■「建築トランプ」の枚数は13×4+2(ジョーカーが2枚)=54枚、です。35枚目の今回はこれ、「星野富弘美術館」。星野富弘さんと彼の作品についてはここに書くまでもないでしょうから省略します。
群馬県みどり市にあるこの美術館の計画案はコンペによって選ばれました。1,200を越える国内外の応募案の中から最優秀に選ばれたのはヨコミゾマコトさんのこのトランプに描かれているユニークな案でした。
1辺が52メートルの正方形に詰め込まれた直径が5メートルから16メートルの円、その数は33個だそうです。廊下の無いこのプランは円形の部屋のお互いに接する部分に出入口が設けられています。
美術館が1辺52メートルの正方形だと知って、ふと「せんだいメディアテーク」を思い出しました。確か「せんだい」もそのくらいの大きさの正方形のプランではなかったかと。
残念ながら手元にはそのことを確認できる資料がありません。ネットで検索して「せんだい」の1辺の長さがおよそ50メートルだということは分かりましたが、正確な寸法は分かりませんでした。
ところでこの美術館の設計者、ヨコミゾさんは伊東豊雄さんの事務所のOBでせんだいメディアテークを最後に独立しました。彼の意識の中には当然「せんだい」の寸法もあって、それを意識したのかも知れないなどと勝手に思っています。ま、たまたま面積的に一致したのでしょう。
このコンペの審査委員長は伊東さんでしたが、「ヨコミゾ君、卒業祝いだよ」などと伊東さんが考えるはずなどもちろん無いでしょう。斬新なプランと薄い鋼板による構造はこの美術館のプログラムに的確に応えていて充分最優秀に値する、という評価だったんでしょう。
残念ながら私はこの作品を実際に観ていませんから軽率には書けませんが、写真などをみる限りどうも周辺の環境との乖離、違和感を感じます。そう内藤廣さんは「建築には環境との応答が必要である」と主張し(『建築的思考のゆくえ』王国社)、現代建築を地理的、歴史的な文脈と全く無関係、まるで宇宙船が降り立ったようだと評しましたが、まさにこの美術館は四角い宇宙船を思わせる外観ではないか、と思います。豊かな自然に囲まれた湖の辺に降り立った宇宙船を美術館のサイトのトップページの動画で見ることができます。→ http://www.tomihiro.jp/
「地理的な文脈に沿った建築、環境との応答」、「そんなの関係ねぇ~」ということなんでしょうね、きっと。 あの磯崎さんだって昔、神岡町役場で宇宙船をやりましたから。