は見えず、ただ星がランダムに散らばっているとしか見えない。

狛犬についても然り。狛犬について知れば、姿・形の細部の違いが見えてくるだろう。

章立てを書いておこう。

第1章 一歩近づいてみる獅子・狛犬
第2章 獅子、東へ走る
第3章 狛犬はこうして生まれた
第4章 官から民へ、変身する狛犬たち
第5章 日本全国・狛犬めぐり
第6章 シーサーと世界の獅子
第7章 〝獅子舞〟小ばなし

第1章に獬豸(かいち)という中国の想像上の猛獣が図とともに紹介されている。先日見た和田の西善寺の涅槃図には、この獬豸によく似た動物が描かれていた。

**この獣は頭に一角を持ち、人が闘うところを見れば邪悪なほうに挑み、人の論を聞けば不正のほうを噛む、正邪を分かつ獣であるとされています。この獬豸の持つ性質が邪悪を祓う狛犬と重ね合わされ、獬豸の持つ角が狛犬にもつけられたということです。**(25頁) このような知識を得てから狛犬を見れば、頭部に角を探すようになるだろう。

**「狛犬」の「狛」は、広く異国のもの、エキゾチックなものという意に解釈するべきだと思われます。**(64頁)



 


528 松本市和田の火の見櫓

2015-03-23 | A 火の見櫓っておもしろい


528

 松本市和田の西善寺の涅槃図が公開されていることを新聞記事で知り、最終日(22日)に見に行って来た。縦4.7メートル、横5.4メートルもある大きなもので、中央に入滅した釈迦、その周りに多くの弟子たち、下の方にさまざまな動物たちが描かれていた。動物の中には狛犬ではないかと思わせる、動物も一対描かれていた。

寺のすぐ近くでこの火の見櫓に遭遇した。櫓の中央部分に表面がつるりんちょな半鐘とサイレンを設置してある。
櫓の下半分のデザインは火の見櫓そのもの。リング式ターンバックル付きのブレース、それと脚元も火の見櫓だ。

上半分はかなり細い櫓で柱材を水平部材で繋ぐ構造。そして櫓のてっぺんにふたつのスピーカーを設置してある。







ユニークな姿・形の火の見櫓だ。

火の見櫓の後継として立てる防災無線柱も、1本柱では味気ない。このような火の見櫓とのミックスタイプのデザインならいいのに・・・。


 


527 塩尻市北小野の火の見櫓

2015-03-22 | A 火の見櫓っておもしろい


527 両小野中学校(塩尻市北小野)のグラウンドの隅に立つ火の見櫓

 矢彦神社と小野神社の狛犬を見てからの帰路、火の見櫓が見つかるかもしれないと思い、国道153号(旧三州街道)から北小野地区の生活道路に入りこんでみた。しばらく狭い道路を進んだところでこの火の見櫓が目に入った。

姿・形の整った火の見櫓だ。周囲をフェンスで囲ってある。生徒たちの立ち入りを禁止しているのだろう。



屋根の上に本格的な避雷針がすっと立っている。反りのついた方形の屋根、下り棟の先に飾りの蕨手が付いていないのは残念。屋根と見張り台のバランスが良い。

どうやら、ここ数年の間に塗装されたようだ。

脚部の写真も載せておく。ピントが合っていないし、逆光でうまく撮れていないが記録としては無いよりマシだろうから。




 


小野神社の狛犬

2015-03-21 | C 狛犬



 前稿の矢彦神社とこの小野神社(塩尻市北小野)とはもともと同一の神社だったそうだ。それがなぜ二社に別れることになったのか、その経緯や矢彦神社が塩尻市内の飛び地の辰野町にあるのか、興味深い。ウィキペディア等に記事があるから、俄か勉強で得た知識はここには書かない。



