『天災から日本史を読みなおす 先人に学ぶ防災』磯田道史/中公新書
■ この国は災害列島だ。はるか昔から幾度となく地震や津波に襲われ、甚大な被害を被ってきた。本書で磯田さんは残された史料を読み込んで、例えば天正地震のとき戦国武将がどう対応したか、伏見地震のときはどうであったか、を分かりやすく解説し、そこから今に活かせる教訓を示している。
例えば**三〇〇年前のこの古文書は我々に物語る。老人・子どもは災害時の低体温症にとくに弱いこと。年長者は責任ある言動をしなければならないこと。疲労困憊時には弱気になり判断がにぶること。我々はこれらを自覚して、老いも若きも、最後まで避難を投げないことが大切だ。**(68頁)のように。これは宝永地震が招いた津波に襲われたとき、避難するさまを記録した「柏井氏難行録」という史料を読み解いて得た教訓。
磯田さん小学生の時から歴史学者になりたいと思っていたそうで、地震や津波の史料を蒐集すること、20年。本書にはさまざまな史料が示され、その成果が活かされている。
大変興味深い本に出合った。今週末に読みたい。この本を薦めてくれたT君に感謝。
第63回 日本エッセイスト・クラブ賞受賞