大鳥居から直線的に拝殿まで伸びる参道に狛犬がいた。  台座に刻まれた文字によると建立は大正7年(1918年)8月。今年98歳になる狛犬だ。







矢彦神社の狛犬と同様に、それ程個性的でもないような気がする。もっとも違いが分からぬ男が観察しているのだから、あやしいが・・・。

参道に体を直交させ、頭だけを鳥居の方に向けて、不審者というか悪霊が聖域に入り込まないか見張っている。



矢彦神社の狛犬

2015-03-21 | C 狛犬

■ 塩尻市内の野町飛び地にある矢彦神社の狛犬に会いに行ってきた。前稿に挙げた上西条の道祖神からここまでは車で10分とかからない。隣接する小野神社(塩尻市)と共にうっそうとした社叢(しゃそう:この言葉はいままで知らなかった)に囲まれている。


神楽殿


勅使殿


拝殿

手前の神楽殿から勅使殿、そして拝殿と直線状に並ぶ。拝殿の手前に狛犬がいた。 



右 獅子 いつ頃からか知らないが、阿形の獅子と吽形の狛犬をまとめて狛犬と呼ぶようになったという。





左 狛犬 榊で顔が隠されている。



台座に彫り込まれている文字により昭和5年11月の建立で、設計・彫刻が小野肇という人だと知る。

先日見た阿禮神社や三嶋山神社の狛犬ほどユニークではなく、おとなしいというかオーソドックスな印象。体の表面の装飾的意匠はよく見ると左右で違っている。

狛犬は石工の遊び心によってユニークな姿・形のものが少なくないようだ。狛犬ファンがかなりの数になることも頷ける。


 


塩尻市上西条の道祖神

2015-03-21 | B 石神・石仏



 週末のサードプレイス、カフェバロでケータイで撮った上のようなアングルの写真をFさんから見せてもらった。

さて、どこの火の見櫓だろう・・・。塩尻市内だという道祖神と火の見櫓の所在地の説明を受けてもよく分からなかった。帰宅してから調べて、既に見たことのある火の見櫓であることが分かった。だが、間知ブロック積みの擁壁を窪ませたところに祀ってある道祖神には気がつかず、観察していなかった・・・。

で、今朝(21日)、出かけてきた。道祖神の前の道路は三州街道ではないかと思うが、どうだろう。





酒器像。向かって左側の女神が酒器を手にしていて、右側の男神が手に持つ盃に酒を注いでいる。両神のまんじゅうのような丸い顔、温和な表情。分かりにくいが顔の上に御幣が彫ってある。

建立年を知りたかったが、裏面に見つけることはできなかった。


 


― 消えた・・・

2015-03-17 | A 火の見櫓っておもしろい

  カタクラモール再開発予定地の火の見櫓と消防団詰所の解体・撤去がほぼ終わった。



昨日(16日)の夕方行ってみると、かろうじて火の見櫓の立ち上り基礎と火の見櫓の柱脚部分(等辺山形鋼)が残っていた。大正15年に建設され、地域の安全遺産として貴重だった火の見櫓が消えてしまった。

こうして1基、また1基と火の見櫓が姿を消していく・・・。


 


塩尻市金井の石碑

2015-03-14 | B 石神・石仏



 三州街道沿いに在る三嶋山神社のすぐ近くに祀られていた石碑。もっと広範囲を写せばどんなところにあるのか、周辺の様子が分かる。だが、どうも対象以外のものはあまり写したくないという気持ちがはたらくので、いつもこんな写真になる。

左から道祖神、二十三夜塔、庚申塔。裏に建立年が刻まれていたが、庚申塔が大正9年、庚申の年であることを記憶したのみ。道祖神は安政だったかと。二十三夜塔は確認しなかった。

欲張ってはいけない、今回は狛犬に会いにいったのだから・・・。


 


三嶋山神社の狛犬

2015-03-14 | C 狛犬

   

 阿禮神社の次に訪れた三嶋山神社も塩尻市内にあります。ここにもユニークな狛犬がいると聞いていました。

国道153号から少し南に入ったところ(三州街道沿い)に在る小さな神社です。狛犬、いました!

  



阿形の獅子、たてがみがシャンプーハットのように見えます。ライオンのイメージをストレートに表現したのでしょうか。ガハハと豪快に笑っているようです。



後ろはこんな様子です。長いしっぽがあります。



吽形はイヒヒと笑っているかのようです。なかなか大胆な造形です。





台座の後ろ側に寄進者の住所と名前とともに石工の名前も彫ってありました。なんとか、石工赤羽要人と読むことができました。阿禮神社の2対の狛犬の内、はじめに取り上げた狛犬もこの石工の作なんだとか。なかなかおもしろいというか、ユニークな感性の持ち主だったのでしょう、きっと。

こんな狛犬たちが全国あちこちで待っていると思うと、熱心なファンならずとも会いに行きたくなります。


 


阿禮神社の狛犬

2015-03-14 | C 狛犬


阿禮神社(塩尻市)拝殿

 カフェ バロで、のぶさんからこの神社にユニークな狛犬がいることを教えてもらった。何でも県外の狛犬マニアは長野県内ではこの神社を必ず訪れるのだとか。これは出かけて観察せねば・・・。

塩尻は旧中山道(国道153号)のひとつ北側の狭い生活道路沿いに阿禮神社は在る。広い境内の正面に拝殿があって、その手前に狛犬が居た。




向かって右側、阿形の獅子像 観る眼を持たないからユニークとしか言いようがない。赤羽要人という石工が彫ったという。





こちらは左側の吽形の狛犬像(一般的には右の獅子と左の狛犬をまとめて狛犬と称す)。 体の模様(?)は抽象的な形に整えられている。


拝殿により近い位置に小振りの狛犬がもう1対居た。



ムム、なんだか不気味な表情・・・。



合い方とは違ってマンガチックな表情の狛犬。  体が損傷していて元の姿が分からないのが残念。


 


「松本景観ルネサンス」

2015-03-14 | A 本が好き 



■ 松本の医師・溝上哲朗氏が著した『松本景観ルネッサンス』という本があります。松本城下の街が周囲の山を意識して計画されたという溝上氏の論考が要領よくまとめられています。謎解きのような(というか謎解きそのものですが)おもしろい内容です。

内容を紹介することは謎の答えを明かしてしまうことに他なりません。さてどのように内容を紹介したものか・・・。

江戸の街が富士山や江戸湾を意識し、それらを通りのアイストップとして計画されたという説はよく知られています。

『見えがくれする都市』 という本がありますが、その本のなかの「微地形と場所性」という章に次のような記述があります。

**日本には古くから周囲の山を生けどって借景をする造園手法があった。この場合遠景の山は単なる背景ではなく、より積極的に造園内部の構成と関係付けられている。こうした庭づくりの感覚が江戸の市街地の町割にも生かされたのではいかと思う。(118、9頁)

溝上氏も松本城下の街路が周囲の山を意識して計画されていたとして、カラー写真とともに天神小路のアイストップとして真正面に王ヶ鼻があることなど、具体例を紹介しています。

では、北アルプスの山並みはどのように生かされているのか、中でも象徴的な存在の常念岳はどうか・・・。

**瞬時にすべてが了解できた。** 『松本景観ルネッサンス』の後半でこの謎の答えが感動的に書かれています。

「囲われた常念岳」と一輪の朝顔、この見出しに答えのヒントがあります。一輪の朝顔というのは秀吉に所望されて利休が行った朝顔の茶会のことです。私はこの茶会のシーンを映画で観ました。床の間に生けた一輪の朝顔を際立たせるために庭の朝顔を全て摘み取ってしまった利休。

常念岳の見せ方、演出は茶会での朝顔のそれと瓜二つという溝上の捉え方に、なるほど!と納得しました。これ以上具体的に内容を紹介することは前述した理由によりひかえることにします。


『見えがくれする都市』 槇文彦他著/鹿島出版会